116 決戦前の最後の会話
夏風邪、無事に治りかかっています。明日には治ると思います。ご迷惑をおかけしました。
後、文章評価とストーリー評価がそれぞれ1000ptを超えました!! これも評価してくださる皆様の応援のおかげです!!
ありがとうございます!!
リリアは俺に神双刃の片割れの切先を向けたまま、更に言葉を紡ぎ出した。
「貴方が【強欲】の七罪武具を所有しているのは既に知っています」
「……そこまで知っているのか」
「ええ。もう言い逃れは出来ませんよ?」
リリアの言う通り、もう言い逃れができる状況ではない。そんな機会はとうの昔に過ぎている。彼女が何処でどうやって、俺の内にある【強欲】の知ったのかは全くと言っていいほど分からなかったが、それでも俺の内にある七罪剣の片割れである【強欲】の力を俺が宿している事は既に知られている。
(俺も覚悟を決めるべきなのだろう……)
ここまで知られている以上、もうどうする事も出来ない。今の俺に出来るのは自分が殺されない様に魔力を解放する事だけだった。
そして、覚悟を決めた俺は次の瞬間には、自分の中にある魔力を解放する。そして、その直後に魔力を収束させ、自らの右手に七罪剣を具現化した。
しかし、俺の右手に握られた七罪剣を見てもリリアの表情には変化は殆ど無い。寧ろ、納得といったような表情を浮かべる。
「やはり、奈落の件もカイン様が……」
「……ああ」
直接、七罪剣を見た事で、この剣に宿る力のもう一つ片割れである【暴食】の力を感じたのだろう。彼女の言葉に俺は肯定の言葉を返した。
「カイン様の持つその剣。それは報告書にあった二つの七罪武具を融合させるという儀式。それを用いて【強欲】と【暴食】、その二つの七罪武具を融合させたものですね?」
「……その通りだ」
それを聞いたリリアは全てを諦めたかのような表情へと変わる。
「最後の最後まで信じたかったです。きっと何かの間違いなのだと、そう思いたかった……」
そして、リリアは一世一代の告白をするような意を決した表情へと変化した。
「……カイン様、私は貴方の事が好きでした。出会ったあの日から、ずっと一人の男性としてお慕いしていました」
「リリア……」
その言葉を聞いた俺は驚きを隠せなかった。彼女が俺の事を好いてくれていたら、という妄想をしなかったと言えば嘘になる。だから、リリアが俺の事をずっと好いてくれていたという告白は嬉しくない筈がない。
だが結局の所、俺と彼女が結ばれる事はない。それは今の俺がこの力を持っている限りは決して叶わぬ夢現でしかないという事を、今のこの場が証明している。
しかし、いや、だからこそ、俺はここで自分の気持ちを彼女に伝えなければならない。そんな気がしたのだ。
「俺も、だった。俺もリリアの事が好きだった。多分、それが俺の初恋だった」
「カイン様……」
初めて俺は彼女に対する気持ちを言葉に乗せた様な気がした。俺の言葉を聞いたリリアの瞳から一筋の涙が零れ落ちるが、彼女はそれを拭うこと無かった。
改めて互いの思いを告げ合った事で、俺達は互いに互いの事を想い合っているのだと知る事が出来た。だからこそ、思わずにいられなかった。本当にこれしか道は無いのかと。
「……俺達は本当に戦わないといけないのか?」
「……ええ。それこそ愚問でしょう」
「そう、か……」
しかし、俺とリリアは結局の所、相容れない存在だった。俺のような存在を討つ事こそ神聖騎士の使命。もうここまで来てしまえば、戦わないという選択肢は彼女には取れないのだろう。
だが、俺もただ黙ってリリアに殺される訳にはいかない。こんな俺を大事に思ってくれる人がいる。そして、俺に最後に生きろと言ってくれた人がいる。その人の為にもここで殺される訳にはいかないのだ。
「…………」
「…………」
この場には一触即発の空気が漂っている。俺の放つ魔力とリリアの放つ聖気、その余波同士がぶつかり合い互いの存在を掻き消しているのだ。
何かの弾みがあれば、そのまま戦いになっても不思議ではない。だが、それでも最後に聞いておきたいことがあった。
「最後に一つだけ聞かせてほしい。何時、どうして俺がこの力を持っていると分かったんだ?」
「それは……、公爵邸で最後にお願いした握手の時です。カイン様は知らないと思いますが、私の持つ【節制】の神具の力は【強欲】の力には特に強く反応するのです。それこそ、互いに触れ合うだけでその存在を感じ取れる程に」
「そうだったのか……」
それを聞いた俺は何処か納得していた。あの時感じた嫌な感覚、あれは俺の中にある【強欲】の力の存在をリリアが感じ取っていた事を、俺も無意識の内に感じ取っていたのだろう。
それなら、あの直後に彼女の表情が曇っていた事にも納得がいく。もしかしたら、リリアが俺に会いに来た時点で俺の中にある七罪武具の事を知られるのは確定していたのかもしれない。
聞きたい事はこれで全て聞き終えた。もう俺もリリアも語り合うことは無い。俺達は互いにそれを理解していた。
そして、俺とリリアは同時に後方へと飛び退き、改めて互いに剣先を相手へと向ける。
「私は【節制の騎士】リリア・フォン・シルフィール。神聖騎士の名においてカイン様、ここで貴方を討たせていただきます」
名乗り、か。彼女がそう名乗ったのなら、俺も今迄の強敵たちに告げた様に、こう名乗るべきなのかもしれない。
「俺は【七罪の魔王】カイン・エレイン」
そして、俺のその言葉が最後の合図だったのだろう。
「ならカイン様、いえ、大罪人【七罪の魔王】カイン・エレイン!! 今、ここで貴方を討ちます!!」
「来いっ!!」
俺達は互いに自身の聖気と魔力を解放しながら剣を構え、相手に向かっていく。ここに俺とリリアの戦いの火蓋が切って落とされるのだった。
もしこの作品を面白いと思って頂けるなら、ブックマーク登録、ポイント評価をして頂ければ幸いです。一人10ptまで入れることができます。今後の更新への大きな励みになります。よろしくお願いします!!
後、次回更新なのですが、夏風邪が完治寸前なので、次以降は二日に一度更新に戻……そうと思ったのですが、次回更新予定の26日は作者が映画を見に行く予定なので、もしかしたら更新できないかもしれません。その場合は27日になると思います。ご了承ください。
(この映画だけは公開初日の初回公演で見るって決めていたのです)
それ以降は、また二日に一度更新に戻せると思います。なので今後も応援よろしくお願いいたします!!




