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七罪剣と大罪人と呼ばれた少年の反逆譚  作者: YUU
第四章 【節制の騎士】リリア・フォン・シルフィール編
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121 『二対一刃』と『暴食の剣』

遅れてしまい申し訳ありませんでした。その代わりに文字数は多めとなっております。

 ベルゼブブが後方に飛び退くと何故か焦ったような表情を浮かべました。

 しかし、私はその様な事を気にしている場合ではありません。そんな事よりも、もっと別に驚くべきことがあったからです。


「この結界内であれ程の動き、そしてあれ程の魔力を使うことが出来るなんて……」


 私の張った結界内では魔力、あるいはそれを使った力は抑制、阻害されるはずです。ですが、ベルゼブブからはその様な兆候は余り見られなかったのです。


『当然であろう? 我は貴様らとは違う存在だ。それに本来の力が失われ劣化したその神具で我を止められる筈がなかろう』

「……本来の力?」

『そう、その神具から奴らの意思を感じないという事はそういう事だろう?』


 ベルゼブブの告げる言葉は私には要領を得ません。ですが何か、とてつもない事を語っているのだという不思議な確証が私の中にはありました。


『しかし、思った以上に魔力の消耗が激しい。多少とはいえ、この結界の影響もある様だ。更には、我が現界しているだけでも魔力を消耗してしまう様だな』


 そして、ベルゼブブは口元を大きく歪めたのが見えました。それを見た瞬間、私の中に嫌な予感が走りました。


『時間も惜しい。一気に決めさせてもらおう!!』


 そう高らかに宣言すると、ベルゼブブは突如自分の体を魔力で覆っていきます。その魔力は漆黒の影となり彼の体を包み込んで行きます。


 そしてその影が消えた時、彼の体は大きな変貌を遂げていたのです。


「なっ、その姿は一体……」


 彼の体は先程から大きく変貌していました。肌の色は青く変わり、頭からは二本の角が生え、背中には一対の漆黒の翼が広がっていました。

 その姿はまるで……。


「悪魔……」


 教会に伝わる伝承に度々登場する悪魔の姿に酷似していたのです。


『悪魔、悪魔、か。我をその程度の存在だと侮ってくれるな。言ったであろう? 我は悪魔王、七罪を司る悪魔達の王であると。この姿こそ、本来の我の姿。【暴食】を司る悪魔王の本来の姿である』


 その瞬間、ベルゼブブから放たれる圧が一気に上昇しました。私は思わずその圧に気圧されそうになります。ですが、何とか踏みとどまる事には成功しました。


『さぁ、これが正真正銘最後の戦いだ』


 その言葉に私は改めて剣を構え直します。そして、ここにベルゼブブとの最後の戦いが始まったのです。




 私とベルゼブブとの最後の戦い。

 しかし、私の聖気も底が見え始めていました。また、ベルゼブブから感じる魔力も当初に比べると格段に減っているのを感じます。必然、短期決戦となる事が想定できました。


 そして、私とベルゼブブは至近距離で剣を交えます。


『この姿になった我にこの程度の結界など効かぬ!!』

「くっ!!」


 しかし、私の張った結界がまるで意味を成していませんでした。動きも制限されている様子もありません。

 しかし運が良い事に【強欲】を封印している方の力はまだ効果を成している事を感じます。そこだけは私にとって幸運だったでしょう。もし【強欲】の力も使われていたら間違いなく、今この瞬間にも敗北していたでしょう。


「くっ!!」


 更には、あの姿になった事で身体能力も向上している様です。次第に追い詰められていった私は後方に飛び退きましたが、それを予想していたのかベルゼブブは次なる手を素早く打ってきました。


『影なる茨よ!!』

「っ!?」


 その直後、ふと私の後方から魔力の気配を感じました。振り向くと自分の影から数本の茨が、現れていたのが見えたのです。

 その茨に気が付いた私は、すぐに飛び退いた事で、自らの影から放たれた数本の茨を躱す事は出来ました。


『弾けろっ!!』


 ですが、ベルゼブブがそう叫んだ瞬間、茨は弾け飛び、無数の大きな針の様な物となり、その全てが私の元へと一直線に向かってきます。


「なっ!?」


 そして、私は自分に向かってくる針全てを回避、或いは弾き飛ばそうとしました。ですが、大きな針とはいえ、あれだけの数の針を全て弾き飛ばす事は流石に不可能です。


「ぐっ……」


 剣を何度も振るいましたが、弾き飛ばせなかった針の一部が私の体の至る所へと突き刺さっていたのです。そして、その針は私の体に突き刺さったその瞬間に消え去っていました。


「あの茨は……、私の影から……?」

『その通りだ。『喰らう影』はその名の通りの影。あの時、お前の影の中に『喰らう影』の一部を潜ませておいたのだ』


 あの時というのは、ベルゼブブがあの影獣を放った時でしょう、あの時に増殖した影獣の一部を私の影の中へと潜ませていたのだと思います。


 そして、全身が傷だらけになった私の様子を満足げに眺めた後、ベルゼブブは高らかに宣言します。


『さぁ、時間も惜しい。これで終わりだ!!』


 そう言うとベルゼブブは自分の持つ剣に膨大な魔力を込めていきます。それを感じ取った私は覚悟を決める事にしました。


 あれに対抗する為には、自分もとっておきを使うしかない。そう考えた私は意を決して、神双刃を重ね合わせるようにして両手で握りました。


「『二対一刃』!!」


 私がそう叫んだその瞬間、神双刃は銀色の光を放ちながら融合を始めます。そしてその光が収まると、私の手には神双刃が融合したような巨大な一振りの両刃の剣が握られていました。

 これが私の奥の手。双刃に宿る【節制】の力を一つの剣として集約させる『二対一刃』。

 今の私ではこれを維持するだけでも相当な集中力が必要になります。そもそも、この技を使うのは今回で二度目です。一度だけ練習で使ったことがありましたが、それ以降は使う機会も無かった為、未だこの技は不慣れです。しかし、それでもそんな事を言っている余裕は今の私にはありません。


 そして、私達は互いに示し合わせたかのように同時に剣を振るいました。


「『節制封抑剣』!!」

『我が敵を喰らえ、『暴食の剣』よ!!』


 互いに自分の剣に聖気と魔力を籠め、放たれた剣戟はぶつかり合い、鍔迫り合いの様相を呈していきます。

 私はここで決着を着けると決め、自分の持てるほぼ全ての聖気をこの一撃へと籠めました。


「はああああああああああぁぁぁぁぁ!!」

『ぐうううううううううううぅぅぅぅ!!』


 ベルゼブブの振った剣に籠められた魔力は私の聖気を喰らい、私の振った剣に籠められた聖気はベルゼブブの意思を魔力ごと封印しようとしています。そんな、互いが互いの力を侵食するかのような攻防が続きました。


 そして、そんな戦いが永劫に続くかと思ったその瞬間、遂にその時が訪れたのです。


『ばかなっ!?』


 その瞬間、ベルゼブブの魔力が尽き、私の持つ剣はベルゼブブの持っている剣を両断していました。そのままの勢いでベルゼブブ本体へと剣を振るいます。


「これで、終わりです!!」


 私は最後の力を振り絞りそう叫びました。その瞬間、一本に集約した神双刃から聖気が放たれベルゼブブの体を包み込んでいきます。

 そして、その聖気がベルゼブブの意思を封じようとしているのが分かりました。


『ぐぐぐぐっ!! やっと意思だけとはいえ現界することが出来たのだ!! こんな所で再び封印されてたまるか!!』


 ベルゼブブはそう叫び、最後の抵抗を試みようとしていました。ですが、魔力が尽きた以上、もう抵抗する事もままならないでしょう。

 彼の体を包んでいる聖気は段々とベルゼブブの意思を封印しています。そして、その封印に最後の一押しをする為に、私は自分に残された全て、それこそ自らの魂までをも捧げかねない勢いで、全てをこの一撃へと籠めました。


「消えなさい、悪魔王ベルゼブブ!!」

『止めろっ、止めろっ!! ぐああああああああああっっっっっっっっ!!!!!!』


 その言葉を最後に彼の体を支配していた悪魔王ベルゼブブの意思が封印されたのを感じたのでした。




 そして、ベルゼブブの意思の意思は封印されましたが、私の限界ももうすぐそこに近づいていました。当然です、自分の残っていた聖気を全てあの最後の一撃に籠めたのです。

 一つになった【節制】の神双刃は二つに分かれ、次の瞬間には銀の粒子となり消え去っていきました。私の聖気が尽きた事で、その形を維持できなくなったのでしょう。


 また、悪魔王ベルゼブブの意思が消え去った事で、彼の体は頭に生えた二本の角の様なものも、あの背中から生えた漆黒の翼も消え去り、既に元に戻っていました。地面に倒れ込み意識を失っている様です。先程まであった筈の外傷も綺麗に消え去っていました。あの悪魔化の影響でしょうか?

 しかし、そんな事を考えている余裕は今の私には既にありませんでした。


(もう限界の様、ですね……)


 あれだけの聖気を一気に消耗したのです。当然その反動が来ることは承知の上です。今の状態では何時意識を失ってもおかしくないでしょう。

 そして、私は自分に残った最後の力を使って彼の元まで歩みだしました。自分でも何をしているのか、分かりません。聖気が完全に尽きた今では気を失っているとはいえ彼に止めを刺すのも難しいでしょう。

 ですが、気が付けば私の足は彼の元へと向かっていました。しかし、その途中で突如片足に力が入らなくなり、そのまま私は地面に倒れ込んでしまいまったのです。


(あっ……)


 それが最後の引き金だったのでしょう。その瞬間、私は意識を失うのでした。

前回の更新日8/2でこの作品が連載半年を突破しました!! これも皆様の応援のおかげです!!

そのお礼を活動報告に上げているのでぜひご覧ください!!

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