59 父との再会に向けて
昨日は更新できなくて申し訳ありませんでした。
エイプリルフールネタを即興で、と考えてたけど全く思い浮かばなかったよ……。
――――コンコン
客間にあるロングソファーに座りながらアリシアを待っていると唐突に扉の方からそんな音が聞こえた。続けて扉の奥から声が聞こえてくる。
「お兄様、私です。入ってもよろしいでしょうか」
「ああ」
そして扉が開き、そこから一人の少女が現れた。特徴的な金色の髪と蒼い目をした小柄な少女、俺の異母妹であるアリシアだ。
「お兄様、お待たせしました」
現れたアリシアはこの屋敷に到着した時に来ていたドレスアーマーから衣装を変え、部屋着の様なラフな服装をしていた。先程までの恰好とは趣が違っており、ドレスアーマーを着ていた時とはまた違った印象がある。
そして、アリシアは寄り添う様に俺の隣に座った。その後、アリシアは一度深呼吸をした後、一度間を置きそのまま口を開いた。
「お兄様には今後の事をお話しておかなくてはなりません」
「今後の事?」
「ええ」
アリシアは今後、教会の本部に出向かなければならないらしい。これまでの事を教会に報告する為だ。
だが、その為にアリシアは俺と離れ単独で教会に行かなければならない。俺が教会へ出向くのは敵の本拠地に出向く様なものだ。
そして、アリシアは明後日、教会本部に向けて出立する予定との事だ。
「家の者には、お兄様が何不自由なく過ごせるように言い付けておきます」
「分かった」
「後、それとなんですが……、執事長が言っていた様に、明日お父様が帰ってきます。その時にお父様と会ってほしいのです」
「……っ」
「お父様やお母様に知られずに、何時までもお兄様にここにいてもらうのは不可能ですから……」
そうだ、何時までもアリシアの客人としてこの屋敷にいる訳にはいかない。しかも、明後日以降はアリシアは暫くこの屋敷にいないのだ。
今の内にどんな形であれ何かしらの決着を付けないとこの屋敷に長期間居続ける事は出来ないだろう。
父上と会えば、もしかしたら俺が数年前にここから追放された者である事に気が付くかもしれない。そして俺の事が父上に知られればどうなるかは想像がつかない。だからこそ、アリシアがいるうちに何かしらの着地点を見つけなければならないのだ。
「だけど、今更父上が、俺がこの屋敷で暮らす事を認めるとは到底思えないんだが……」
「ですから、こういうのはどうでしょうか?」
そして、アリシアは自分の案を俺に話し始めた。
「――――――という感じですればいいのでは、と思いまして」
だが、アリシアの提示した案は見方によってはかなり過激とも言えるものだ。そこまでしなければこの屋敷に居続けることが出来ないのか?
俺は思わずそう考えてしまった。そこまでするぐらいなら、もっと簡単に済む方法もある。
「い、いや、そうまでするぐらいなら、この王都の何処かで宿を借りて……」
「……お兄様は私と一緒に暮らすのが嫌なのですか……?」
「うぐっ……」
アリシアは今にも泣きだしそうな表情を浮かべる。そうされると、アリシアの案を断るとは言いづらい。最近アリシアのあの表情に弱くなった気がしてならなかった。
「わ、分かった。アリシアの言うとおりにするから……」
俺がそう言ったとたんにアリシアの表情は泣きだしそうな表情から、笑顔へと早変わりした。
「それでは、先ほどお話しした通りにお願いいたしますね!!」
「あ、ああ」
その後は、アリシアと少しばかり雑談をした後、彼女はそろそろ自分の部屋に戻ると言い出した。
そして、アリシアは立ち上がり、扉の前まで向かう。彼女は扉の前で一礼しながら、「では、失礼いたします」と言って、この部屋から退出していったのだった。
そして、翌日、アリシアから父上が帰ってきたとの連絡があった。今は執務室にいるらしい。俺はアリシアと共に執務室まで向かう事にした。
そして、屋敷をアリシアと共に進み、遂に執務室の前まで到着した。俺達の目の前にある扉、ここを開ければ父上が待って居る筈だ。俺は思わず一度深呼吸をする。
「……アリシア、行こうか」
「はい」
そして、アリシアは扉を二度ノックする。
「誰だ」
「……っ」
中からは数年前から一度も聞いていない父親の声が聞こえた。その声を聞いたとたん俺の心中には、懐かしさが込み上げてきた。
「アリシアです」
「そうか、入れ」
「はい」
「(お兄様、後でお呼びしますので、ここで少々お待ちいただけないでしょうか?)」
アリシアは執務室の中には聞こえない小声でそう言ってきた。
「(……分かった)」
「(ありがとうございます)」
そして、アリシアは執務室に入っていく。俺は執務室の外でアリシアの呼び出しを待つ事にしたのだった。




