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七罪剣と大罪人と呼ばれた少年の反逆譚  作者: YUU
第三章 王都動乱編
81/128

81 屋敷への強襲(アリシア視点)

今回はアリシア視点となっております。

 魔人達の調査を始めて、既に七日が経過していました。そして、今日部下からとある貴族が魔人と繋がっているという報告が上がってきたのです。


「クレイモン侯爵といえばあの反国王派の筆頭格の?」

「はい、以前からクレイモン侯爵は魔人と繋がっているとの嫌疑がありましたから、彼とその周囲についてはずっと調査を進めていたのです。そして今回その調査にやっと成果が出ました。魔人と繋がっているという確固たる証拠も既に入手している様です」


 その部下の報告は、クレイモン侯爵が魔人と繋がっているという確固たる証拠を入手したというものでした。クレイモン侯爵といえば何かと黒い噂の絶えない人物です。反国王派の中でも過激派で、裏では魔人と繋がっているのでは、と噂されていた筈。ですが、とうとう年貢の納め時が来た様ですね。


「それで、クレイモン侯爵の所在は掴めていますか?」

「ええ、クレイモン侯爵は現在この王都に滞在しているとの事です。既にクレイモン侯爵の拘束の為に聖騎士を向かわせています」

「そうですか」

「クレイモン侯爵は拘束し次第、ここまで連行し尋問を行います。そして、魔人について知っている情報を全て吐かせる予定になっています」


 ここの尋問官は優秀です。すぐにクレイモン侯爵から情報を引き出す事が出来るでしょう。


「それとなのですが、どうやらクレイモン侯爵は先代の頃から繋がりがあった様ですね」

「先代の頃から?」

「ええ、詳しくはこの調査資料に書かれています。どうぞご覧ください」


 そして、そう言った部下は私に調査資料を手渡してきました。私はその調査資料を受け取るとすぐに中身を精査していきます。


「……」


 確かに、その中には先代から魔人と繋がっている証拠が提示されていました。調査資料にはそれ以外にも、クレイモン侯爵本人以外だけではなく、その周辺等について様々な角度から調査したであろう内容が書かれています。


 ですが、その後も読み続けた資料の情報の中に一つ気になる項目があるのを見つけました。


「ここに書いてある屋敷が少し気になりますね……」


 気になったのは、クレイモン侯爵が所有しているという屋敷の項目でした。その項目の中には、クレイモン侯爵は貴族街に自分の屋敷以外にもう一つ屋敷を所有していると書かれています。そして、その屋敷の所在地を見ると、覚えのある場所だったのです。

 どうやら、過去に借金を抱えた貴族が借金苦から屋敷を手放し、それをクレイモン侯爵が買い取ったというのが、この屋敷を手に入れた経緯の様ですね。

 資料上ではクレイモン侯爵はこの屋敷をもう三十年以上も所有している事になっています。

 ですが、私の記憶が正しければ、あそこはずっと空き家になっていた筈です。外観は定期的なメンテナンスがされている様で、綺麗なままでしたが庭は荒れていた筈……。


「…………?」


 今、何か頭の中で引っかかる事がありました。この王都の貴族街に屋敷を構えると、それだけで相応の税を徴収される事になります。そもそも、クレイモン侯爵は貴族街に自分の屋敷を持っていた筈。借金に苦しんでいたという貴族の救済として屋敷を買い取ったのだとしても、これ程の長い期間屋敷を所有し続けるなど、非効率極まりないでしょう。

 管理や維持のコストを考えれば誰かに売ってしまった方が効率的なはず。


「あっ……」


 そして、私は一つの答えへとたどり着きました。クレイモン侯爵が先代から魔人と繋がっているという事はこの調査資料によって確固たる証拠として存在します。なら、もしこの屋敷を何らかの取引の見返りとして魔人に差し出したとしたら? そして、長年この屋敷を魔人達が拠点として使用しているとすれば?

 もし、そうだとしたら三十年以上もの長い間この屋敷を所有し、税を納め続けていることに納得する事ができます。それに三十年以上前といえばクレイモン侯爵はまだ先代の頃でしょう。

 そして、屋敷を買い取ったのも最初から魔人に差し出す為、という可能性も考えられるでしょう。


 もし、私の推測が当たっているとなれば急がなければなりません。もし、この資料にある屋敷を魔人が拠点としているとするなら、彼等がクレイモン侯爵の拘束を知れば、即座に屋敷を捨て逃亡するのは間違いないでしょう。

 最悪、自分達へ繋がる情報を破棄する為に、屋敷に火を放つ事も十分考えられます。そうなると魔人へと繋がる手がかりが一気に無くなってしまう。それだけは阻止しなくてはなりません。


「っ、急いで待機中の聖騎士全員の招集を!! 私は彼等を率いてこの屋敷に向かいます!!」

「まさか……」

「ええ、クレイモン侯爵を拘束しようとしている以上、急いだ方が良いでしょう」


 部下も私の考えを察したのでしょう。慌ててこの部屋から退出し、聖騎士の元へ向かって行ったのでした。




 そして、待機していた聖騎士を招集しました。集まった聖騎士は十人程度でしたが、今は人手よりも時間です。私は彼等を率い、クリスチア大聖堂から貴族街へと直行、そのまま貴族街内部に立ち入ります。貴族街の入り口での検査は本来なら少々時間が掛かりますが、特例で今回はそれを無視します。教会の威光はこういった時に便利ですね。


 その後、聖騎士達と共に貴族街を進み続けると目的の屋敷の前まで到着しました。


「ここ、ですね」

「ええ、間違いないはずです」


 そして、私達は入り口前で待機します。後は扉を開ければいつでも侵入できるでしょう。


「各員、聖武具を具現化。それと共に屋敷内に侵入します」

「はっ」


 そして、この場の聖騎士が聖武具を具現化するのと同時に、私も神剣を具現化します。そして、具現化した神剣を入り口の扉に目掛けて一気に振り下しました。時間が無いので強行突入です。


「今です、突入を!!」

「はっ!!」


 聖騎士達は私の言葉に従って屋敷内へと突入していきました。


「……っ、この気配は一体……?」


 私が屋敷内に入ると、この屋敷の二階部分から妙に嫌な気配を感じました。それを感じ取った私は、この気配の元へと急いで行かなければという妙な使命感に駆られます。


 もしかしたら、この嫌な気配の正体は……。


「アリシア様……?」

「っ、ここは任せます!! 私は行かなければならない場所が出来ました。魔人が現れる可能性もありますが手加減無用です、この屋敷を制圧する事を第一に考えてください!!」

「はっ!!」


 この場所を聖騎士達に任せて、その嫌な気配がある場所に目掛けて一直線に屋敷内を駆け抜けていきます。

 そして、辿り着いたのは二階のとある一室の前でした。この気配はこの中から感じます。私は覚悟を決め、扉を開け放ち、そのまま中へと飛び込みました。


 その中にいたのは紫色の髪が特徴的な妖艶な雰囲気を纏った長身の女性が一人。そして、男の人が一人。ですが、その男の人の事を私はよく知っています。


「……あ、アリシア……?」

「えっ……、お、お兄様、どうしてここに……?」


 何故か、魔人が拠点としていると思われる屋敷でお兄様と私は邂逅する事になったのでした。







前回もう少しで500ptという話をさせていただきました。そして本日確認すると、なんと500ptを超えていました!!

これも皆様の応援のおかげです。今後も更新を頑張っていくのでよろしくお願いいたします。




次の目標はとりあえず今の倍の1000ptですかね。

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