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七罪剣と大罪人と呼ばれた少年の反逆譚  作者: YUU
第一章 【七罪の魔王】 カイン・エレイン編
24/128

24 休日

本日二話目です。

筆が思いのほか進んだので投稿します。

 翌日、俺達は街に出ていた。今日はアルトと相談して、休日にすることにしたのだ。この街に来て一月近くしか経っていない俺と違い、ここで生まれ育ったアルトはこの街に精通している。折角の休日なので、アルトに色々案内してもらう事にした。


「あっちに俺のお気に入りの店があるんだが、行くか?」

「ああ」


 アルトのお気に入りの串焼きの店があるという事で、そこに向かう。目的の屋台では大柄な男性が店番をしていた。


「おっさん、久しぶり!!」

「お前、もしかしてアルトか? 久しぶりだな、最近来ねぇから、死んじまったかと思って心配してたんだぞ!!」

「おっさんも元気だったか?」

「おうよ!! んで、そっちの奴は誰だ?」

「こいつはカイン。俺が傭兵になったのは知ってるだろ? こいつと組んでるんだ」

「そうか。カイン、だったな。俺はグラントってんだ、アルトにはおっさんって呼ばれてるけどな」


 グラントと名乗る屋台の店主に俺も軽く挨拶をする。


「アルトは危なっかしい部分もあるからな。よろしく頼む」

「危なっかしい部分ってなんだよ」

「おめぇ、忘れたのかよ。おめぇが昔、俺の娘と一緒に出掛けた時、野生動物に襲われそうになった俺の娘を庇った事があったろ。勇気と無謀は違うんだ。そういう所が危なっかしいって言うんだよ」

「いつの話をしてるんだよ……」

「そりゃあ、昔の話さ」

「俺は成長したんだ。大人になったんだよ」

「何言ってんだ。俺からすれば、お前はまだまだひよっこだ」


 アルトは以後も文句を言うが、グラントさんは取り合わず、ガハハハ、と笑っていた。


「お前ら、折角来たんだ。買ってけ」

「分かったよ。じゃあ、串焼きを俺とカインに一つずつで」

「あいよ」


 そして、グラントさんは慣れた手つきでサッと串を焼き上げ、俺達に二本ずつ手渡してきた。


「あれ? 一つずつしか頼んでないんだけど?」

「サービスだ。とっとけ」

「グラントさん、ありがとうございます」

「おうよ。その代わり、今後もこの店を御贔屓にしてくれよな」


 その後、グラントさんと軽い雑談をした後、次の目的地へと向かうため、屋台から離れたのだった。




 俺達が屋台から離れ、次に向かったのは酒場だった。俺達が向かう酒場は、昼は食堂としても営業しているのだ。


「おう、アルトにカインじゃねぇか」

「グランさん」


 俺達に声を掛けてきたのは傭兵ギルドの先輩、グランさんだ。どうやら彼も今日は休みを取っている様で、まだ昼だというのに酒を飲んでいる様だ。


「ギルドマスターから例の件は聞いたぞ。大変だったらしいじゃねぇか」

「どうしてそれを?」

「いやさ、ギルドマスターから頼まれちまってな。明日からお前らがオークキングと遭遇したって森に行く事になっててな。その時にお前らの事を聞いたんだよ」


 どうやらグランさんは、ギルドマスターが言っていた調査団に同行する様だ。


「大変ですね」

「まぁな。けど、その分報酬は弾んでもらったからな。この依頼が終わったら、お前らに奢ってやるよ」

「本当ですか!!」


 アルトが興奮したようにグランさんに問いかける。


「ああ、いいぜ。今回の依頼はある意味お前らのおかげでもあるからな。少しぐらいは還元してやるさ」


 グランさんは、俺達が来た当初から酒を飲んでいたが、さらに追加で酒を注文した。そして、その酒が来るまで俺達は雑談で盛り上がっていた。


「しっかし、おめえらオークキングに遭遇してよく生き残れたなぁ」

「あれは運が良かったとしか……」

「それでもだよ。それによく言うだろ、運も実力の内だって」

「それを言うならオークキングに出会った時点で、運が無いんじゃ……?」

「クハハ、それもそうだな!!」


 そして、追加で注文していた酒が来ると、その酒を片手に色々な話で盛り上がった。あそこの飯が美味しいだの、行きつけの娼館の新入りの子が可愛いだの、とある魔物の相手をしている時に死にかけただの、そんな役に立ちそうな話から下らない話まで、様々だ。

 結局グランさんは、俺達が酒場を出る時になっても酒を飲み続けていたのだった。




 今日は久しぶりの休日で楽しかった。今後どうするかは、明日アルトとしっかりと話し合うと決めていた。アルトもじっくり考えたいという事だったので、いつもは一部屋を二人で使っていた所を、今日は一人一室にする事にしたのだ。


「今日は本当に楽しかった……」


 屋台や酒場以外にも色々な場所を巡った。その先々で色々な人との出会いがあり、俺にも親しくしてくれる様な人達ばかりだった。

 この街に居て、初めて自分の居場所を手に入れた気がする。この街の人達は俺を受け入れてくれた。もし、自分の周りにいる誰かが助けを求めるなら、俺は喜んで手を伸ばせる。


「もし、アルトがこの街に残るって決めたら、俺はどうするべきなのか……」


 アルトにはこの街から出ようと言ったが、本当の事を言うなら俺もこの街からは出たくない。今日この街を回った事でその思いはさらに強くなっていた。だが、アルトを巻き込みたくないというのも間違いなく自分の本心だ。

 結局、その答えは出ず、アルトにその答えを聞いてから考えよう、という後回しを選んでしまった。

 だが、アルトからの答えを、まさか一生聞く機会が訪れないなど、この時の俺は想像もしていなかったのだった。


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