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七罪剣と大罪人と呼ばれた少年の反逆譚  作者: YUU
第二章 【謙譲の騎士】 アリシア・エレイン編
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43 キマイラ 前編

昨日は用事で更新出来ませんでした。

申し訳ありませんでした。

 あれから数度ゴーレムと遭遇したが、その全てを難なく撃退していた。ゴーレムの対処法自体はあまり変わらなかったので、回数を経るごとに対処に慣れてきている。

 そして、この迷宮は恐らく、侵入者を排除するようには作られてはいないのだろうという推測も立てていた。

 そもそも、封印殿に侵入しようとする者は普通に考えれば、普通の人間ではなく、魔人の類だ。そんな相手に、このゴーレムではあまりにも心もとない。

 かといって、魔人に対抗できる存在を常にこの迷宮に配置しておくのは不可能だ。

 結局、この迷宮の主な目的は時間稼ぎでしか無いのだろう。




 この迷宮に飛ばされて、どれだけの時間が過ぎたかわからない。感覚で言うなら少なくとも数日は過ぎているだろうとは思っているが、それもどこまで正確かはわからない。

 一人での探索はあまりに効率が悪く、どうにかできないかと考えた時、影獣を使う事を思い付いた。だが、今の影獣では命令を聞くだけの人形に近い。それこそ、この迷宮にいるゴーレムとあまり変わりがない。

 何とか出来ないかと、色々と試行錯誤した結果、『喰らう影』で生み出した影獣と五感をある程度共有する事が出来る様になり、更にその都度命令を出す事が出来るようにもなった。

 それを迷宮内に放ち探索させた結果、効率が二倍近くになっていた。




「ここが、最後、か……」


 俺の目の前には大きな扉があった。その扉は何の装飾も施されている事は無く、ただ取っ手が付いているだけだった。ここまでの探索で、ここ以外の殆どの場所の探索を終えている。

 探索した結果、扉がある場所はここ以外になかった。出口があるとするならばここ以外に考えられない。

 同時に罠が待っている可能性もある。だが、ここ以外には何も無かった以上、ここに入るしかない。

 俺は、扉を開け奥へと入っていくのだった。




 扉を開けた先にあったのは、闘技場を彷彿とさせるドーム状の空間だった。その大きさは小さな村ならすっぽりと入り、それでもかなりの余裕が残る程の大きさだ。

 その闘技場のような空間の中央には大きな獣の形をした全身灰色の石像があった。その石像は石で作られた大きな台座に乗っている。大きさは、この迷宮を徘徊していたゴーレムよりもさらに大きく、人の数倍はあるだろう。

 その石像の顔は獅子を思わせる顔をしており、胴体は四足歩行の獣、そして、尻尾には蛇を模した様な尻尾が生えている。

 この石像が模している生き物を俺は知っている。


「キマイラ……」


 キマイラ、それはすでに絶滅した生物とも、空想上の存在とも言われる生物だ。昔読んだ本に載っていた絵が、この石像とそっくりだった。

 だが、何故こんな物がこんな所にあるのか。そんな疑問を抱きながらも、この闘技場のような空間のどこか出口がないのかと探そうとした。

 そして、俺がそのキマイラの石像に近づいた時だった。突如、キマイラの石像がガタガタと揺れ始めたのだ。

 そして、直後信じられない事が起きる。なんと、キマイラの石像が動き出したのだ。

 さらに驚くべき事に、キマイラの石像の動きは、元は石像とは思えない、それこそ肉食獣を彷彿とさせるほど、軽快な動きをしていた。

 そして、キマイラの石像は明らかに俺に敵意の様な物を向けている。このキマイラの石像も、迷宮を徘徊していたゴーレムと同じ錬金術で作られた物なのだろうか?

 だとしたら、このキマイラの石像もゴーレムと同じ侵入者排除の命令を受けている可能性がある。


「こいつが番人という訳か」


 このキマイラを倒さない限り、ここにあるかもしれない出口を探す事すらままならない。

 そして、もしこのキマイラを倒せば出口が現れるかもしれない。俺はキマイラとの戦いを開始するのだった。




 キマイラは声を上げることは無い。石像なのだろうから当たり前なのだが、肉食獣の様な見た目と動きをしながら、叫び声一つ上げないのは違和感しかない。

 キマイラの尻尾も元は石像とも思えぬ複雑な動きをしている。

 更にキマイラのサイズがかなり大きい為、四肢の太さもそれに比例している。キマイラの四肢の太さはまるで石柱の様だ。

 むやみやたらに懐に入り、あの足の一撃を喰らえば、それだけでも大きいダメージが入る。あの足に押し潰されれば、最悪は圧死しかねない。

 だが、隙が無いわけでない。

 俺は影獣を呼び出し、二手に分かれる事にした。俺はキマイラの左に回り込み、影獣はキマイラの右に回り込んだ。

 キマイラは、警戒している様で俺と影獣の両方を交互に見ている。そして、キマイラが俺の方を向いた時、影獣にキマイラの右足に噛みつくように命令を出した。

 影獣がキマイラに突撃し右足に噛みつく。キマイラは慌てて影獣の方を向き、右足を何度も振り、影獣を右足から振り落とそうとしている。

 キマイラが四足歩行している以上、右と左の両方の足を同時に動かす事は出来ない。影獣を振り下そうとしている右足がずっと動いている以上、左足を動かすことが出来ないのだ。

 俺はそんな隙だらけの左足を斬り裂くべく、キマイラの懐に入っていく。


「はぁっ!!」


 流石は七罪剣、石柱の様なキマイラの足も何の抵抗も無く斬り裂いていく。

 だが、左足の中心まで斬った時だった。キメキメキと言う謎の音が聞こえてきたので思わずそちらを向くと、斬ったはずのキマイラの足が既に再生し始めていたのだ。


「何!?」


 俺は慌てて剣を自分の元まで引き寄せた。そして、慌ててキマイラから飛び退く。その直後、俺がいた場所にキマイラの右足が振り下されるのが見えた。運が良かったのだろう。あのままあの場に居れば、あの右足に押し潰されていた。

 影獣に噛みつかれたはずの右足も、斬ったはずのキマイラの左足も完全に元通りになっていた。影獣は今もキマイラに噛みついているが、再生能力のせいか大きなダメージにはなっていない様だ。俺は、影獣にキマイラから離れるように命令を出した。


「くそっ」


 恐らくこのキマイラも、迷宮にいるゴーレムの様に再生能力を持っているのだろう。

 このままではどうしようもない。ゴーレムと同じというなら何処かに核がある筈だが、この巨体と再生速度では核を見つけるのも容易ではない。

 俺はどうやって、足にダメージを与えられるかを考えた時だった。

 足に気を取られたのがいけなかったのだろう。キマイラの尻尾が突如伸び、俺の上部から急降下してきた。

 尻尾がまさかそんな風に伸びるとは思ってもいなかった。足の動きに気を取られ、尻尾の攻撃に気が付くのが遅れてしまった。


「くっ!!」


 風切り音が聞こえた事で、尻尾に気付くことが出来、身体を翻し、何とか回避をする。何とか直撃を避けたが、それでも完全に回避する事は出来ず、左足の太ももの部分に尻尾の一撃が当たってしまう。


「痛っ!!」


 尻尾の一撃は槍を彷彿とさせる物だった。左足の太ももに穴が開き、思わず左足を跪いてしまった。このままでは動く事が出来そうもない。

 俺は自己治癒能力を魔力で強化し、左足の治癒能力を強化する。

 これはグレアムから奪った記憶にあった知識の一つだ。自己治癒能力を魔力で強化して、再生するかのような速度での回復ができる様になっている。

 そして、数秒後には左足に出来た大きな穴は完全に塞がれ、動けるようになっていた。

 だが、回復するのも魔力を使う以上、無限に回復できるわけではない。魔力が切れる前にこのキマイラを倒さなければならなかった。

 流石はこの場所の番人だけあって一筋縄でないかなさそうだ。

戦闘の組み立てや戦闘描写ってとても難しいと感じます。

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