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七罪剣と大罪人と呼ばれた少年の反逆譚  作者: YUU
第四章 【節制の騎士】リリア・フォン・シルフィール編
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118 【節制】の力

 リリアの上空にあった光の環が大きさを増していき、この場を覆うほどの大きさになった後、ゆっくりと降下し地面へと到達する。そしてその直後、俺の足元を含めた光の環の内側全体が銀色の粒子を発しながら、光り輝く。

 彼女はあの時、結界といった。そして、【節制】の力とも。つまり、この結界は【節制】の力で展開されたものなのだろう。なら、【節制】の力がこの場全体に及んでいてもおかしくは無い。

 そして、そう考えた直後、この場を漂う無数の銀色の粒子全てが突如、俺の体内へと入り込んでいく。それこそ、何も知らない者が見れば、まるで俺がこの粒子を吸収していると見間違えかねない程の速度で体内へと入り込んでいった。

 そして、体内に銀色の粒子が入り込んだ次の瞬間、俺の体に異常が起きた。


「体が、おも、いっ!!」


 まるで大きな重りを背負わされたように体の動きが目に見えて重くなったのだ。だが俺に起きた異常はそれだけでは無かった。


「これ、はっ!?」


 左手に激しい痛みが走ったかと思うと突如、俺の手から色欲刀が激しく弾け飛び、自分の後ろの方へと突き刺さった。


「何がっ……、ぐあああああああっ!!!!!!」


 しかし、その事態に驚いている場合ではなく、更なる異常が俺を襲う。色欲刀がはじけ飛んだ直後に突如、激しい痛み、いや軋みといってもいいかもしれない程の痛みが胸の部分に走ったのだ。その痛みを感じた俺は思わず胸の部分を押さえていた。


「いや違う、体じゃないっ、これはっ」


 軋みを上げているのは、自分の体ではない。自分自身の魂だという事を俺は直感で理解していた。それを理解した直後、自分の魂の一部が無理矢理に引き剥がされる様な、そんな痛みが俺を襲う。この痛みはラダスで戦った神代の魔人ガイウス、奴との最後の魂の喰らいあったあの時の痛みと酷く酷似している様な気がした。

 そして、その魂の一部が完全に引き剥がされたと感じた直後、胸の部分から自分の意思とは無関係に双罪槍斧が具現化する。俺はそれに触れようとしたが、触れた瞬間、バチッ、という音と共に、双罪槍斧も弾け飛び、色欲刀のすぐ近くへ、同じく突き刺さった。

 そして、俺はこの異常を引き起こしたと思われるリリアの方へと顔を向ける。


「驚きました………。流石というべきでしょうか。この結界の中では普通の魔人なら動く事もままならないのですが……」

「リリア、一体何を……?」


 リリアは驚いた表情を浮かべながら俺を見つめていた。この異常は彼女がこの結界を展開してから起きたものだ。ならば、今の俺を襲うこの現象に関与しているのは間違いない。彼女が何をしたのかを俺は問うていた。


「これこそ、私の持つ【節制】の力の一つ、『節制の封欲結界』です」

「『節制の封欲結界』……?」

「【節制】、その意は欲望を抑えて謹む事。つまりは抑制する事と言えるでしょう。この力は魔力、或いはそれによる力を抑制、阻害することが出来ます。

 そして、この『節制の封欲結界』は力の影響範囲を一定空間内に広げる事で、その空間全域に【節制】の力の影響を与えることが出来るのです」


 だが、それではこの異常に説明が付かない。この結界の力はそれだけではないのかもしれない。そして、リリアは俺の推測を裏付けるかのように話を続ける。


「そして、この結界にはもう一つの効果があります」

「もう、一つ……?」

「この力を集中させる事で、対象の持つ力を封じる事が出来るのです。しかし、七天神具と同格の存在である七罪武具の力を封じる事は難しいでしょう。

 ですが、【節制】の力は欲望、その象徴とも言える力である【強欲】に対して最も強く働きます。それこそ、七天神具と同格である【強欲】の力を封じる事が出来る程に」

「なっ……」


 その事を聞いた俺は言葉を失っていた。つまり、彼女は俺の持っていた【強欲】の力を封じたと言っているのだ。ならば、この現象についても説明が付く。

 俺の持つ七罪剣は【暴食】と【強欲】を組み合わせる事で、他の七罪武具を取り込む事が出来るという力を成していた。しかし、リリアはその内の一つ、【強欲】の力を封じた。

 結果、七罪剣は七罪武具を取り込むというその本来の力を維持できなくなり、俺の中にある他の七罪武具が分離したのだろう。

 七罪剣を成す二つの力、その片割れが欠ければその力を維持できなくなるのは当たり前の話だった。


 そして、そんな俺に更なる追い打ちをかけるような出来事がこの直後、起きた。


「これはっ、魔力が……抜けていく……」


 俺が内包していた魔力がドンドンと減退していくのを感じていた。そして、俺には何故その様な事が起きているのか、その理由も直感的にだが分かっていた。

 魔力を水に例えるなら、七罪武具はそれを留めて置ける器の様なものだ。七罪武具を複数取り込んでいたからこそのあの魔力の量だったのだ。しかし、今の俺にはその器は分離してしまった。ならば、残った水はどうなるか、それは言うまでも無い事だろう。

 結果、俺の手元に残った七罪剣が内包出来る量以上の魔力がドンドンと失われているのだ。


「くそっ……」


 思わず言葉を吐き捨てる。戦い始めた当初はアリシア並みに厄介な相手なんて言う軽い想像をしていた。しかし、現実にはそんな程度の話では無かったのだ。俺にとって、リリアは相性が最悪の相手と言わざるを得なかった。

 特に今の俺は魔力をすべて独学で使っている様なものだ。魔力量でゴリ押しをしてきた事も多々ある。そんな俺にとって今の状況は危機的な物であるのは間違いなかった。

 五対一、などという甘い見積もりをした少し前の自分自身を思わず恨んでしまいそうになるほど今は危機的な状況だ。


 だが、運が良い事に【暴食】の力だけは残っている。これは【強欲】が封印されても使える様だ。

 しかし、魔力の量も著しく減退している。今の魔力量でも七罪武具一つ分はあるだろう。この魔力量では普通の人間や聖騎士を相手にするなら十分ではある。しかし、今の俺が神聖騎士を相手取るには心もとない程度の量しか残っていないのだ。

 【暴食】の力が使えるからといっても、それだけだ、この状況が一気に好転するわけではない。俺は今迄経験してきた戦いをよりも遥かに危機的な状況に頭を悩ませるのだった。

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