表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
七罪剣と大罪人と呼ばれた少年の反逆譚  作者: YUU
第三章 王都動乱編
86/128

86 新たなる【怠惰の魔王】

今回は難産でした……。

 俺達が地下水路を進み続けた先にあったのは闘技場のようなドーム状の空間であった。

 だが、周囲に観客席の様なものは無く、どちらかと言えば戦う舞台その物をそのまま持って来たと言った方が正しいだろう。

 そして、闘技場の奥には階段があり、その頂上には祭壇の様なものが設置されている。その祭壇の前には、人影が見えた。


 そして、その人影は俺達を認識すると階段を一歩、また一歩とゆっくり降りてきた。そして、階段の下まで降りてきた事でその人影の正体が露わになる。

 人影の正体はフローラだ。彼女は階段から降りると俺達の方まで歩み寄ってくる。俺達もそれに合わせてフローラの方に歩み寄った。そして、闘技場の中央で一定の距離を開けながらも、フローラと会話が出来る位置まで近づいた。


「邪魔ね、一度寝させましょうか」


 そして、フローラが手を振るうと、後ろの方でバタリという音がする。俺達が音の方を向くと、ここに到着した途端、微動だにしなくなっていたエミルが、まるで糸が切れたかのようにバタリと倒れ込んでしまっていた。フローラにしてみればただの案内役であるエミルは俺達がここに来た以上、邪魔でしかなくもう必要はないのだろう。


「ようこそ、あたし達の戦いの舞台へ」


 フローラは仰々しく手を広げた。それこそ、まるで演劇を思わせるほどの仰々しさだ。


「ここは、あたし達が決着をつけるに相応しいと思わないかしら?」


 確かに闘技場と言えば古来より決闘の場として使われている。それを考えればこの場は、戦いの舞台としては相応しいと言えるかもしれない。

 そして、ここなら周りの被害も気にする必要が無い。俺もアリシアも全力で戦う事が出来るのは間違いないだろう。


「それに、ここなら邪魔も入ることは無いでしょう?」


 そして、フローラは指をパチンと鳴らした。すると、俺達の後ろから、ゴゴゴゴッ、と言う音が鳴り響いた。俺とアリシアはその音の方向を向くと、俺達が今通ってきていた道を完全に塞ぐ様な大きな石壁が降りて来ていた。こうなると、あの石壁を破壊しない限りは、俺達はこの道を使う事は出来ないだろう。

「これでもうあたし達は決着がつくまで逃げられない」


 今の俺なら、石壁を破壊する事は不可能では無い。寧ろ容易な部類に入るだろう。それは恐らくアリシアも同じの筈。だが、それには少なからず時間が必要だ。

 あの石壁が一枚だけではなく道の奥まで続いている可能性もある。そうなれば更に必要になる時間は増えるだろう。あの石壁を全て壊すのにどれだけの時間が掛かるかは検討が付かない。

 なにより、あのフローラがここまで準備をしながら、俺達が脱出しようとするのを見逃すとは思えない。間違いなく邪魔をしてくるだろう。

 そして、この闘技場には、あそこ以外に道は見えない。つまり、俺達はフローラを倒さない限りは、ここから抜け出せないという訳だ。


「これで戦いの舞台は完全に整ったわ。さぁ、始めましょうか」


 その瞬間、フローラの体から圧倒的な魔力が解放される。そして、フローラが放つその魔力は、右手に収束していく。その魔力はまるで槍のような形を取った。そこに現れたのは一本の漆黒に染まった槍だった。


 そして、あの槍から放たれている膨大な魔力、間違いない、あれは七罪武具の一つだ。


「これこそが、神代において【怠惰の魔王】と呼ばれた存在が振るった七罪武具、その名も『怠惰槍ベルフェゴール』よ」


 その槍を見た俺達に驚きは少ない。どちらかといえば、やはり、という気持ちの方が圧倒的に強いだろう。元々、フローラがクリスチア大聖堂の地下の封印殿にあった『怠惰槍ベルフェゴール』を持っているという事は最初の方から想定していた。だからこそ、その事に納得はすれども、驚く様な事は殆ど無かった。


「あら、驚かないのね? 驚いてくれると思ったのに残念だわ」


 だが、フローラの顔には残念といった表情は全く浮かんでいなかった。

 そして、フローラは具現化した怠惰槍の穂先を俺達の方へと向けてきた。


「あたしは、神代の魔人にして新たなる【怠惰の魔王】、フローラ・ラスト。さぁ、お前達も名乗りなさい。それが礼儀でしょう?」

「……神聖騎士が一人、【謙譲の騎士】アリシア・エレイン」

「【七罪の魔王】カイン・エレイン」

「そう。【謙譲の騎士】アリシア・エレイン、そして【七罪の魔王】カイン・エレイン。相手にとって不足は無いわ」


 フローラがそう言うと同時に、彼女の膨大な魔力がこちらに向けられる。


「くっ!!」


 相手は神代の魔人にして、新たなる【怠惰の魔王】だ。彼女の放つ膨大な魔力に俺達は圧倒されそうになる。


「お兄様っ!!」

「ああ!!」


 俺達は、フローラの膨大な魔力に対抗するかのように同時に魔力と聖気を解き放った。そして、そのまま俺は七罪剣を、アリシアは【謙譲】の神剣を具現化する。その剣先は互いにフローラの方に向かっている。


「さぁ、始めましょうか。あたし達の戦いを!!」

「行くぞっ!!」

「行きます!!」


 そして、俺とアリシアはフローラへと最初の攻撃を繰り出すのだった。





毎日更新とか言っておきながらこの体たらくですが、どうも今後も毎日更新の目途が立ちそうもありません。なので、今後は二日に一度更新に戻そうと思っています。どうかご了承ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ