83 クーデター計画
遅くなってしまい、申し訳ありません。また、文字数も普段に比べると少々少なめです。
公爵邸へと帰ってきた俺は明日に備えて休息を取っていた。態々、向こうは明日と宣言してくれているのだ。それまでは体を休めるべきだろう。
「お兄様、お待たせしました。遅くなって申し訳ありません」
「ああ、おかえり」
俺がこの屋敷に帰って来た頃はまだ日が昇っていたが、アリシアが帰ってくる頃にはもう日が落ちていた。
俺と別れてから何をやっていたかを聞いてみると、どうやら魔人に協力していた貴族を一人捕えたらしい。クリスチア大聖堂に捕らえているその貴族が色々と自白したらしく、その内容を整理したり、今後の事を聖騎士に指示していたとの事だ。
そして、アリシアはその貴族が話した事を全て俺に教えてくれたが、その自白内容は驚くべきものだった。
「クーデター!?」
「ええ」
アリシア曰く、フローラ達魔人と協力者となっていた貴族達はなんとクーデターを計画していたらしい。また、その両者はとある密約を交わしていた様だ。
その密約とは、このクーデターが成功すれば、この国はフローラたちが統治。その代わり、協力した貴族にはそれ相応の地位を与える、というある意味よくある内容だった。
そして、そのクーデター計画であるがこの国は全く察知できていなかった様なのだ。
普通は、クーデターを起こすのならそれ相応の金や物資、人員の動きがある筈なのだ。そういった事柄を国が見逃すはずがない。
だが、その様な金や物資、人員といったものを殆ど動かす事も無く、クーデターを起こす方法が一つだけある。それは魔人の力を借りる事だ。
聖騎士複数人で相手をするのが当たり前の存在である魔人は一人いるだけでも大きな戦力になるのだ。
その為か、国はクーデターの計画があること自体が寝耳に水だった状態の様だ。
また、奴隷を買い占めていたのも、買った奴隷を魔人に変え、自分達の戦力にする為だとの事だった。奴隷を買い占めていたのは、ある意味では人員の動きと呼ぶことが出来るかもしれない。だが、普通に考えれば奴隷を大量に購入したといっても、奴隷が複数人いたとしても兵士1人分の働きが出来るかも怪しいものだ。
だが、その奴隷を魔人へと変貌させる事が出来、尚且つその奴隷を好きな時に傀儡と出来るなら話は違う。
他者の命令に従う大量の魔人、それ程の戦力がいるならクーデターが成功すると確信しても不思議ではないだろう。
「そして、そのクーデターですが明日の早朝から決行する予定だったらしいです」
「明日!?」
「ええ」
そう言えばあのフローラという魔人も、明日に全てが始まると言っていた。そして、それは避けようがない事だとも。その理由がおぼろげながらに見えてきた。
普通のクーデターなら実行前に首謀者、或いはそれに類する者を捕えてしまえばそれでいい。そうする事で指揮系統が機能しなくなり、クーデターを未然に防ぐ事が出来るからだ。だが、今回はそれとは違う。
クーデターの為の主戦力が魔人だとするなら、その魔人を操るのは間違いなくあのフローラだ。明日に決行されるというこの段階では協力者の貴族を何人捕縛した所で、何も変わらないだろう。だから、フローラは避けようが無いという言葉を使ったのだ。
もうクーデターが起きる事を止める事は出来ない。アリシアもそう判断した様で、フローラの協力者となっている貴族の捕縛は諦めたらしい。聖騎士達にはクーデターの事を伝え、明日に備えて休息を取るように指示したとの事だった。
クーデターを止める手段はただ一つだ。魔人フローラを倒す、それしか残されてはいなかった。
因みにではあるが、その全てを自白した貴族はクレイモン侯爵だと聞いた時、ああ、そう繋がるのか……、と俺は思ったりもした。また、先程までいた屋敷も書類上の所有者がクレイモン侯爵だったらしい。アリシアは、あの屋敷が魔人の拠点になっているのでは? と考えあの屋敷に強襲したとの事だった。
それを聞き、どうしてアリシアがあの屋敷に来たのかという俺の中の疑問が一つ氷解した。また、アリシアも俺がどうしてあの屋敷にいたのか、と厳しく追及されたが、そこは正直に答えてなんとか納得してもらったのだった。
10日まで連続更新と言っていましたが、今話の文字数が少なかったので、連続更新をもう少しばかり延長する予定です。




