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七罪剣と大罪人と呼ばれた少年の反逆譚  作者: YUU
第二章 【謙譲の騎士】 アリシア・エレイン編
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48 アリシアとの戦い 前編

昨日は更新できなくて申し訳ありませんでした。

 戦いは前哨戦を終え中盤に入っていた。


「光剣よ!!」


 アリシアがそう唱えると彼女の周りに七本の輝く剣が生み出された。あの剣一つ一つから聖武具に匹敵する量の聖気が込められているのが分かった。


「行きなさいっ!!」


 そして、アリシアのその言葉で彼女の周りの剣は俺に目掛けて放たれた。


「っ!!『喰らう影』!!」


 俺はアリシアが放った光剣に対抗する様に影獣を具現化する。そして、光剣を抑える様に命令を出す。

 だが、アリシアが放った光剣はその目標を影獣に変えたのだろう、光剣は突如軌道を変え影獣の方へと向かい、多方向から影獣を滅多刺しにしてしまった。

 七本の光剣に刺された影獣はすぐに消えてしまった。どうやら影獣ではあの光剣には対抗できない様だ。

 影獣を滅多刺しにした光剣はそのまま向きを俺の方に変えて向かってくる。


 ――――ギィンギィンギィンギィンギィンギィン。


 放たれた七本の内六本は捌ききる事が出来た。だが、そこが限界だった。

 

 ――――スシャッ!!


「くぅっ!!」


 残りの一本の光剣を捌ききる事が出来ず、一本が俺の体を掠めた。


「くそっ!!」


 俺は思わずそう吐き捨てる。光剣が掠めるだけでも少なからず魔力を持っていかれた。


「どうするか……」


 手数が足りない、あの数の剣を捌ききるには剣一つでは足りなかった。

 光剣は何時の間にかアリシアの周りに戻っている。もし、あの光剣が再び放たれれば先程の二の舞だ。


「っ!!」


 光剣を自分に周囲に配置しながらアリシアがこちらに向かってくる。

 そして、アリシアの周囲にあった光剣は途中で彼女から先行するようにこちらに一直線に向かってきていた。

 不味い、最悪だ。

 光剣を捌こうとすれば、その後ろに控えるアリシアの神剣の一撃を受け、アリシアの方を防ごうとすれば光剣をもろに受ける事になる。


「これで、終わり、です!!」


 光剣を防ぐか、光剣を無視しアリシアの攻撃を防ぐか俺は選択を迫られる。だが、アリシアの一撃、七本の光剣のどちらを受けても圧倒的に不利な状況に追いつめられる。

 何か、何か無いのか、何か。











「え……?」

「はぁ、はぁ、危な、かった……」


 俺の左手には七罪剣とは違うもう一つの武器が握られていた。

 ここで刀の形をした七罪武具を俺は取り込んだ。ならばそれをそのまま具現化できるのではないか。少し飛躍した考えではあったが、それは当たっていた。

 咄嗟に具現化し右手に持つ七罪剣で光剣を捌きながら、左手に持った刀でアリシアの攻撃を何とか防ぐ事が出来ていた。


「それは、一体……?」


 色欲刀アスモデウス。

 不思議とこの左手にある武器の名前が頭の中には浮かんでいた。


 そして今、アリシアの神剣と俺の左手に持った色欲刀は現状鍔迫り合いをしている。


「もらったっ!!」


 おかげで、右手は光剣を捌いた事で今は手空きになっている。それをアリシア目掛けて振った。


「くっ!!」


 右手に持つ七罪剣がアリシアに当たる直前、彼女は後ろに飛び退いた。


「厄介ですね……、なら!!」


 アリシアの周りにある七本の剣の内、一つが唐突に消える。

 何を? そう思った瞬間だった。

 俺の目の前に突如として光剣が現れたのだ。

 右手に持つ七罪剣を慌てて構え、盾代わりにする事で何とか光剣を逸らす事が出来たが、今のはまるで光剣が俺の目の前に転移した様だった。


「な、何が……?」


 何が起こったのか? だが、俺のそんな疑問に答えるようにアリシアは語り出した。


「【謙譲】、その本質は自分を低め、相手を高める事。それは言い換えれば自分の力を相手に貸し出す事、ならばそれを逆にすることも可能だとは思いませんか?」

「それは一体どういう事だ……?」

「そして、聖騎士の持つ聖武具の源である聖種、それも元をたどれば七天神具の力の一部です。聖種と七天神具、聖騎士と神聖騎士の関係は【謙譲】という概念に近しいとは思いませんか?」

「つまりはこう言いたいのか? その光剣一つ一つが聖騎士の持っていた聖武具だと」

「その通りです!!」


 つまり今のアリシアは自身の神剣に加え聖剣を七本持っている事になる。いや、あの力こそがアリシアの持つ神剣の力なのだろう。


「転移剣!!」

「っ!!」


 アリシアがそう叫ぶと先程弾いた光剣の聖気の気配が突如として自分の背後に現れる。その聖気を察知した俺は身体を逸らす事で何とか回避することが出来た。

 だが、そこで抱いた思いは回避した安堵ではなかった。

 アリシアが叫んでいた転移剣と言う名前、そして転移したような光剣の動き、その二つから察するに転移の能力を持った聖剣なのだろう。厄介すぎる聖剣だった。


「聖炎剣!!」


 そう叫ぶとアリシアの背後にある光剣の内の一つの剣身が青い炎で燃え上がる。

 そして、その光剣は一直線にこちらに向かってくる。


「その程度でっ!!」


 だが、転移剣の方も、聖炎剣に合わせて動いて来る。

 転移剣の方を七罪剣で、聖炎剣を色欲刀で受け止める。聖炎剣は弾くことが出来たが、色欲刀は何時の間にか聖炎剣の青い炎で覆われていた。そして、その青い炎は色欲刀から一瞬にして腕を覆っていき、そして俺の体全体を包み込んでいく。


「ぐぁっ!!」


 これは、聖気の炎だ。さらに厄介な事にこの炎は魔力を糧として増殖する性質があるようだ。今も俺の体の表層と魔力をジリジリと燃やし増殖し続けている。聖気の炎である以上魔力を込めれば掻き消す事が出来るだろうが、生半可な魔力ではこの炎の糧となるだけだろう。


「はぁっ!!」


 俺は魔力を一瞬だけ全力で放出する事で聖気の炎を掻き消した。


「はぁ、はぁ」


 恐らくはあれが聖炎剣の力だ。あの剣が魔力を持つ物に触れるとその対象に青い炎が感染する。そして魔力を糧に増殖していき、最終的には対象の全てを燃やし尽くすのだろう。


「くっ」


 転移剣、聖炎剣、とアリシアの周りにある内の二つの能力が明らかになったが、まだ使われていない剣が五つも残っているのだ。

 俺は思わず苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

 戦いはまだまだ終わりそうにも無かった。

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