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七罪剣と大罪人と呼ばれた少年の反逆譚  作者: YUU
第一章 【七罪の魔王】 カイン・エレイン編
15/128

15 依頼主の村へ

「聖武具……」

「おや、見た事があるのですね。これが私の剣の聖武具、所謂聖剣と言われている物です」


 はっきりと分かる、聖気の塊と言える聖武具。司祭が具現化させた聖剣を見ると、俺がこの教会に来て感じていた不快感が更に増すのを感じた。

 一刻も早くあの剣を消し去りたい、そんな衝動に駆られそうになる。『奴の眷族たるあれをこの世から抹消しろ』 そんな意味不明の言葉すら頭の中に浮かんですらきていた。


「くぅ!!」


 突如胸の辺りに痛みが走った。思わず胸を押さえつける。


「おい、カイン、どうした!?」

「もしかしたら、彼は私の聖武具の放つ聖気にあてられたのかもしれませんね。彼には聖気を強く感じることが出来るようですし」


 そんな言葉が聞こえてくるが、その言葉に返事を返すどころではない。だが、胸の痛みも少しすると治まってくる。そして胸の痛みが引くのと時同じくして頭の中に浮かんでいた言葉も消えていた。


「だ、大丈夫です。もう治まりました」

「……本当に大丈夫なのか?」

「心配はいりません。聖気にあてられただけの様ですし、いずれ慣れてくるでしょう」


 実際は、俺の中にある魔力が今迄にない拒絶反応を起こしたのが原因だろうが、勘違いしてくれて助かった。そんな俺の様子に司祭は気が付かず、次の作業に入っていた。




「さて、始めましょうか」


 司祭はそう言うと机の上に置かれた俺達の剣に、自身の聖武具たる、聖剣の切っ先を向けた。


「さあ、行きますよ」


 そして、聖剣の切っ先から聖気が流れ出し、机の上の剣に流れ込んだ。そして、その聖気は剣を覆っていく。そして、その聖気は完全に俺達の持っていた剣に馴染んでいた。


「これで終了ですね」

「「ありがとうございます」」


 司祭に俺達は合わせたかのように礼を言った。


「いえいえ」


 そして、机の剣を手に取り、仕舞った。そして、ここでの用事を終えた俺達は、最後に今回のお布施をシスターに渡し、教会から去るのだった。




「さて、カイン、行くとするか」

「ああ」

 この街での準備を終えた俺達は今回の依頼主の村に向かう事にした。この街からは依頼主の村には、定期便が出ていない為、馬車を借りるか徒歩で行くしかない。

 だが、馬車を借りれば今回の報酬では赤字となるだろう。必然馬車と言う選択肢は無くなり徒歩一択となった。目的地の村までは、ここから徒歩でも五日以上はかかるだろう。




 街を出て、三日目。この時俺達は思わぬ強敵に出くわしていた。


「はぁ!? こんなところにこの数のゴブリンだと!?」


 思わずアルトがぼやいていた。何故なら、この場には五十を超える勢いで、ゴブリンがいるのだから。しかも今現在も、森から無数に沸いて来るかの様に増え続けていた。


「くそっ」


 ゴブリン一体一体は物の数ではない。だが、やはりこれだけの数に囲まれたとなれば、幾らゴブリンが相手でも俺たち二人では楽に勝てるとは言い難い。


「厄介すぎるだろ!!」


 しかもこのゴブリン、何故か仲間が次々と殺されているというのに俺達の方に近づいてくる連中ばかりなのだ。まるで、俺達への攻撃と言うよりも、森の奥から逃げ出しているという表現の方が正しいかもしれない。


「はぁ、はぁ、これで……」

「アルト!!」


 精神的な緩みが出たのだろう。アルトの背後からゴブリンが襲ってきていた。それにアルトは気づいた様子は無い。俺はアルトの頭の横に突きを入れ、ゴブリンの頭部に剣を刺す。


「グギャァ!!」

「アルト、大丈夫か!?」

「す、すまねぇ、助かった」

「その事は後だ!! 今はここを凌がないと」

「わ、分かった」


 そうして、まるでゴブリンの波とも表現できそうな程の襲撃を何とか凌いでいくのだった。




「はぁ、はぁ、はぁ。お、終わったのか?」

「みたいだ……」


 俺達は、互いに背を合わせて座り込んでいた。ゴブリンの襲撃が終わったのは結局日が落ちる少し前だった。


「さっきは助かった、ありがとな」


 アルトの言葉に無言で首肯する。俺達は今回倒したゴブリン達の死体を道具袋に収納していく。


「やっぱ、カインのその道具袋って便利だよな」


 そんな言葉をアルトは言いながらもゴブリンの回収の手を止めることは無い。ゴブリン自体は雑魚の魔物の代名詞だが、これだけの数がいればある程度纏まった金額にはなりそうだ。


「それにしても、お前は凄いよ。これだけの襲撃が有ったってのに、息も切らしてないんだからさ」

「っ、そ、そうか?」

「ああ、あの時お前に目を付けた俺の直感は間違いなかったな」


 そう言ってアルトは笑い出した。


「って、あの時俺に声を掛けたのはそんな理由だったのか?」

「ああ、お前を一目見た時、こいつとは絶対組んだ方がいい、そう思ったんだ」

 その後、俺達は野宿の準備を始め、寝るまでアルトと話し込んでいた。



 そして、ゴブリンの大群の襲撃から数日後、遂に依頼主の村に到着したのだった。


そろそろ第一章の物語も大きく動き出していきます。

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