126 模擬戦 その1
こちらにも力を入れて行くといった途端に更新が遅れて申し訳ありませんでした。リハビリも兼ねてなんとか時間を作り今話を書き上げました。
更新は未だ不定期になると思いますが、ちゃんと完結はお約束いたしますので、今後も応援よろしくお願いします。(新作が現在毎日更新なので、本当に時間が……)
アリシアが帰って来てから数日後、俺とアリシアとリリアの三人はフローラと戦ったあの闘技場の様な場所をまた訪れていた。
今日の目的は三人での模擬戦だ。この場所はかなり隠匿性が高く、俺達が全力を振るってもその気配が外に漏れ出る事は無い。俺達三人が模擬戦をするのに、これ以上適した場所はこの王都には無かった。
そして、俺達はほぼ同時に七罪剣と七天神具を具現化し、前哨戦代わりと言わんばかりに互いの魔力と聖気をぶつけ合う。
「お兄様、行きますっ!!」
「カイン様、お願いいたします!!」
「ああっ、二人共、来いっ!!」
何故、俺達が模擬戦をする事になったのか。それは、今後に備えての事だった。アリシアから聞いた、王都にフローラが残した遺産を手に入れようと魔人達が侵入してくるかもしれないという話を聞いた時、俺はこの模擬戦をしようと思い付いた。神代の魔人はまだ数多く世界の裏側に潜んでいる。そんな連中が大挙して押し寄せてくるとなれば、いくら神聖騎士である彼女達であっても苦戦は必至と言える。
今日の模擬戦はそんな連中を相手取る為の訓練という訳だ。俺ならば、彼女達の相手には最も適しているといえるだろう。
「結界よっ!!」
最初にリリアが『節制の封欲結界』をこの場一面に展開する。
流石に【強欲】を再び封じられて、あのベルゼブブが再び出て来られては堪らない。なので、事前に話し合いリリアの結界は魔力の働きを阻害する方だけを展開している。
「くっ!!」
だが、相変わらず魔力の働きを阻害されるだけでも体に小さくない負担が掛かってくる。ある意味では、【強欲】を封じられるよりもこちらの方が厄介かもしれない。
そして、リリアは結界を展開した直後、神双刃を構えて俺の方へと向かって来た。
「はぁっ!!」
「ちいっ!!」
――――キンキンキンキンキンッ!!
リリアの振う神双刃と、俺の持つ七罪剣がぶつかり合い、そんな音がこの場全体に鳴り響いた。だが、リリアの結界による俺の負担は小さくない。更に、彼女の振う双剣の回転率、その二つが合わさり、徐々に俺は劣勢を強いられていく。
「くっ、はぁっ!!」
この状況を打破する為、俺は七罪剣に一気に魔力を込めて横薙ぎ振った。その魔力は衝撃波となり、リリアを一瞬だけ怯ませる。
その隙を利用し、俺は後方に飛び退いた。だが、彼女達はそれでは終わらなかった。
「今です、アリシアさんっ!!」
「はいっ!!」
「っ!!」
しまった、リリアの事に気を取られアリシアの事を意識の内から外してしまっていた。しかも、声の位置からして明らかに背後を取られている。恐らく、リリアが注意を引いている内にアリシアが後方から不意打ちするのが二人の作戦だったのだろう。
「お兄様、貰いましたよっ」
「っ、ならっ!!」
ここまで近づかれていては、安易な手を打っても焼け石に水だ。そう判断した俺は自身の影から漆黒の茨を数本具現化させた。それは宙に浮かび上がり、俺の背後に近づくアリシアを牽制するように放たれた。
「なっ、速いっ!?」
この一瞬であの漆黒の茨が具現化した事にアリシアが驚いた様子を見せた。俺の影から現れた漆黒の茨による牽制にアリシアの動きがほんの少しだけ止まる。それを見た俺は体を無理矢理動かし、その一瞬を利用して彼女からも遠のいた。当のアリシアは、自分に向かってくる茨達を聖気で打ち消していた。
「今のは一体……?」
「……上手くいったか」
そう、先程俺が使ったのはあの時ベルゼブブが使っていた『喰らう影』を人の影に潜ませる技だ。
流石に今の俺ではベルゼブブの様に相手の影に『喰らう影』を潜ませる事は出来ない。だが、自分の影に潜ませておく程度の事なら今の俺でも可能だった。また、予め自分の影に潜ませておく事にも大きな利点がある。その利点、それは今迄に比べると具現化までのスパンが短いのだ。
普通の『喰らう影』は、魔力を消費→不定形の影を作る→それを望む形へと変更する、という手順がある。だが、予め自分の影に潜ませておくことで、いざという時に、最初の二つの工程を省くことが出来るのだ。
この技術を習得したおかげで、『喰らう影』の即応性はかなり上昇したと言ってもいい。おかげでアリシアの不意の攻撃への対処が出来る様になったという訳だ。いずれはあの時の様に相手の影に潜ませることを目標としている。
さて、ここまで体を動かしたことでいい具合の準備運動となっただろう。
「二人共、そろそろ準備運動は十分か?」
「ええ、ここからはお互い手加減無しです」
「カイン様、これから本気で行かせていただきます」
「ああ、来いっ!!」
今迄の戦いはあくまで準備運動に近い。俺も、彼女達も今は本気には程遠い。ここから、お互いに全力を出しての戦いが始まる。
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