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七罪剣と大罪人と呼ばれた少年の反逆譚  作者: YUU
第二章 【謙譲の騎士】 アリシア・エレイン編
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36 新たな目的地への旅立ち

 ラダスの街を出た後、俺は次の目的地に向かっていた。

 ガイウスの記憶を断片的にではあるが、手に入れた俺は奴の計画の一端を知る事が出来た。

 それ故に行かなければならない場所があった。

 どうやらガイウスとその部下たちは所在不明となっているらしい七罪武具の封印場所に関する資料を手に入れたらしい。

 ガイウスとその部下はラダスの街で大騒動をを起こし、教会や聖騎士達の目をラダスに向け、その隙に七罪武具の封印を解き、手に入れるつもりであった様だ。

 その大騒動とは、言うまでも無いだろう。

 手に入れた記憶が断片的なせいで計画の詳細な内容までは知る事が出来なかったが、手掛かりとなる情報があった。

 どうやら、ラダスからそう遠くない場所にある、カルラの街という所に奴らが使っていた拠点があるそうだ。

 そこに行けば何か、次に繋がる情報が手に入るかもしれない。

 そして、その情報を追っていき、七罪武具を見つければ、俺が望んでいた更なる力が手に入る。

 七罪剣の本来の力、他の七罪武具の力を『奪い』『喰らう』事が出来る力、それを使えば新たな七罪武具の力を手に入れられるのだ。

 ガイウスの記憶からはカルラの街の位置を知る事が出来たが、街道を使うルートだと、かなり遠回りになる様だ。

 最短で行くことが出来るのは、街道から外れ、森を抜け、山を越えるルートだろう。

 ガイウスの記憶に従う様に、山越えのルートを進む事にした。




「おい、そこのてめぇ。ちっと待ちな」

「大人しく従った方が身のためだぜ」


 街道から外れたからだろうか、武装した山賊が俺の目の前に現れた。俺が辺りに目をやると、森の茂みから同じ様な山賊がぞろぞろ出てきた。恐らくはもう囲まれているのだろう。山賊の数は、ざっと見た所、全員で数十人程度はいる。


「はぁ……」


 思わず溜め息をつく。

 俺はこんな所で時間を浪費している余裕はない。だが、この山賊達が襲ってきたら、見逃すつもりもない。


「なんだ、てめぇ……」

「これだけの数に囲まれて、随分余裕そうじゃねぇか」

「お頭、やっちまいますか」


 お頭と呼ばれた男は辺りにいる山賊よりも大柄だ。お頭と呼ばれていた様に、この男が山賊の頭なのだろう、実力も周りにいる山賊よりも上であると感じられた。そして、他の山賊には無い威圧感があった。

 まぁ、あの時戦った魔人ガイウスに比べれば、そよ風、いやその表現すら失礼かもしれない程度でしかなかったが。


「おい、お前。お前の持ち物と有り金全部を置いていけば見逃してやろう。どうする?」

「断る」

「そうかい、てめぇら、やっちまえ!!」


 リーダーの男の号令で周りの山賊は一斉に襲い掛かってくる。


「はぁ……」


 俺は再び溜め息をついた。

 そして、山賊達の振ってきた剣を素手で受け止める。今の俺なら、魔力で少し強化するだけで、山賊程度の振う武器なら簡単に受け止められるのだ。

 そのまま武器ごと山賊を振り回し、薙ぎ払う様に放り投げた。


「ぐげっ!!」


 放り投げた山賊は辺りの木に衝突しそんな声と共にそのまま地面に倒れ込んだ。


「剣を素手で掴んでおきながら、手に傷一つないだと!?」

「まさか、聖騎士か!?」

「いや、聖騎士ならこんな所に居る筈がねぇ」


 こんな連中に時間を取られるのも、もったいない。俺は七罪剣を具現化し『喰らう影』で影獣を生み出した。


「喰らっていいぞ」


 俺がそう言うと影獣はすぐさま山賊達に襲い掛かった。そして、影獣は辺りにいる山賊達を次々と喰らって行く。


「ひっ!?」

「お頭!?」

「お前らは、アレが何かわからねぇのか!?」

「は?」

「ま、間違いない。あいつは!! お、俺は逃げる!! お前らはあいつの相手をしてろ!!」


 そう言うや否や、山賊の頭は逃亡してしまう。

 だが、俺は山賊達を見逃すつもりはない。俺は、山賊達の相手を影獣に任せ、頭を追いかけた。

 そして、頭が逃亡し、統制を失った山賊は次々と影獣に喰われて死体も残さず消えていくのだった。




「はぁ、はぁ、はぁ」


 山賊の頭は全力で走り、何とか逃げようとしているが、俺の方が速い。先回りをして、頭の前に降り立った。


「ひっ!!」


 頭は一瞬怯えた表情になるが、逃げられないと悟ったのだろう。背にあった斧を抜き、俺に襲い掛かってくる。


「『強欲の魔手』よ」


 俺は『強欲の魔手』を使い、頭から武器を奪った。振り下している途中に、武器が無くなった頭は俺に攻撃を当てることが出来ず、空振ってしまう。そして、隙だらけになった胴体に、俺は蹴りを叩き込んだ。

 『強欲の魔手』は聖武具や魔器の様な物、聖気を纏った物は奪う事が出来ないが、何の変哲もない武器なら簡単に奪うことが出来る。

 俺は蹴りを入れられ尻餅をついた山賊の頭に近づいていく。

 そして、俺が近づくと頭はその分だけ後ろに下がる。


「ま、待ってくれよ、あんた、魔人だろ!? 俺は死にたくねぇんだ。頼む、殺さないでくれ。何ならあんたの小間使いになってもいい!! だから頼む!!」


 山賊の頭は俺に向かって必死に命乞いをしていた。


「ははっ」


 滑稽すぎて思わず笑ってしまった。かつて、俺を捕まえて奴隷商に売った山賊。

 今、そんな奴らの頭から必死に命乞いをされているのだ。

 だが、俺の心には何の感情も湧かない。


「興味ない」

「た、頼む。あんたに従う!! 足を舐めたっていい。だからお願いだ、俺達が持ってる財産、その全部をあんたにくれてやってもいい。俺がこっそり隠し持ってる財宝だって渡してもいい!! だからお願いだ!!」


 山賊の頭は未だに命乞いをしている。だが、見逃すつもりもなかった。


「だから、殺さないで……」


 ―――――ザシュ!!


 その命乞いの言葉の途中で、俺はこの男の首を斬り飛ばした。すると、頭に軽い頭痛が走る。


「うっ!!」


 どうやら、無意識の内に『魂喰』を使っていたようだ。山賊の頭の記憶が流れ込んでくる。だが、ガイウスの時の気を失うような痛みは無かった。

 まぁ、神代の魔人であったガイウスに比べれば、圧倒的に少ない程度しか生きていない男だ。

 ガイウスの時は、情報量が多かったから気を失ってしまったのだろう。

 神代の魔人に比べればこの男など、赤子の様なものだ。その分情報量も少なかった。

 その後、この男の記憶から、山賊のアジトを掴み、そこにあった財産、山賊の頭が言っていたこっそり隠し持っている財宝、その両方を奪った後、カルラの街への旅路を再開するのだった。


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