54 アルマの街
第三章スタートです。
それに伴い第二章を【謙譲の騎士】アリシア・エレイン編へと名前を変更してあります、ご了承ください。
後、活動報告に第二章の所感を上げております。
未読の方はぜひこの機会にご覧ください。
アリシアと共に馬車に乗り込んで王都へと向かい始めてから数日。俺達は王都までの道中にあるアルマの街と呼ばれる場所に滞在していた。
アルマの街には教会の支部があった。更には派遣された聖騎士が泊まる為の寝室も用意されていた。王都へ出発して以降、これまでの旅路は野宿だったので、この街でしっかり休息を取り、その後王都に再出発する予定になっている。
俺はアリシアと共にこの街の貴賓室に案内されていた。神聖騎士であるアリシアを迎える為に貴賓室が用意されたのだ。流石、重要人物を迎え入れる為にある貴賓室なだけあってこの部屋はかなりの大きさがある。
この貴賓室に置かれたベッドも数人が一緒に使ってもまだ余裕がある大きなサイズになっている。しかも天蓋付きだ。こんなベッドを使用した事は今まで一度も無い。
部屋に置かれた調度品なども、一目で高級品と分かるものばかりが置かれている。
最初は、こんな部屋を使う事には気後れしていた。
「アリシア、本当にこの部屋を使ってもいいのか?」
「ええ、この部屋は滅多に使われることは無いそうですから」
と言う会話が俺とアリシアの間で交わされていた程だ。結局、アリシアのその言葉が決め手となり、俺はこの部屋を使用する事になった。
だが、次に困惑したのはアリシアもこの部屋を使うと言い出したことだ。いくら、妹とはいえ、彼女も年頃の少女であるのだ。若い男女が同じ部屋を使うのは……、と思っていたが、アリシアの強い要望に押し切られ、この部屋を二人で使うことを容認してしまった。
しかし、二人で同じ部屋を使うといっても、流石に着替えなどはカーテンで区切る事にしている。
因みに、当のアリシアは「今回の事であらかじめ根回ししておきます。お兄様の事を悪い様にはいたしませんから」と言いこの部屋からは出て行っており、今はこの部屋にはいなかった。
どうやら、この教会には遠距離会話用の魔道具が設置されているらしい。それを使い教会本部と連絡を取り今回の事をうまく誤魔化しながら報告するとの事だ。まぁ、この教会に設置されている物は規模が小さく短時間しか会話できないのだそうだが。
――――コンコン
俺が今迄のことを思い返していると、突如としてそんな扉が叩かれる音が鳴る。
「お兄様、お待たせしました」
そう言いながらアリシアがこの貴賓室に戻ってきた。
「大丈夫だったか?」
「ええ」
その後、アリシアは教会にどう報告したのかを語り出した。
アリシア曰く、ラダスの街に向かう途中に突如として七罪武具が封印されている封印殿への侵入者の存在を察知した。しかも、その封印殿は今迄所在が知られていない場所、異空間に存在していた場所だった。そこへと繋がる座標も同時に知る事が出来た。
そして、自分の判断でラダスの街に向かう任務を放棄、その封印殿に向かう事を最優先にした。そして、その場に急行し、封印殿に到達したが、七罪武具の封印は解かれた直後だった。そして、その封印を解いたと思われる魔人と相対。戦いの末に深手を負わせ、あと一歩という所までは追い詰めたが、結局逃亡を許してしまった。
という作り話をアリシアは出来るだけ簡潔に報告したのだそうだ。すると、その話を聞いた教会本部は一刻も早く、最優先で帰還してもらいたい、そして、その詳細を聞きたいとの事だった。
まぁ、事実と違うのは最後の部分だけなので、ボロが出る事も無いだろう。
因みにではあるが、この封印を解いた魔人という役目は俺の代わりにラダスで死んだガイウスに担ってもらう事になっている。アリシアと相談した結果、それが一番良いだろうという結論に至ったのだ。
この街に到着した時から、日が暮れかけていたが、アリシアが教会本部への報告から戻ってきた時には完全に日が暮れていた。
その後は夕食を終え、既に就寝してもおかしくない時間に入っていた。俺は既に就寝の準備を終えてベッドの上で待機している。後はベッドで横になり目を瞑るだけでいい。
すると、隣にあるカーテンが開きその中からアリシアが出てきた。
アリシアも寝着に着替えたようだ。白を基調とし、服の至る所にフリルがあしらわれている寝着を着ていた。その寝着は正直かなり似合っており、アリシアの可憐さを更に引き立てていた。
「お兄様、どうですか? 似合っていますか?」
「あ、ああ」
「そうですか、良かったです」
そう言いながら、アリシアは俺のいるベッドに入り込んできた。流石に、妹とはいえ、異性と同じベッドで寝るのは緊張する。頬が妙に火照ってきた。
因みにこの部屋にはベッドは一つしかない。本来この部屋は一人用の部屋らしいからだ。
「お兄様、顔が赤くなっていますけど、どうかなさいましたか?」
俺の顔が、赤くなっているのに気になったのだろう、アリシアが声を掛けてくる。
「い、いや、大丈夫だから」
「そうなのですか?」
「だ、大丈夫だから!!」
そして、俺は慌てて横になり目を瞑る。すると今迄の事で疲労がかなり溜まっていたのだろう。激しい睡魔に襲われそのまま深い眠りに落ちてしまうのだった。
「んっ、はぁ~」
朝、この部屋にある大きなガラス窓から入る朝日によって目が覚めた。身体を一度伸ばし、意識を完全に覚醒させる。すると横から、すぅ、すぅ、と言った寝息が聞こえてきた。俺はその寝息が聞こえてきた方を向く。すると、そこにあったのはアリシアの可愛らしい寝顔だった。
「アリシア……、そうか、昨日は……」
「ん、んっ、ふわぁ~」
「あっ……」
どうやら俺の声が隣にいるアリシアを起こしてしまった様だ。アリシアは目を覚ました後、一度大きく体を伸ばした。
「ふわぁ、あっ、お兄様ぁ、おはようございますぅ~」
「ああ、アリシア、おはよう」
そして、俺達は揃ってベッドから出て着替えを済ませる。
その後は朝食が運ばれて来た。俺達はそれを食べ終えた後、今後の予定を話し合うのだった。




