111 リリアの目的
昨日は更新できず申し訳ありませんでした。
俺の目には数年ぶりに見たリリアの姿が今も焼き付いている。
「……っ」
この王都にリリアが来るかもしれないという可能性を考えなかった訳では無かった。リリアは【節制の騎士】の称号を持つ神聖騎士の一人だという事は知っていた。
だから、彼女が来るという事は考えられたが、それでも確率は四分の一。リリアが来る可能性は低いと思っていたのだ。
「あの時の、夢も……?」
あの時の思い出を夢に見たのはこの事を暗示していたのかもしれない。今の俺にはそんな風にも考えられた。
そして彼女は、アリシアが教会本部から戻ってくるまで、この王都に滞在する事になるのだろう。
「だけど……」
だけど、ここまで来た甲斐はあった。もし、不意の再会となっていたなら間違いなく動揺していた。この事を事前に知る事が出来たのは、運が良かったと言ってもいい。
リリアは既に大聖堂の中に入っており、彼女が乗ってきた馬車も何時の間にかどこかに移動している。そして、リリアの到着を見に来ていた民衆も既に解散している。その為、大聖堂前には先程まで大勢の人間がいたのが嘘のように静かになっていた。もうここには用は無い。
この王都に彼女が来ていると知る事が出来ただけでも十分だ。当初の目的を終えた俺は屋敷に戻るのだった。
「リリア様、こちらです」
短くない旅路を経て、このメルクリア王国へと到着した私は司教に案内されながら大聖堂内を進み、談話室へと案内されました。
「どうぞお掛けください」
「はい」
そして、司教と向かい合って座った私は今後の事についての話を始める事にしました。
「それで、今回の来訪の用件ですが、教会本部へと向かわれたアリシア様の代理だと聞いております」
「ええ、その通りです。ですが、今回の用件はそれだけではないのです」
私の言葉に司教は首をかしげました。本来の、そして表向きは教会の本部へと出向いたアリシアさんの代理という事になっています。ですが、私にはもう一つ別に、しなければならない事があるのです。
「それだけではない、と申しますと……?」
「アリシアさんから報告があった今回の事件の黒幕であったフローラという神代の魔人が持っていたという傲慢斧、あれは我が国に封印されていた七罪武具の一つだったものなのです」
「なっ、そうなのですか……」
「以前、我々神聖騎士の五人で現状封印されている七罪武具の再確認する事が決まりました。そして私は我が国に封印されている七罪武具の封印殿へと立ち入ったのですが、封印殿の祭壇から七罪武具が消失していました」
「…………」
「そして、私の報告に前後してこの国で今回の事件が起きました。そして、フローラという神代の魔人が持っていたという傲慢斧、そこで全てが繋がったのです。我が国から七罪武具を持ち出したのが今回の事件の黒幕であるフローラという魔人なのでしょう」
「なるほど、それで……」
「ええ、我が国に封印されていたはずの七罪武具がどうやって持ち出されたのか。この国へ私が出向く事になったのはその調査も兼ねているのです」
奈落にあった【暴食】と【強欲】の二つ、そしてアリシアさんが取り逃してしまったという【色欲】、このメルクリア王国と我がシルフィール帝国に封印されていた【怠惰】と【傲慢】の二つ、計五個の封印が解かれた事になります。そして、彼女の報告通り【怠惰】と【傲慢】が失われたのだとしても三つが世に出た事になります。
もしこの事が他の魔人達に知られたとなれば、残り二つも狙われるのは間違いないでしょう。
この事が他の魔人達に知られる前に、一刻も早くどうやって持ち出されたのかを調査しなければなりません。
勿論、我が国でもその事について、封印殿の調査を進めようとは思っていたのですが、それを始める前に今回の事件が起きた為、そちらに人員を回しており、我が国では調査そのものが延期しているのが現状です。
なので、今回の事件の舞台となったこの王都の地下にある封印殿だけでも調査しておくのは当然と言ってもいいでしょう。
「我々もその件については調査のお手伝いをしたいと思っているのですが、何分我々も今は人手不足でして……」
司教のその言葉に私は頷きます。王都の警備に聖騎士を回している都合上仕方がないことかもしれません。ここまでの道中で王都の警備の為にどれ程人員を回しているのかは理解しています。ですので、私が調査するのが一番早いでしょう。
「分かっています。ですが、私がここの地下にある封印殿に立ち入っても問題はありませんね?」
「ええ、私には貴女を止める権利はありません。後ほど地下への入口へとご案内いたしましょう」
「感謝いたします」
そして、重要な話を終えた私達は少しばかり世間話を始めました。今迄、張り詰めた空気で真剣な話をしていた為、少し空気を和ませるのに世間話をするのは最適でした。
そして、その話の中で司教は私にとっては驚くべき事を話し始めたのです。
「そう言えば先日、王宮で開かれた舞踏会に参加する機会があったのですが、そこでアリシア様がとある男性をパートナーにして参加していらしたのです」
「……え?」
「最初は、アリシア様がとうとう婚約者を決めたか、などと話題になったのですが、どうやらその男性はアリシア様の兄君の様ですね。噂によると庶子という事で、さる事情から公爵家から追放されていた様なのですが、いつの間にか公爵家に戻っていたみたいなのです」
その話を聞いた私の胸は思わず高鳴りをしました。もし、もしその男性が私の考えている通りの人なら……。
「そ、その方の名前は分かりますか!?」
私は思わず声を荒げてしまいました。そして、司教の口から語られたのは私の思った通りの人の名前でした。
「確か、カイン、という名前の人物だったかと……」
「そ、そんな……、カイン様が戻って……」
カイン様が今は公爵家に戻っている。その話を聞いた瞬間、声は震え、胸は今迄よりも遥かに高鳴ったのでした。
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