表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
七罪剣と大罪人と呼ばれた少年の反逆譚  作者: YUU
第三章 王都動乱編
70/128

70 アリシアからの呼び出し

 アリシアが帰ってきた翌日、彼女から自分の部屋まで来てほしいと言われた。スラムで遭遇した魔人に関して何か進展があったのだろう。なので、アリシアの部屋まで向かう事にした。


 ――――コンコン


 アリシアの部屋の扉を二度ノックする。


「はい、どなたでしょうか」

「俺だけど」

「あ、お兄様ですね。どうぞ、お入りくださいませ」


 そして、俺はアリシアの部屋の扉を開ける。その扉の先でアリシアは俺を出迎える様に待っていた。


 俺を出迎えたアリシアは白とピンクを基調とした豪奢なドレスを身にまとっていた。宝石があしらわれたイヤリングやネックレスまで身に着けており、装いは完全に舞踏会に出席する令嬢のものだ。


 アリシアは俺の姿を見るなり、頭を下げ、ドレスの裾を持ち上げてカーテシーをする。


「お兄様、ようこそいらっしゃいました。急な呼び出しにもかかわらず、来てくださり感謝いたします」


 頭を下げながら、アリシアはそう言った。それから少しして、頭を上げると彼女は満面の笑みを浮かべていた。


「このドレス、私のお気に入りなんです。どうですか、似合っていますか?」


 続けてそう言った後、アリシアはクルッと一度回った。


「…………」


 俺はそのアリシアの姿を見て思わず言葉を失った。

 この時、彼女に抱いた気持ちを正直に言うと、思わず見惚れる程にすごく彼女に似合っていた。アリシアの為にデザインされたであろうドレスは彼女の可憐さを更に引き立てている。更に、身に着けた装飾品も彼女を引き立てる様に調整されているのだろう。完璧という他無かった。


「お兄様?」

「……っ、な、なんだ?」

「お兄様、このドレス、似合っていますか?」

「あ、ああ」

 見惚れる程に似合っている、そう口を滑らせてしまった。俺がそう言うとアリシアは喜びの表情を浮かべた。


「本当ですか!? 嬉しいです!!」


 アリシアは今にも飛び跳ねそうな勢いで喜んでいた。


「そ、それよりも、何か俺に用があったんじゃないのか?」

「そ、そうでしたね。では、立ち話もなんですので、こちらにお座りください」


 アリシアはそう言いながら、横にあるソファーに手を向ける。そして、俺とアリシアは揃ってソファーに腰掛けるのだった。




 あの時、俺が戦った魔人について聖騎士団でも調査しており、今回俺が呼び出されたのはその進展や詳細について伝える為との事だった。


「それでは、早速ですが分かった事をお伝えしますね」


 アリシアは聖騎士団から調査書類諸々を持って来たようで、それを俺に手渡してきた。早速、俺はその資料をめくっていく。アリシアは俺の手にある資料を覗き込み、時折補足説明をしてくれた。

 

 死体を元に身元を調査した結果、あの男は長年スラムで暮らしていた住人の様だ。だが、特にそれ以外の特徴は無く、スラムを支配しているとかそういった裏の顔も持たないある意味、何の変哲もないスラム住民との事だった。


(おかしい……)


 魔人であればスラムを支配する事など容易い。しかも、あんな街中で軽々と魔力を使った事を考えると、自己顕示欲が強いようにも思える。



 そんな男が、今迄頭角を現すことは無かった。明らかに不自然だ。あの男の言動や行動を考えると簡単に魔人の力に溺れ、思うがままに力を振るっている可能性も十分に考えられる。

 そして、そんな人間なら魔人の力でスラムを支配していてもおかしくは無いだろう。

 実は、あの男がスラムを支配しており、その事を巧妙に隠している、そんな可能性も極小ではあるが、考えられない訳ではない。

 だが、教会や聖騎士団が調査しているのだ。そんな秘密を教会や聖騎士団相手に隠し通せるとは思えない。

 結局、この資料の通りにあの男はただのスラムの住人という事実には間違いがないのだろう。


 また、この調査資料によると、身辺調査をした結果、ごく最近になって今迄では考えられない程、自信過剰とも思える言動を繰り返していた様だ。


 結局、あの男がスラムで暮らしていた頃から魔人だったのかは不明で、ごく最近何らかの人為的な手段で魔人と化した可能性も視野に入れ、調査を続行するという事で報告書は締められていた。


「これだけ、か……」

「ええ……」

 あれからまだ日もそこまで経過したわけではない。調査もこれから本格化していくところだろう。その時にはもっと詳細な情報が出てくるかもしれない。今はその本格的な調査を待つ事しかできなかった。


 アリシアは続けて、今後聖騎士団がどう動くのかを話してくれた。

 彼女曰く、今後聖騎士団は王都全域の警戒レベルを引き上げる事にしたそうだ。王都に潜んでいた魔人があの男だけとは限らない。この王都に他の魔人が潜入していると考えるのが自然だろう。特にスラムの方を重点的に警戒し何があっても対処できるようにするとの事だ。


「その方が良いだろうな」

「ええ、魔人が何を企んでいるのかは分かりませんが、それでも何もしないよりは遥かにましでしょうから」




 そして、その後も色々と情報交換をし、全ての話を終えアリシアの部屋から退出しようとした時だった。


「お兄様、最後に一つだけお願いがあるのです。今夜に私と共にとある場所まで向かってほしいのです」

「とある場所?」

「ええ、詳しくは今夜お話しいたします」

「……分かった。一緒にそこまで行けばいいんだな?」

「はい。では、今夜にまた私の部屋まで来てください」

「ああ、分かった」


 そして、俺は今夜アリシアと共に彼女が言う、とある場所とやらに向かう事になったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ