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七罪剣と大罪人と呼ばれた少年の反逆譚  作者: YUU
第三章 王都動乱編
61/128

61 【色欲】の暗示

サブタイあんまり気に入っていないので今後変更するかもしれません

「アリシア、本当にいいのか?」

「ええ」


 俺は父上に向けて剣を構え、アリシアにそう問いかけていた。


 昨日アリシアが提示した案、それは公爵家内での命令権を持つ父上、エレイン公爵家当主ガレアス・エレイン、そして父上の正妻、アリシアの生みの母である義母マリアンナ・エレインの二人に【色欲】の力で暗示を植え付けるというモノだった。

 暗示と言ってもそんな複雑なものではない。ただ、俺の存在を黙認し、俺達に不利になるような行動をしない様に誘導するだけだ。


 最初は、そこまでするぐらいならば宿屋暮らしでいいと考えていた。アリシアの案は最初に聞いた時、ちょっと過激ではないか、と思ったからだ。

 だが、アリシアがあんな表情を浮かべたので、アリシアの案を無下にすることが出来なかった。やはり最近、アリシアに対して弱くなっている気がする。

 それに父上が俺のことを認めないのは分かりきっていた事だ。それはアリシアも分かっていたからこそ、こういう提案をしたのだろう。こうでもしなければ俺がこの屋敷にいる事は不可能だと、恐らくアリシアは分かっていたのだ。


 アリシアの方も後方で逃げ出そうとしている義母上の対処に動いている様だが、俺は父上の方に集中していた。今のアリシアなら都合が悪くなるような事はしないだろう。


「な、何をするつもりだ……」

「父上、覚悟を」


 父上に向けた七罪剣の剣先から放たれた魔力が父上の体へと浸透していく。


「うぐっ」


 父上からは呻き声が零れた。それと同時に父上の聖気が俺の魔力と相殺し合い、すさまじい勢いで減少していく。痛みを与えるつもりは無かったが、父上の呻き声は自分の聖気が一気に減少した弊害だろうか。

 放った魔力はまだ、父上の聖気と互いに打ち消し合っていくが、そもそも俺の持つ魔力と父上の持つ聖気では多大な差が存在している。

 俺の魔力にはまだまだ底が見えないのに対して父上の聖気は既に枯渇していた。これで何の障害も無くなった。聖気が無くなった父上では抵抗する事は出来ないだろう。

 俺は聖気が枯渇し抵抗が出来なくなった父上に向かって、【色欲】の力を解放した。


「『色欲操心』」


 俺が『色欲操心』と名付けたこの技は【色欲】の力で相手の精神に干渉し、対象を思うがままに操る事が出来る。自分の存在を見て見ぬ振りをする様に誘導させる程度なら簡単にできるだろう。


 元聖騎士の父上であっても簡単に解くことが出来ない様に念入りに暗示を込めていく。まぁ、込めた暗示が解けかかったり、他にも何か不都合や事情が変わったりすればその都度、父上に暗示を込めればいいだけなのだが。

 父上の精神に干渉、そして俺の存在を黙認し、俺達に不利な行動をとらない様に暗示を込めていった。

 そして、その全てが終わった後、父上は気を失いグッタリと倒れ込んでしまった。

 恐らく『色欲操心』は相手の精神に干渉するだけあって、その対象の精神にも負荷がかかるのかもしれない。それが気を失うという形で現れたのだろう。


 父上に暗示を込めた終わった後、俺はアリシアの母である義母、マリアンナの元へと向かった。

 義母上は何故か体を鎖で縛られていた。彼女を縛る鎖は聖気で出来ている様だった。アリシアの方を見ると、彼女の周りには一本の剣が浮かんでいる。

 あれは間違いなくアリシアの【謙譲】の力で生み出した聖剣だ。という事はあの鎖はあの浮いている聖剣が生み出したのだろう。そして、義母上が全く動かない所を見るとあの鎖は対象の動きを封じる事が出来るのは間違いがない。

 俺は義母上に向けて七罪剣の剣先を向ける。


「アリシア、その鎖を」

「はい」


 あの鎖は聖気で出来ているのだ、俺の魔力と間違いなく干渉する。あの程度の聖気で出来た鎖なら俺が少し魔力を込めるだけで簡単に消す事も出来るだろうが、ここで無駄な消耗をする必要も無い。

 アリシアは自分の周りにあった聖剣を消した。それと同時に義母上の体を縛っていた聖気の鎖も消え去っていた。

 だが、鎖が無くなったからと言っても、未だ俺は義母上に向かって七罪剣を向けている。先程と同じ様に逃げ出す事も出来ない。義母上もそれを分かっているのだろう、無理に逃げ出そうとはしなかった。


「アリシア、貴女、本当に一体どうしてしまったの……?」

「お兄様、お願いします」

「ああ」


 そして、七罪剣から魔力が放たれ、父上の時と同じく義母上の体を包み込んでいく。


「『色欲操心』」


 先程父上に込めた暗示を義母上にも込めていく。そして、それが終われば父上の時と同じく義母上も、気を失いグッタリと倒れ込んでしまった。


「これで、やっとお兄様とずっと一緒に暮らせるのですね……」

「あ、ああ」


 アリシアは本当に嬉しそうに満面の笑みを浮かべていた。

 だが、これからが問題だ。気を失うのは想定していなかった。この現場を誰かに見られれば、面倒な事になりかねない。


 ――――ドンドンドン!!


「旦那様、奥様、何やら物音がしましたが大丈夫でしょうか!?」


 この声、どうやら執事長が執務室前まで来た様だ。今もドアを叩いている。


「まずっ、アリシア!!」

「はい!!」


 俺とアリシアは慌てて持っていた剣の具現化を解いた。二人に目立った外傷はないとはいえ、この状況でもし俺達が武器を持っていたらどう思われるかは明白だ。


「旦那様、無断で失礼いたします!!」


 そして、執事長がこの執務室に入ってきた。執務室内の現状を確認した執事長はアリシアの方を向き「お嬢様、これは一体どういう事でしょうか……?」と聞いていた。


「……っ、丁度良かった。お父様もお母様も突然気を失ったのです。それで介抱しようと思っていた所だったのです」


 アリシアが機転を利かせ、何とかこの場を誤魔化そうとしていた。だが、幸運な事に執事長はそれ以上何も聞こうとはしなかった。


「そう、ですか」

「なので、お父様とお母様を寝室までお運びしてください」

「かしこまりました」


 執事長はそういうと二人を執務室から寝室まで運び始めた。


「あ、危なかった……」

「そうですね……」


 そして、俺とアリシアは揃って執務室から退出し、俺の使用している客間に戻る事にしたのだった。









ネーミングセンスがもっと欲しい……

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