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七罪剣と大罪人と呼ばれた少年の反逆譚  作者: YUU
第四章 【節制の騎士】リリア・フォン・シルフィール編
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122 第四章エピローグ

これにて第四章終了となります。いつも通り今章の所感も活動報告に上げております。今回は同時に上げているので、今話を読み終わったに直後に見ていただけるようにしています。

「うっ……」


 ふと目を覚ますと、フローラと戦った闘技場の様な場所の天井が目に入ってきた。それと同時に今迄、何があったのかを俺は思い出した。


「俺は、リリアと……」


 先程までリリアと戦っていた事、そしてリリアの【節制】の力で七罪剣の【強欲】が封印され、その影響で俺の中にあった他の七罪武具が分離してしまった事、そして謎の存在に体を乗っ取られた事を思い出したのだ。

 そんな中、俺の頭の中に激しい痛みが走った。


「なに、がっ……」


 その瞬間、俺の頭の中に意識を失ってから、目を覚ますまでの記憶が想起した。

 俺の体を乗っ取った存在が悪魔王ベルゼブブを名乗った事、俺の体を乗っ取った悪魔王ベルゼブブがリリアと戦った事、そして彼女によってその存在が封印された事、その全てが一気に頭の中に記憶として浮かんできたのだ。


「これ、は……。俺が意識を失ってからの記憶か……」


 そして、その後遺症なのか、俺の魔力は殆ど無くなっていた。悪魔王ベルゼブブが俺の魔力を殆ど使っていた事、その後にリリアの【節制】の一撃が直撃した事が原因だと推測できた。

 また外傷は無いが、体には妙な怠さが残っている。魔力で変質した体で、大量の聖気を受ければこうなるのも必然だろう。


 俺の後方には、リリアの【節制】の力によって俺から分離した七罪武具が地面に突き刺さっている。流石にこれを放置しておくわけにはいかない。

 残ったなけなしの魔力で七罪剣を具現化し、分離した【色欲】の七罪武具、そして双罪槍斧を取り込んでいく。その結果、魔力は一気に回復したが、体に残った怠さが回復するわけではない。暫くは、動かない方が良いだろう。


「んっ……」


 そんな中、意識を失い倒れているリリアの方から呻き声が聞こえてきたのだ。

 それが聞こえた俺は慌てて彼女の元へと駆け寄り、抱きかかえた。その直後、リリアは意識を取り戻して目を開く。


「えっ……!?」


 しかし、彼女は俺の姿を見るなり、慌てて身体を起こして勢い良く俺を押し飛ばした。

 だが、意識を取り戻したばかりで、あまり力が入らなかったのか、それによって彼女を抱きかかえるという体勢が変わる事が無かった。


「どうして、どうしてなのですか……」

「リリア……」

「どうして貴方が七罪武具を持っているのですか。どうして!!」


 リリアは瞳から一筋の涙を流しながらそう叫んでいる。しかし先程までとは違い、今はお互い戦う力も残っていない。今なら彼女も俺の話を聞いてくれるかもしれない。


「……リリア、俺の話を聞いてほしい」

「嫌、嫌です。聞きたくありません!!」


 そう言って駄々をこねる子供のように耳を塞ぎ、首を左右に振っていた。


「俺が何故七罪武具を持っているのか、それにはちゃんとした理由があるんだ。だから聞いてほしい」


 俺が真剣な表情でそう言うと、リリアは渋々といった様子で耳を塞ぐのを止めて、俺と向かい合う様に座る。そして、俺の話に耳を傾け始めた。


 そして、俺はこの七罪武具を手に入れた経緯を話し始めた。


 奴隷として生きていた時、偶然奈落の中に入り込んでしまった。そして、必死の思いで奈落の最奥に到達した時に、今俺が持つ七罪剣を見つけた。そして、その時に出会った魂だけになった存在に奈落を脱出する唯一の方法として教えられたのが、この力を取り込む事だった。


 そう言った経緯を俺はできるだけ分かりやすくリリアへと説明した。


「そう、だったのですか……」


 リリアはそう言いながら何処か納得したような表情を浮かべる。しかし、納得はしても流石に俺の事を信用してはいない様だった。


「……カイン様がその力を手に入れた経緯は分かりました。ですが……」

「やっぱり、今の俺の事は信用できない?」

「いえ、そういう訳では……」

「さっきも言った通りこの力を手に入れたのは偶然、生き伸びる為に手に入れざるを得なかったものだ。この力を使って世界に徒成す様な事は考えていないよ」


 俺はそう言うが、やはりリリアは俺を完全には信用していない様子だった。やはり神聖騎士として今の俺の話を簡単に信じるわけにはいかないのだろう。そこで俺はある提案をする事にした。


「なら、俺の事を見張ってくれないか。もし、俺が世界に徒成す様な事をすればその時は俺を討てばいい」


 アリシアももし俺が世界に徒成す様なら討たなくてはならないかもしれないと言っていた。ならリリアもそうすればいい。俺を近くで見張り、もしそういう事態になった時に討てばいい。


「カイン様……、分かりました。そうさせていただきます。ですが、もし世界に徒成す様なことがあれば……」

「ああ、何時でも俺を討ってくれて構わない」


 そして、提案を受け入れたリリアと俺は一時的な和解をする。これが続いていくかは今後次第だろう。勿論、俺もこの力を使って好き勝手に暴れたいなどという欲も持ち合わせていない。

 ただ、大事な人達と普通に暮らしていける事が今の俺の望みなのだから。




 そして、俺達は先程の戦いの後遺症と思われる怠さからの回復を待ちながら、あの時に屋敷で話せなかった事を語り合って行く。

 その中には追放されてから奴隷として過ごした時の事、奈落でどうやって生き延びていたかという事、ラダスでの出来事等だ。

 

 特にラダスに現れた神代の魔人ガイウスを俺が既に倒していたと知るとリリアは驚いていた。神代の魔人が現れたという事は既に教会にも報告があった様だが、流石に既に倒されているとは流石に知らなかった様だ。


 そんな中、話は何時の間にか、先程の戦いの最中で俺の意識を乗っ取った存在、悪魔王ベルゼブブの話へと移り変わっていた。


「それにしても、あの悪魔王ベルゼブブは結局の所、一体何だったんだ……?」

「分かりません……。もしかしたら教会の伝承に何か残っているかもしれません。地上に戻ったら教会の書庫で調べてみようと思います」


 あの存在は消えたわけではない。リリアの話によるとあくまで封印しただけとの事だ。弱まってはいるが、今も俺の中にあの存在はいる。そんな確信を俺は持っていた。




 そして、それから時間も経過し、体にあった怠さも消えた事で、俺達は地上に戻る為に移動を開始する事にした。ここからでは地上の様子は分からないが、夜が明けているかもしれない。

 リリアに護衛がいないという事は恐らくこっそりと抜け出してきたのだろう。もし夜明けを迎えていた場合、リリアがいないという事で教会では大騒ぎになっているかもしれない。出来るだけ早く戻った方が良いだろう。


「では、そろそろ戻りましょうか」

「そうだな」


 俺はリリアの話に頷いた。するとリリアは俺の方に左手を差し出してくる。


「えっと、この手は……?」

「折角二人きりなのです。手を繋いで帰りませんか?」

「……分かった」


 そして、俺達は手を繋ぎながらこの場所を後にする。

 もし、何かが少しでも違えばこんな結末を迎える事無く、どちらかがこの場所で死んでいてもおかしくは無かった。

 この結末を迎えた事に心の何処かで感謝しながら俺達は地上へと戻るのだった。

もしこの作品を面白いと思って頂けるなら、ブックマーク登録、ポイント評価をして頂ければ幸いです。一人10ptまで入れることができます。今後の更新への大きな励みになります。

特に、今の章が終わったから記念に、という方がいれば是非ともよろしくお願いします。

評価は最新話の↓部分からできるでこの機会に是非!!





第五章に関してなのですが、活動報告に同時に上げている四章の所感に開始時期の方を書いておりますのでもしよろしければそちらもご覧ください。

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