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七罪剣と大罪人と呼ばれた少年の反逆譚  作者: YUU
第四章 【節制の騎士】リリア・フォン・シルフィール編
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115 【節制】の双刃

夏風邪が長引いております。拗らせたかもしれません……。

 リリアに指定された日の夜、俺は彼女との約束の倉庫街にある店の前に向かった。彼女は既に到着していたようで、俺を見つけるなりこちらの方に駆けだしてきた。


「リリア、手紙に書いてあった通りに来たよ」

「はい。カイン様、来てくださり感謝します」


 今のリリアは銀色を基調とした、騎士が式典で着る様な儀礼服を身に纏っている。そして、彼女の纏っている雰囲気も先日までとは打って変わってまるで戦いに赴く騎士の様な雰囲気を漂わせていた。

 また、どうやら護衛の者もいない様だ。不用心だと思うが、護衛の目を盗み、こっそりと抜け出してきたのだろうか?

 リリアの立っている場所のすぐ近くには、フローラの記憶通り、地下水路への入口があった。


「では、行きましょう」

「……行くって、何処に行くつもりだ?」


 だが、俺のその疑問にリリアは首を横に振るだけだった。


「それは聞かずに、今は私について来て下さい」


 そう言うと彼女はすぐ近くにある地下水路への入口への扉を開け、入っていく。若干不審には思いながらも俺も彼女に続き地下水路へと入っていくのだった。






 俺は彼女の後に続き、地下水路を進んで行く。

 だが、この地下水路は迷路のようなものだ。今、自分が何処を進んでいるかが曖昧になりそうになる。実際、俺の前を進んでいるリリアも手元に持った紙を見ながら進んでいるのがその証拠だ。

 しかし、それでも俺はこの進む道には何処か見覚えがある様な気がする。だが、何処で見たのかがどうしても思い出せそうにない。



 そして、そんな見覚えのある道を進んだ先、到着したのはアリシアと共にあの フローラと戦ったあの時の闘技場のような空間だったのだ。


「ここ、は……」


 この場所の事は今でも記憶に残っている。というより、忘れろという事自体が不可能な程、強烈な記憶として俺の中に今もある。

 通りでここまでの道に見覚えがある筈だ。あの道はこの場所までの経路だったのだから。

 そして、この場所はフローラとの戦い以降も放置されていたようで、あの時から殆ど変わった様子は無かった。

 俺達は闘技場の中央までゆっくりと進む。


「ここは、この王都で起きた魔人達による事件、その黒幕であるフローラという神代の魔人が拠点として使っていた場所であり、そしてその魔人がアリシアさんによって討たれた地でもあるそうです」

「…………」


 それは俺が一番知っている。なにしろ奴を討ったのは俺自身なのだから。驚く様な事は何もなかった。だが、そんな俺の様子を見たリリアは諦観した様な表情を浮かべる。


「驚かれないのですね」

「あっ……」


 そうだ。リリアにしてみれば俺はこの場所については全く知らない筈なのだ。普通に考えれば驚き、或いは何故こんな所に連れてきたのかを慌てて問いただしてもおかしくは無いだろう。

 だが、それを今更取り繕う様な事をしてももう遅いだろう。彼女は何かを確信したのだから。

 そして、彼女は一度深呼吸をした後、覚悟を決めたといわんばかりに表情を固める。


「ここなら、邪魔は入らないでしょう」

「一体……」


 一体、何の事だ? そう告げようとする俺を無視するかのようにリリアは自分の聖気を一気に解放し両手に収束させた。その聖気はやがて形を成していく。

 そして、彼女の手には聖気が形を成した銀色に輝く二振りの剣が握られていた。


「それ、は……、まさか……」


 彼女の持つ二振りの剣はアリシアの持つあの神剣にも勝るとも劣らない美しさを兼ね備えている。二対一刃、その言葉があれ程に似合う物は他に存在しないといっても過言ではないだろう。


「これこそ【節制】の銘を持つ七天神具、節制神双刃ウリエル。神聖騎士の象徴であり、私が持つ七天神具です」


 リリアはそう告げながら右手に持った神双刃の片割れの切先を俺の方に向ける。その直後、切先から俺に目掛けて聖気が放たれたのだ。

 この至近距離とはいえ普段なら、この聖気を回避することも簡単だっただろう。何故なら、リリアは単に聖気を少しだけ俺に向けて放っただけなのだから。だが、リリアに剣を向けられたことによる動揺、そして咄嗟の事だった為、それを避ける事が出来なかった。


「あぐっ!!」


 リリアから突如、聖気を受けた俺の体には痛みが走った。俺はその痛みで思わず声を上げてしまった。今の俺の体で無防備に聖気を受ければこうなる事は必然だった。

 そして、そんな俺の様子を見ていたリリアは何かを確信した様に悲しげな表情を浮かべ目を伏せた。


「やはり……、そうなのですか……」

「…………っ!!」


 間違いない、今のリリアには俺が魔力を持っている事を知られている。それは聖気を俺に向けて放った事、そしてその直後のあの確信したような表情から明らかだ。だが、どこでだ? 何処で知られた?

 俺自身、簡単に知られる様な、そんなヘマをした記憶は全くない。だが、リリアがここまで俺を連れてきたという事は何かしらの確証があったという事なのは間違いない。しかし、リリアが王都に来てから会ったのは二度だ。一体、何処で知られたのか、全く見当が付かなかった。


「信じたくはありませんでした」


 そんな疑問で溢れかえる俺の内心をよそに彼女は言葉を淡々と紡いでいく。まるで、感情を押し殺した様な、そんな声色だった。


「ですが、確証を得てしまった以上、捨て置くわけにはいきません。神聖騎士の一人、【節制の騎士】として、ここで貴方を討たせてもらいます」


 そう告げるリリアの表情はまるで仇敵を睨むような、そんな表情に変わっている。更に、彼女から今迄感じなかった殺気も感じる。もう動揺している暇は無く、事ここに至っては俺も覚悟を決めなければならないのかもしれない。


「カイン様、お覚悟を」


 そして、リリアは右手に構えた剣の切先をこちらに向けたまま、そう告げるのだった。

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