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七罪剣と大罪人と呼ばれた少年の反逆譚  作者: YUU
第四章 【節制の騎士】リリア・フォン・シルフィール編
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119 亡霊の声

時間が無いので、文字数は何時もよりちょっと少なめです。もしかしたら、後日改稿するかもしれません。

(何故かというと仕事があるので、今投稿しないと明日になるからなのです)


最近、最新話を投稿するだけでブクマが減りますが、そんな事にはめげずに更新を頑張ります。

 【強欲】の力が封じられたことで、俺の中にある他の七罪武具も分離してしまった。先程の状況から一転、俺は危機的状況に追いつめられたことを自覚していた。

 この結界内では、動くだけでも普段の数倍の力を使うだろう。

 それでも、ここで無防備に立っている訳にはいかない。俺は改めて剣を構え直す。

 俺のこの状況はリリアにとってみれば間違いなく好機だ。彼女も双刃を構え直し、俺の方へと向かってくる。その直後、俺達は再び剣を交えた。

 そして、リリアと再び剣を交えた直後、俺の頭の中に突如として声が響き渡った。


『何をしている!! 亡骸の器、そしてそれを宿した人間程度に苦戦するなどっ!!』

(……この声、はっ!!)


 頭に突如響いてきたこの声に俺は聞き覚えがあった。封印殿でアリシアと戦った後、彼女に止めを刺させようとした、俺を突き動かしていたあの声と同じものだ。

 しかも、アリシアと戦った後の幻聴の様な声ではない。あの時よりもはっきりと声が聞こえたのだ。

 この声は、再び俺に衝動を与えようとしてくる。神聖騎士であるリリアへの敵意と殺意といったもの、或いは彼女を殺さなければならないという強烈な使命感、強迫観念を植え付けようとしてくる。


 今になってこの声が聞こえてきた原因は一つしかない。今迄、この声は【色欲】によって封じ込めていた。だからこそ、神聖騎士であるアリシアとあれだけ接しても声が聞こえてくることは無かったのだ。

 だが、色欲刀が俺の中から消えた今、この声を封じ込めてきた色欲の力も消え去っていた。だから、今になってこの声が聞こえてきたのだろう。


『奴を、亡骸となった奴を、そして奴を宿した者、その眷族ども、全てを今すぐ滅ぼせ!!』


 この声から感じられるのは俺の目の前の存在に対するとてつもない怨嗟だ。リリアの、いや正確に言うなら彼女が持つあの神双刃に対して、この声からとてつもない怨嗟の混じった声が聞こえてくる。

 リリアに対しても同じ、あるいはそれ以上の怨嗟も感じられる。それ程までにこの声の主はあの神双刃、そして、神聖騎士を憎んでいるのだろうか。


「もらいましたっ!!」


 リリアのその声でふと我に返った。しまった、戦いの最中、しかも剣を交えている時に完全に意識が別の方向に逸れていた。


「っ、しまっ……」


 意識が声の方に集中してしまっていたのだ。何時の間にか彼女の右手に握られた神双刃の片割れが銀色の粒子を発しながら光り輝いていた。今、あの剣には膨大な聖気が込められている。あれを直撃で受ければ致命傷になるかもしれない。


「はぁっ!!」


 リリアはその剣を大きく振るう。すると、そこから発せられた聖気が刃の形となり一直線に俺の方へと向かってきた。俺はその一撃を七罪剣で受け止めるが、完全には受け止めきれず、戦いから意識を逸らした罰と言わんばかりに俺は後方へと大きく吹き飛ばされてしまった。


「くっ……」


 リリアの放ったあの一撃を完全には防ぎきる事が出来ず、防ぎきれなかった聖気が、俺の体の至る所にダメージを与えていた。 運が良い事に小さな傷は無数あるが、戦いに支障が出るほどの大きなダメージは無かった。俺は何とか体を起こして立ち上がる。


 だが、俺の頭の中に響く声は収まるどころか激しさを増していた。まるで、戦いから意識を逸らした結果、この一撃を受けてしまった不甲斐ない俺に怒り狂うかのように大きな声を上げていた。


『何をしている!! 奴程度に苦戦する等、それでも我を宿した者かっ!!』

(何の、話だ……?)


 それに対しては俺も反論があった。そもそもこの声が聞こえなければ俺は戦いから意識を逸らす事が無かったのだ。だが、そんな事は考慮しないと言わんばかりに、この声は怒り狂った声を上げ続ける。


『くそっ、貴様では話にならんっ!! その肉体を我によこせ!!』

(何を……、あぐっ!!)


 そして、その言葉が聞こえた直後、この声の主が俺の意識を侵食していくのを感じ取っていた。

 この声の主に意識を完全に乗っ取られれば、間違いなく二度と自力では戻ってこられない。そんな確証が俺の中にあった。


『貴様のその肉体、我に明け渡せ!!』

(ぐっ!! 止めろっ!!)


 俺は必死にこの思念に意識を乗っ取られまいと抵抗する。だが、それを嘲笑うかのようにこの思念は俺の意識をドンドンと侵食していく。

 しかし、今の俺の中にはもう【色欲】の力は無い。この思念に対して今の俺は対処する方法が無いのだ。それでも意識だけは持っていかれない様にと、抵抗を続ける。


(くぅぅぅ!!)


 意識を持っていかれない様に抵抗するだけでも激しい痛みが頭の中を駆け巡る。その痛みに俺は動く事もままならずただ頭を抱えるだけだった。しかし、そこまでしてでも侵食速度が若干遅くなる程度で、侵食そのものが止まることは無い。


『無駄だっ!! 今の貴様では我を止める事は出来んっ!! さぁ、貴様のその肉体、貰うぞっ!!』

(があああああああッ!!)


 しかし、そんな俺の努力も空しく、その叫びを最後に、完全にこの声の主に意識を侵食され、俺の意識は闇に包まれるのだった。

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