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七罪剣と大罪人と呼ばれた少年の反逆譚  作者: YUU
第二章 【謙譲の騎士】 アリシア・エレイン編
47/128

47 【謙譲の騎士】

「そこにいるのは誰です!?」


 そんな声が自分の後ろから聞こえてきた。俺は思わず声の方を向く。

 そこにいたのはピンク色のドレスアーマーを着た、金色の髪をした小柄な年頃の一人の少女だった。

 その少女は慌てた様子でこちらまで駆け寄ってきた。

 その少女が俺の近くまで来ると、一度祭壇の方に視線を向けた後、俺の手に持った七罪剣の方にも視線を向けた。


「やはり、間に合いませんでしたか……」


 その少女はそんな言葉と共に何かを憂うような、そんな表情を浮かべる。


「私は神聖騎士の一人、【謙譲の騎士】、アリシア・エレイン。貴方は一体何者です!?」

「え……?」


 俺は呆気に囚われた表情になった。こうして七罪武具を集めている以上、いずれは彼女と相対しなければならない事は分かっていた。

 しかし、その時がこんなに早く来るなど全く予想していなかった。

 だが、俺はすぐに正気に戻っていた。

 こうして相対している以上、俺とアリシアは戦わなければならないのは間違いが無かったからだ。


「どうしたのです? 名乗る事もしないのですか?」


 名乗る、か……。それならば、丁度良い名前がある。神聖騎士であるアリシアと相対するならこう名乗るのがいいだろう。


「【七罪の魔王】カイン」

「カイン……?」


 そして、アリシアは少し考えるような仕草をした後、「いえ、あり得ないですよね」と小さく呟いた。


「ならば、大罪人【七罪の魔王】カイン。貴方をここで討たせてもらいます!!」


 そして、その言葉と共にアリシアから膨大な聖気、それこそ俺の持つ魔力に匹敵しそうな程の聖気があふれ出した。


「これが、神聖騎士、か……」


 俺は神聖騎士と呼ばれる者がどれ程の存在かを身を持って体験していた。


 そして、アリシアの右手には何時の間にか一振りの剣が握られていた。その剣は柄だけが水色をしており、それ以外の剣身や持ち手といった部分は金色に輝いている。

 まるで芸術品と見間違えるような美しさをその剣は放っていた。

 だが、その剣の最も特筆すべきところは芸術品と見間違えるような美しさなどではない。あの剣からはすさまじい程の聖気が放たれている。


「あれが……」


 アリシアの手に握られているあれこそが七天神具の一つなのだろう。


 ――――忌々しい!! 奴を滅ぼせ!! 我らの仇敵たる奴を滅ぼせ!! 必ず滅ぼせ!!


 アリシアの持つ七天神具を見た瞬間、頭にそんな声が痛みと共に響いてきた。


「くぅっ!!」


 この声、あの時と、初めて聖武具を見た時と同じ声だ。しかも、あの時よりもその声は遥かに大きい。まるで、憎悪が形を取ったような声だ。

 俺は思わず頭を振るう。だが次の瞬間にはそんな声も痛みも消失していた。


「そう、これこそが七天神具の一つ、【謙譲】の銘を持つ神剣、謙譲剣ミカエルです」

「くっ」


 こうして、相対しているだけで、ほんの少しずつではあるが、俺の魔力が減っている。

 アリシアの纏う聖気と俺の纏う魔力が互いに打ち消し合っているのだろう。


 痛みに気を取られたが、俺は慌てて剣を構える。


「行きます!!」


 その声と共にアリシアが攻撃を仕掛けてきた。

 ここに俺とアリシア、魔王と神聖騎士の戦いが始まった。




「はぁっ!!」

「くっ!!」


 アリシアの剣術に俺は押されていた。我流の俺とは違い、アリシアは正式な流派を習得しているのだろう。そう言った技術で差が出ている。

 ただでさえ相対しているだけで俺の魔力が減っているのだ。そして、アリシアの持つ神剣と剣を交えても魔力が減っていく。

 更にアリシアの持つ神剣が俺の体にかすっただけでも魔力が減っていく。それはアリシアも同じかもしれないが、アリシアの聖気は底を見せる気配すら無い。

 【色欲】の七罪武具を取り込んだ事で魔力も増えている。俺の魔力も底は見えないが、このまま続けていれば、俺の魔力が尽きるのが先だろう。そうなれば、

 俺は一旦アリシアから距離を取った。そして、この状況に最も適したと思われる技を放った。


「『喰らう影』よ!!」


 俺は『喰らう影』で影獣を呼び出した。


「行けっ!!」


 そして、影獣にはアリシアに攻撃する様に命令を出す。


「なっ!?」


 だが、影獣はアリシアの体に触れるとすぐに霧散してしまった。その光景を見た俺は思わず声を上げてしまう。

 はっきりと分かった、影獣はアリシアの纏った聖気によって掻き消されたのだ。


「その程度の魔力では私には届きません」


 確かに影獣にはそこまで魔力は込めていなかったが、まさかそんな風に消えるとは思っていなかった。恐らくは、生半可な魔力を込めた技ではアリシアの纏う聖気にかき消されてしまうのだろう。

 アリシアもその事は分かっていたのだろう。迎撃もしなかったのがその証拠だ。


「それにしても、まさかその剣は……」


 アリシアは一瞬だけ驚いた表情を浮かべた後、納得がいったような表情を浮かべる。


「そういう事ですか。奈落を消滅させたのも貴方だったのですね。だとしたら、尚更ここで貴方を確実に討たなくてはいけません」 


 神聖騎士であるアリシアには『喰らう影』を見た事で気が付いたのだろう。七罪剣にある【暴食】の七罪武具の力に。

 そして、アリシアは再び俺に詰め寄ってくる。

 俺はこの戦いに激戦の予感を感じながらも戦い続けるのだった。

アリシア戦は難産になりそうなので、もしかしたら明日は更新できないかもしれません。


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