114 リリアと王都散策
遅れてしまい申し訳ありませんでした。
夏風邪と残業と難産の三連コンボを食らいました……。三連コンボ+意識朦朧の気がある為、クオリティーに影響が出ているかもしれませんが、ご了承ください。
咳をする度、喉が痛みます……。これが長引けば更新頻度に多少の影響も出るかもしれません……。
リリアが公爵邸を訪問してから数日が経過していた。俺は今、公爵邸の入口前にいた。何故俺が今、この場所にいるのか。それには理由がある。
先日、リリアがこの屋敷に来た後、俺の元に彼女から一通の手紙が届いたのだ。その内容は簡潔に言うと、近い内に二人で一緒に王都を散策しませんか、という内容だった。
俺はそれに返事を出し、最終的に決まったのが今日のこの時間に待ち合わせるという事だった。
そして、もうすぐ約束の時間になるという時だった。遠くからリリアが此方に向かってくるのが見えた。そして、少しすると彼女が俺の元へと到着する。
「カイン様、お待たせいたしました」
今のリリアは一国の姫君だとは思えないほどラフな格好をしている。それこそ、その見目麗しい容姿を除けば、何処かの商人の娘程度にしか思われないだろう。
また、彼女の周りに護衛の姿は無い。しかし、同時に付近からこちらを伺う様な気配と視線を感じる。恐らくは、物陰に隠れながら護衛をしているのだろうか。
恐らく、彼女もこの護衛の事は気が付いているのだろうが、それを意識している様子は無かった。
「さぁ、行きましょうか」
「ああ」
その後、リリアは俺の手を引いて歩き出した。俺も彼女の手に引かれるまま、歩みを進めるのだった。
王都を二人で散策していると、途中で面白い屋台を見つけた。
その屋台には多数の果実が店先に並んでいるが、この屋台はそれを売っている訳では無かった。
この店では店先に置かれた果実を客の前で直接絞って作ったジュースを売りにしている屋台だったのだ。
そして、色々な果実を絞ってそれを混ぜ合わせたミックスジュースというものがこの店の看板商品の様だ。
俺達はそのミックスジュースという商品が気になり、結果そのジュースを飲んでみようという話になった。
「そう言えば……」
このミックスジュースという商品だが、確か、屋敷で働いている使用人たちが噂していたのを小耳に挟んだことがあった。その噂では最近、この店は王都で流行しているらしくここまで来ても売り切れている時もあるほど人気なのだそうだ。
しかし、今は時間帯のせいもあるのかもしれない。運よく店の前には人は殆ど居ない。すぐに注文できるだろう。
「そうだ。リリアはこういう店は初めてなのか?」
「ええ。恥ずかしながら……」
やはり一国の姫君であるリリアにはこんな庶民が訪れるような屋台には馴染みがないのだろう。なら、俺が注文しに行った方が良いだろう。
「なら俺が注文してくるよ」
「よろしいのですか?」
「ああ。俺の方がこういうのは慣れてるから」
そして、俺は彼女から離れ店主の元まで向かい、二人分の注文を済ませる事にした。
「このミックスジュースを二つ」
そしてお金を支払うと、ジュースが入ったコップが店主から渡される。俺はそれをリリアの元までもっていき、それを彼女に手渡した。
「カイン様、ありがとうございます。では、いただきます」
俺も彼女に合わせて、コップに口を付けてジュースを飲み干していく。
一杯で複数の果実の味を同時に楽しめると宣伝しているだけあって、このジュースに使われているであろう果実の風味が複数感じられた。しかも、ちゃんと分量も計算されているのだろう。味が崩れる事なく、しっかりとした味わいが残っていた。この味なら流行しているというのにも頷ける。
「こういった飲み物を飲んだのは初めてなのですが、とても美味しいですね」
「そうだな。ここまで美味しいとは思わなかったよ」
そして、俺達はジュースを飲み終えた後、王都の散策を再開するのだった。
あれからも二人で王都を巡っていた。リリアの希望から俺の通っていた王立学園の前に二人で行ってみたり、大通りに並んでいた屋台で色々な物を食べ歩いてみたりと色々な事をしていた。特にリリアは屋台の食べ歩きというものをした事が無かったようで、戸惑っていたのがかなり印象的だった。そんなこんなで今日一日を二人で一緒に過ごしていた。
それから、時間はあっという間に経過し、今はもう夕日も沈みかけている時間帯へと突入していた。もうすぐ、日も完全に落ちるだろう。俺も彼女もそれが分かっている。
俺達は共に、今日一緒にいられるのはここで最後だろうという事を察していた。
「ここで、最後ですね……」
リリアのその言葉に俺は返事を返すことなくただ首肯する。
「カイン様、今日はありがとうございました。とても楽しかったです」
「リリア……」
二人で一緒に王都を散策している内に、俺の内にあった筈の色褪せていたリリアへの恋心に何時の間にか色が戻っていたのを感じていた。
別れるのを惜しむ様に俺達は自然に手をつないでいる。
そして、どちらからともなくこの場が別れの雰囲気へと変わった時だった。
「……カイン様、最後にこれを」
そう言ってリリアが差し出してきたのは封筒だった。俺はそれを手に取った。中には折りたたまれた紙が入っているのがうっすらと見える。
「これは?」
「変なお願いかと思われますが、この封筒を屋敷に帰ってから開けて中身を読んでいただきたいのです」
「屋敷に帰ってから?」
「ええ」
それを聞いた俺は妙だとは思った。何故態々屋敷に戻ってから、という指定をしてきたのかが疑問だった。だが、彼女がそうして欲しいと願っている以上、それを無下には出来なかった。
「……分かった」
俺は了承の返事の直後にリリアから封筒を受け取ると、それを腰に掛けた道具袋へと収納する。それを確認したリリアは何か決心を固めたような表情へと変わった。
「では、またお会いしましょう」
「……ああ、また」
そして、リリアと分かれた俺は屋敷へと帰るのだった。
屋敷に戻った俺は、早速リリアから渡された封筒を開ける事にした。その中からは折りたたまれた一枚の紙が出てきた。俺はそれを広げ、その内容を目で追っていく。
そして、その封筒の中に入った手紙には、明後日の深夜にこの王都の一角にある倉庫街。
その一角にあるとある店の前まで来てほしいという内容が記されていた。
何故リリアがこんな内容の手紙を渡したのか。そして、何故この手紙を屋敷に戻ってから呼んでほしいといったのか、その意図が分からなかった。
しかし、それよりもっと気になることがあった。この手紙に書かれている倉庫街のとある店の事だ。
「確か、ここは……」
この手紙に指定された場所は俺の記憶にある場所だ。その場所の近くにはフローラの記憶にある地下水路への隠された入り口がある場所の近くだったのだ。
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