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七罪剣と大罪人と呼ばれた少年の反逆譚  作者: YUU
第二章 【謙譲の騎士】 アリシア・エレイン編
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44 キマイラ 後編

良いタイトルが思いつかなかった為、今話は後編と付けました。

それに伴い、前話のタイトルの最後に前編と付けました。

「はぁ!!」


 足がダメなら、尻尾だ。そう考えた俺は尻尾の一撃にカウンターを決める。


「……ダメか」


 だが、やはり無駄だったようだ。足に比べれば細い尻尾は切り落とす事自体は出来たが、その尻尾もすぐに再生してしまう。

 完全に詰んでいるかもしれない。オークキングの時と似たような感覚だ。


「うおっ!!」


 そんな事を考えていると、キマイラの口が動き、俺に向かって噛みついてくる。

 直前で気付き何とか回避は出来たが、それでも危なかった。

 キマイラの口の中には鋭い牙が何本もある。あんなものに噛みつかれたら、当たり所が悪ければ身体に穴が開く。

 この状況を打破できる手は……。


「……ある」


 だが、その為にはキマイラに接触しながらも、キマイラの攻撃を極力受けない場所が必要だ。そんな場所なんてどこにも……。


「ある」


 キマイラに接触しながらも、攻撃を受けない場所、そんな都合のいい場所が一か所だけあった。

 俺はその場所まで向かう為の案を練り、実行に移す。

 その場所まで向かう為には、キマイラが特定の行動をしなければならない。

 その時が来るまで、俺は回避に専念していた。そして、遂にその時が来た。キマイラが再び口をこちらに向けて、噛み付こうとしてきたのだ。

 今だ、と判断した俺は一気に跳躍する。

 そして、噛み付こうとして普通より低い位置にあったキマイラの頭に着地し、そのまま頭を踏み台にして、一気にキマイラの背中まで駆け上った。

 キマイラの背中に乗ることが出来た。キマイラの背中にいれば、キマイラから攻撃を受ける事は無い。ここなら接触しながらも、攻撃を受けないという二つの条件を満たしている。

そして、キマイラの背中にいる今なら迷宮探索中に考え付いたあの技を使うことが出来る。キマイラの背中に七罪剣を突き刺し、魔力を一気に込める。


「『暴食の深淵』」


 迷宮探索中に考案した新技の一つ、『暴食の深淵』、この技は相手に剣を突き刺し、そこから『喰らう影』を発生させ、相手を侵食していく。そして、その侵食が全身まで及んだ時、相手を喰らうのだ。

 無論欠点が無いわけではない、その一つが使用してから相手を喰らうまで時間がかかる事だ。ゴーレム相手に試した結果、その時間は相手の質量に比例している事が分かっている。

 相手に剣を突き刺してから喰らうまでの間、ずっと相手に剣を刺した状態を維持しなければならないのだ。対人戦では使用する事が出来るとは思えない。

 だが、こういった敵に対しては、時間はかかるが有効打になりうる。


 キマイラの背中に刺さった七罪剣から『喰らう影』が溢れ出てくる。『喰らう影』はキマイラの表層を黒く侵食する様に全身に渡っていく。このままいけばいずれキマイラを包み込み、その後、キマイラの全てを喰らうだろう。

 だが、キマイラもただじっと待っている訳は無かった。キマイラは身体を激しく動かし、振り落とそうとしてくる。だが、七罪剣を支えにして、何とかキマイラの背中に踏みとどまった。

 もし、俺が七罪剣を手放してしまうか、キマイラの背中に刺さったままの七罪剣が抜かれれば、『喰らう影』を制御できずに、消えてしまうだろう。

 少しでもキマイラの注意が自分から逸れる様にと、キマイラの足元にいる影獣にキマイラの足に噛み付く様に命令を出す。


「うおっ!!」


 キマイラの動きがより一層激しくなった。それに伴って、俺もキマイラの背中に踏みとどまる事が出来ずに振り落とされそうになる。だが遅い『喰らう影』がキマイラの全身に行き渡った。


「飲み込め!!」


 『喰らう影』がキマイラの全身を喰らって行く。だが、キマイラも最期の抵抗をしてきたのだ。

 なんと、最後に高く飛び、そのまま俺が乗ったままの背を地面に向けて落下しようとしている。


「まさかっ、こいつっ!!」


 キマイラは俺を道連れにするつもりなのだろう。

 このキマイラは人の数倍以上のサイズで全身が石で出来ているのだ。それ程の質量を持つ物体が自分の上に乗った場合、いくら魔力で身体を強化できるからと言っても、普通に考えれば圧死という結末が待っている。

 俺がキマイラごと地面に叩き付けられるのが先か、それとも『喰らう影』がキマイラを喰らうのが先か。

 俺は生き残る為に、魔力を振り絞り、『喰らう影』がキマイラを喰らう速度を無理矢理強化するのだった。


















「かはっ」


 落下の衝撃で背に激痛が走る。あれだけの高度から勢いよく一気に落ちたのだ。もしかしたら、背骨が何本か折れているかもしれない。

 キマイラは俺の上に落下してくることも無かった。そのキマイラは既に影も形も無くなっている。キマイラは自らの核ごと『暴食の深淵』によって消え去ったのだろう。


「な、何とか生き残れた……」


 もう少しキマイラが消えるのが遅かったら、俺はキマイラに押し潰されていたかもしれない。

 だが、『喰らう影』を無理矢理強化した為、魔力を消耗してしまった。

 背中の傷と魔力が回復するのを待ってから、出口が無いか、この闘技場の探索する事にした。




 キマイラとの戦闘後、休息を終えた俺はこの場所の探索を開始していた。

 そして、キマイラの石像が最初にいた石でできた台座。その台座を調べてみると、後ろの方に小さな突起があった。それを押してみると闘技場の一角の壁が突如として下に降りたのだ。そして、その壁の奥には階段があるのが見えた。

「やっと、見つけた」

 やっとの思いで見つけた階段、俺は急いでその階段を昇っていくのだった。

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