125 お互いの話
本当に、大変長らくお待たせいたしました。活動報告にも記した通り、新作に時間を持っていかれていました。
今後は何とかこちらの方にも力を入れていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
「お兄様、ただいま戻りました」
「ああ、おかえり」
俺達は互いに挨拶を交わす。だが、アリシアは俺の隣にいるリリアを見た直後、疑問を投げかけてきた。
「……お兄様、一つお聞きしたいのですがどうしてリリアさんがここにいるのですか?」
やはり、そこは間違いなく気になる所だろう。アリシアの表情には疑問符が浮かんでいる。だが、その話をすれば長くなる。その為、一度屋敷の中に入ってから話した方が良いだろう。
「それは、後で説明する。とりあえず中へ入ろう」
「……分かりました」
リリアの事を訝し気に見ながらも、俺達は三人揃って屋敷の中へと入っていくのだった。
屋敷の談話室内で俺達は三人揃って向かい合う様に座っていた。アリシアは早速と言わんばかりに、リリアの事を聞き出そうとしてくる。
「それで、どうしてリリアさんが一緒にいるのですか? 今度こそお答えいただけるのですよね?」
「それは……」
俺はアリシアに今迄の経緯を簡単にだが説明する事にした。
リリアが俺に会いにこの屋敷に来た事、そしてその時に俺が七罪武具を所有していると知られた事、その後に俺達が戦った事等々だ。
それを聞いたアリシアは呆れたような表情を浮かべ一度溜め息をついた。
「……大まかな事は分かりました」
「……そうか」
「でも、大きな怪我がなくて何よりです」
「本当に、そうですよね……」
正直、俺とリリアが戦って、手足が無くなるといった大きな欠損が無い事が奇跡だろう。俺達の力を考えればそうなっていても不思議ではないからだ。
いや、あのベルゼブブという存在の介入がなければ、どちらかの命が無くなっていても不思議では無かっただろう。
だが、これでアリシアが去ってからの王都での出来事は殆ど語り終えた。
そして、次はアリシアの番だ
「それで、アリシアの方はどうだったんだ?」
「ええ、それはですね……」
長くなったので省略すると、どうやら教会ではどちらかというと今後についての話し合いがメインだった様だ。今回の首謀者であるフローラに関する事は既にある程度、報告済みの為、今後について事件解決の最大の功労者であるアリシアの意見を聞きたいという側面の方が強かった様だ。
神代の魔人、しかも七罪武具を取り込んだ新たな魔王が現れたとなれば、闇に潜む魔人達の動きが今までにない程、活発になるかもしれない。
更にはこれほどの規模の事件だ。奈落の件の直後といってもいい期間に、今回の件が起きた。今後さらに大きい展開になると考えてしまうのも不自然ではない。
また、地震の組織の勢力拡大の為に、フローラの残した遺産や残党を取り込もうと他の魔人達の組織の構成員が王都内に侵入してくるかもしれない。
その為、リリアはこの王都に暫く留まってほしいとの要請があったらしい。そして、アリシアと共にこの王都の守護に当たってほしいとの事だ。
「という訳で、リリアさんにも暫くこの王都に滞在してもらう事になりそうです」
「分かりました」
アリシアの言葉にリリアは頷いていた。
「最初、この話を聞いた時は教会本部に直談判してでも、リリアさんをこの王都から立ち去らせるつもりだったのですが、リリアさんがお兄様と和解しているなら話は別ですね」
そうだ、リリアと和解していると知らないアリシアは、彼女の事を早く王都から立ち去らせたかったはずだ。
だが、和解している今ならリリアと共に王都にいても問題は無いだろう。
「それでなのですが、もしかしたら今後、この王都は更に荒れるかもしれません。お兄様もこの王都の守護に力をお貸しくださいませんか?」
「……ああ、分かった」
ガイウスやフローラの記憶から、闇に潜む魔人組織はまだ数知れず残っている事を俺は知っている。そんな連中がこの王都に来て暴れられるのは面倒だ。
その為、俺はアリシアの話を了承する事にしたのだ。そして、俺はアリシアとリリアの推薦の元、外部協力者という立ち位置を与えられるそうだ。
神聖騎士二人の推薦があれば協会も拒否は出来ないだろう。
そして、全ての話がまとまって、談話室から退出しようとした、その時だった。
「あ、私はリリアさんと二人で話したいことがあるので、お兄様は先に部屋に戻ってもらっても構わないですか?」
「分かった」
そう言うアリシアの表情はかなり真剣な表情なので、話したい事とは重要な事なのだろう。俺はアリシアの言葉に従う様に談話室から退出して自分の部屋に戻るのだった。
「それで、アリシアさん。用とは一体なんなのでしょうか?」
お兄様が談話室から退出した後、リリアさんがそう問いかけてきました。私はその言葉にほんの少しだけ目を伏せ、一度深呼吸をして言葉を紡ぎ始めました。
「私はお兄様の事を一人の異性としてお慕いしています。」
「あ、アリシアさん? 一体何を……?」
リリアさんは突然何を言い出すのかと困惑しているようです。ですが、ここだけははっきりとしておかなくてはなりません。
「リリアさんはどうなのですか。お兄様の事が異性として好きなのですよね?」
私は封印殿で戦ったあの時、お兄様の記憶が私の中に流れ込んできました。 その為、お兄様の初恋の相手がリリアさんだという事を知っています。そして、リリアさんがお兄様に向ける目は間違いなく恋する乙女の目です。
「わ、私も同じです!! 私もカイン様をお慕いしています!!」
「……でしたら、ここで約束しませんか?」
「約束?」
「ええ、お兄様がどちらを選んだとしても、選ばれた相手の事を祝福する。そう、約束しませんか?」
「……分かりました」
そうして、私達二人は握手をし、約束を結びました。お互いにお兄様がどちらを選んでも恨みっこ無し、選ばれた相手をちゃんと祝福する。そう取り決めたのです。
「ですがもし、お兄様が私達の両方を選んでくれたなら……」
「ええ、その時は……」
もし、お兄様が私達の両方を選んでくれたならそれが一番幸せです。その選択には二人とも忌避感はありませんでした。貴族には正妻以外にも複数愛人を持つのも当たり前の話なのですから。もしそうなれば、互いにお兄様の事は独占せずにいよう、という共通認識も私達の中でありました。
ですが、お兄様に私達二人の両方という選択を強制できるはずもありません。私達二人のどちらを選ぶか、その選択はお兄様にお任せしたいと思っていました。
ですが、その時の私は何故かお兄様が私達二人共を幸せにしてくれるような、そんな不思議な予感があったのでした。
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後、前書きにもある通り新連載を始めました。
『婚約破棄を告げられ、処刑されかけた悪役令嬢は復讐令嬢になりました ~古代魔術で裏切り者達を断罪する復讐劇~』
タイトルから分かる通り復讐物です。是非、こちらの方もご覧ください。




