34 とある少女の独白 ★
第二章始まります。
今回、かなり短くなってますが、ご容赦ください。
章タイトルは今後変更するかもしれません。
何時からでしょうか。
公爵家の令嬢として、生まれた時から誰もが私に平伏しました。
幼い頃から、何をするのにも苦労する事はありませんでした。
手習い事もすぐに習得し、礼儀作法やダンスも完璧と言われました。
誰もが、私の事を天才、神童と言います。
そして神聖騎士として選ばれ、建国の祖の生まれ変わりとまで呼ばれるようになりました。
剣術も修行し始め、私には何人もの先生が専属で付く事になりました。
ですが、そんな人達もすぐに、私にはもう何も教えることは無いと言います。
容姿端麗、才色兼備、文武両道、誰もがそう私の事を称えます。
そして、社交界で私の名を知らない人はいなくなっていました。
王族ですら、時には私の機嫌を損ねない様にしてきます。
誰もが、私の顔色を窺い、私に取り入ろうとしてきます。
しかし、よく考えれば今迄私の中には自分の意思というものがあったのでしょうか? 今までしてきた事、手習い事や礼儀作法、ダンスの習得も、そのほぼ全てがお父様やお母様がそうしろと言っていたから従って習得しただけです。
あの人を、半分だけ血の繋がった兄であるカインを嫌っていたのだって、親にそう教え込まれたから。今思えば、結局の所、それ以外の理由なんてなかったのかもしれません。
家長の言葉に従い、自らの家の利益となる事の為に行動する。それが貴族令嬢としての正しい姿の筈。
まるで人形の様だと言われれば、否定はできません。しかしこの時の私にはそこに違和感を持つ事も無く、それ以外は考えられなかったのです。
しかし、最近になって私の心の中から時折、「貴女はそれでいいのですか? 自分の意思は無いのですか?」、そう言った言葉が聞こえてくるような気がしました。その声は日が経つにつれ段々と大きくなっている様な気さえしてきます。
私はその声が聞こえる度、家長の言葉に従うのが貴族令嬢としての正しい姿です、ずっと自分にそう言い聞かせてきました。これはずっと、それこそ両親が死ぬまで変わらないのだろう、その時の私はそう思っていました。それが変わる時が近づいているなんてその時の私には想像もしていなかったのです。




