21 傭兵ギルドのマスターからの呼び出し
オークキングとの戦いか一月が経過していた。あれからも、俺とアルトは二人で傭兵として戦い続けている。
そんな折、依頼を終え帰還した俺達はギルドマスターから自分の執務室に来るようにと呼び出しを受けた。
「おう、悪いな。帰ってきたばっかりだってのに」
「いえ。それで俺達を呼んだってことは何か用があったんじゃ?」
「一応お前らには知らせておこうかと思っていてな」
「何をですか?」
「オークキングの件だ。お前らも当事者だっただろ?」
ギルドマスターのその言葉にアルトが首を縦に振っていた。俺にしてみればオークキングがもういないと知っている以上、あまり気にはならなかった。だが、アルトは災害級の魔物がどうなったのか知りたい様子だ。
一応、前にギルドマスターから教会が調査の為、聖騎士を派遣したという事は聞いているが、今回はその後の話だそうだ。
そして、ギルドマスターは話し出した。
あの後、聖騎士達が例の森に派遣され、調査を開始した。森にはかなりの魔力が渦巻いており、災害級の魔物が存在するという信憑性は十分だったそうだ。
森自体も魔力による汚染が進んでいる為、魔境となるのは時間の問題であるらしい。……個人的には森の汚染に関しては申し訳ないという気持ちしかないのだが、ああしなければ俺達はあそこで死んでいたのは間違いないので勘弁してほしい。
話を戻そう。森の中を現在も捜索しているそうだが、未だにオークキングはいまだ見つかっておらず、現在は森の奥深くまで捜索している様だ。
「……ってな感じだな」
「オークキングはまだ見つかっていないのか……」
アルトは不安がっていた。それは仕方がないだろう。もしこの街にオークキングの様な災害級の魔物が出現すれば、この街は壊滅してもおかしくは無い。
「傭兵ギルドにも教会から通達があってな。もしかしたら、既にオークキングは何処かに移動しているかもしれない。だから調査の為に傭兵ギルドからも人員を出してほしい、だとさ」
「はぁ、ギルドマスターはそれを俺達にその調査に向かわせるつもりですか」
「いや、流石に新人のお前らにそこまで押し付けるつもりはない。だけど、もしかしたらこの街にオークキングが現れる可能性があるから注意しておけよ、って話だ」
つまり、今回ギルドマスターに呼び出されたのはオークキング散策の経過報告と注意喚起だったわけだ。
「しっかし、はぁー、面倒な案件ばかり飛び込んできやがる」
「オークキング以外にも何かあったんですか?」
「ん? ああ、折角だしお前らにも話しておくか。この街に魔人が潜んでるって話を聞いた事があるだろ? それは事実でな。その魔人の潜伏先の捜索に進展があったんだよ。んで教会からの要請で傭兵ギルドから人を出したんだが、その後に、今回のオークキングの案件だ。こっちはその調整なんかでてんやわんやな訳だ」
ギルドマスター曰く、元々自分は傭兵だったからか、こういった事務的な作業はあまり得意ではないらしい。おかげで今回の事態に睡眠時間を減らして対応しているとぼやいていた。
「ま、オークキングや魔人なんかでこの街は荒れるとは思うが、この街にもかなりの聖騎士がいるから大丈夫だろう。とある筋からの情報によるとこの街の近くに神聖騎士様がいらっしゃるという話もあるから、この街に滞在してくだされば、この街も安泰間違い無しだろう」
「本当ですか!! もし、そうなればこの街は無事ですね!!」
アルトが興奮気味にそう言う。だが、俺は違った。神聖騎士、その言葉が出るだけで自分の胸がざわつくのを感じた。
「神聖騎士、か……」
俺は無意識のうちに呟いていた。心の中で俺は、くそっ、と言葉を吐き捨てる。俺は未練がましくも、未だにあの二人の事を忘れることが出来ないみたいだ。
「カイン、どうした? そんなブツブツと」
「な、何でもない。それよりギルドマスター、話が逸れてませんか?」
「……そういや、話が盛大に逸れちまってたな。まぁ、お前らへの注意喚起が今回呼んだ目的だから、話はこれで終わりだな」
「分かりました」
そして、俺達は二人揃ってギルドマスターの執務室から出て行ったのだった。
続いて俺達が向かったのが教会だった。俺はオークキングとの戦いで前に持っていた剣を壊してしまった。司祭に、貴重な物なので大事にしてください、と言われたのに、あの後すぐ壊してしまったせいで、何となく行きづらかった。
「行きたくない……」
「何言ってんだよ!! オークキングとの戦いで壊れたんだろ。仕方ないって。司祭様も分かってくれるって」
「それは分かってるんだけどさ……」
今迄は、アルトに頼んで俺の武器も教会に持って行ってもらっていたが、アルトが流石にそろそろケリをつけておくべきだと強く言うので渋々行く事になった。
「おや、アルトさん。そしてそちらはカインさん、でしたよね」
俺達が教会に着くと、前回来た時と同じくシスターが話を聞いてくれた。
「はい」
「今日もいつも通り剣に聖気を纏わせるのですか?」
「そうです」
「では、こちらに」
そして前回来た様にシスターに司祭の元まで案内してもらうのだった。




