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七罪剣と大罪人と呼ばれた少年の反逆譚  作者: YUU
第一章 【七罪の魔王】 カイン・エレイン編
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20 オークキングとの戦いの後始末

「はぁ、はぁ、はぁ……」


 オークキングとの激戦を終えた俺は、七罪剣の具現化を解き、オークキングとこの場にいるオーク達の死体を急いで道具袋に収納する。こんな物が周りにあったら、アルトに言い訳すら出来なくなってしまうからだ。

 その後、急いでアルトの元まで駆け寄った。


「アルト、おい、アルト!! 大丈夫か!?」

「……うっ」


 何度も声を掛けている内にアルトが目を覚ました。


「カイン、か? 俺は一体……。あっ、オーク、それにオークキングは!?」


 慌てたアルトは辺りを見渡すがそこにはオークキングどころかオークの一体も残っていない。


「カイン、あいつらはどうなった?」


 流石に、アルトに俺一人でオークキングを倒したとは言えない。そこでアルトが目を覚ますまで考えていた作り話をすることにした。

アルトが気を失ってからも俺はアルトを守りながらも何とか数体のオークを倒したところで、オークキングが一対一をする様に俺の前に立ち塞がった。オークキングには手も足も出ずあわやこれまで、と思った所でヤケになって放った一撃がオークキングにダメージを与え、それが大きなダメージだったのか、オークキングは配下のオークを連れて森の奥へと戻っていった、と言う旨の話をアルトにした。

 流石に苦しい作り話だっただろう。だが、あの短時間でそれ以上の完璧な作り話を思いつくのは不可能だった。


「そう、なのか……?」


 流石にアルトは半信半疑であった。だが、オークキングとの戦いで付いた無数の怪我、剣身が無くなり柄だけが残る俺の使っていた剣、未だこの場に存在する魔力、その三つのおかげで、俺の話を信じる事にした様だ。

 実際この場にオークキングがいない以上、アルトにしてみれば、俺の話を信じるしか無いのかもしれない。まして、アルトには俺がオークキングを単独で仕留められるなんて欠片も思ってもいないだろう。

 因みに、この場に存在する魔力はアルトが気を失ってからよりも増えている。俺が七罪剣を具現化した事、そしてその後のオークキングとの戦い、その二つが原因だろう。


「それにしても、その剣、貴重な物だったんだろう? 俺なんかの為に……」

「いや、貴重だったけどアルトの命には代えられないさ」

「そうか、分かった。ありがとな。代わりと言っちゃなんだが、新しく剣を買う時に全額俺が出すから」

「い、いや、そこまでしなくても……」


 戦いの中で壊れたのは事実だが、ある意味自分で壊したようなものだ。それをアルトに払ってもらうのは気が引けた。


「気にすんなよ。少ないかもしれないけど、命を助けてもらった礼だからさ」

「アルト……」

「そんな事よりも、だ。オークキングは死んだんじゃなくて、何処かに行っただけなんだろう? なら、村や教会に急いで知らせに行かないと」




 その後、ナル村に戻った俺はケビン村長に今回の事を報告する事にした。


「馬鹿な!? こんな所に災害級の魔物ですか!?」

「ええ、森の奥にはかなりの数のオークがオークキングに率いられていました。何時この村がオークの襲撃を受けてもしてもおかしくは無い。この村は放棄した方がいいでしょう」


 そして、その後に森で倒した数体のオークの死体を見せると、それが村長の決意を固めた様だ。この村の戦力ではオークキングどころかオーク数体ですら村が壊滅してもおかしくは無いからだ。

 その後は、この村を襲っていた魔物もオークキングとその配下のオークが原因だろう、森に出現したオークキングという怪物からゴブリン達は逃げていたのかもしれない、だから、ゴブリン達はオークから必死に逃れ新しい縄張りを確保する為に死兵とも呼べる状態だったのだろう。村長とそんな話をしていた。

 最後に村長にはその後にこの村を放棄する為の準備の間、そしてその後の移住の為の移動、その二つを終えるまでの間の村人たちの護衛を依頼されたので、俺はそれを快諾する事にした。

 アルトは災害級の魔物の事を一刻も早く教会に知らせるべきだ、と主張していた。だが、オークキングは俺が倒したからその心配は無い、などとはいえる筈も無く、この村の人達を見 捨てる事は出来ないと俺が強く主張した結果、アルトの方が折れてくれた。




 そして、村人全員が準備を終え、この村を出立する事になった日。


「本当に何から何までありがとうございます」

「いえ、ちゃんと報酬は貰っているのでこれも仕事の内です」

「それでも言わせてください。ありがとうございます」


 その後は、彼等をラダスの街へと送っていく。今回の事を教会に話せば、ちゃんとした補助を受けられるだろう。生まれ、育った村を捨てる事になった彼等の未来だが、少なくとも先は真っ暗という訳ではないのだ。




 その後、ラダスの街に戻った俺達は急いで傭兵ギルドに戻りギルドマスターにオークキングの事を報告した。

 ギルドマスターはやはり半信半疑だった。急に災害級の魔物が現れたと言っても信じる方が少ないだろう。俺達はケビン村長の時と同じようにオーク数体の死体を道具袋から取り出して見せる。


「こいつは、本当にお前たちが倒したのか」

「ええ」

「うーむ……」


 ギルドマスターは判断に困っていた。流石に急に災害級の魔物が出現したなど信じられる筈がないからだ。だが依頼で向かったはずの村から住民全員がこの街に逃げてきた旨を話すと、決意を固めた様だ。


「分かった。この事は傭兵ギルドを通じて教会に報告しておく」

「ありがとうございます」

「そこで、だ。このオークの死体を教会に提出したい。無論ちゃんとギルドからは金は出す。何なら多少は色も付けていい。だからこの死体を譲ってほしい」


 オークキングに率いられていたなら、このオーク達も普段いるオークとは色々な違いが出てくるという。

 この死体を解析して、ちゃんとした証拠が出ればオークキングが現れたという俺たちの証言に確証が持てるという。

 それに俺達は快諾した。元々売る予定であったためだ、特に問題は無い。

 その後は、オークキングからどうやって逃げ延びたかを聞かれたが、アルトが俺の作り話をギルドマスターに話出した。そして、ギルドマスターもアルトと同じく最初は半信半疑だったが、こうして生き延びている事から最終的には信じてくれたのだった。




 そして、数日後、ギルドマスターを通じて聞かされたのだが、俺達が提供したオークの死体からオークキングの痕跡が見つかったそうだ。そして先遣調査の為に教会は聖騎士の部隊を派遣する事を決定したらしい。

 因みに俺達は教会からはオークキング発見の功として、傭兵ギルドや教会から結構な額の報奨金を貰った。オークとの戦いで使用した消耗品を補充しても、まだ結構な額が手元に残ったので、俺たち二人揃って使用している武具防具を新調した。

 オークと戦っている時は大赤字とぼやいていたが、最終的にはかなりの黒字になった事をここに記載しておく。


 これで第一章前半部分終了です。ここからは少し時間が進みます。

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