110 皇女の到来
遅れてしまい申し訳ありませんでした。今回は少し難産でした。
後、ブックマークが4000を超えました!!
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地下水路でフローラの配下の魔人、ローテシア達を従えてから数日後、俺は再び地下水路で彼女と対面していた。
ローテシアはある程度は王都の外にも少しばかり伝手を持っている様で、そこから情報を仕入れているとの事だ。その情報を共有するべく、俺は彼女と会う約束をしていた。
だが、魔人であるローテシアと堂々と会う訳にもいかない。地上に出れば、もしかしたら彼女の顔を知っている者がいるかもしれない。だからこそ不用意に地上で会う訳にはいかないのだ。なので、俺が彼女と会う時は、地盤の固まった拠点が用意できるまでは地下水路で落ち合う事に決めていた。
因みに、残る四人にはこの王都に今も潜むフローラの残党の魔人を取り込む事を命じてある。その成果は着々と出ている様で、少しずつながらも着実に残党を取り込んでいるとの報告があった。
そして、ローテシアと地下水路で落ち合った俺は彼女が持っていた情報を一つ一つ聞きながら、その情報を整理していく。そして、彼女から聞いた情報の中で気になることがあった。
「神聖騎士の一人が王都の傍に?」
「ええ、王都のすぐ傍まで来ている様で、明日には到着する見込みの様です」
ローテシアから齎された情報は、この王都に神聖騎士が向かっているというものだった。
無論、この王都に神聖騎士が来ることには驚いてはいない。何故なら、教会本部から神聖騎士がこの王都に来る事になっているというのは事前にアリシアから聞いているからだ。
しかし、明日到着するという情報までは知らなかった。
「そうか……」
ローテシアからの情報で明日到着するという事を知れたのは大きい。いつ来るか、それに関しての情報を皆無だったからだ。いつの間にか神聖騎士が到着していた、という事態を避けられたのは良かっただろう。
だが、今代の神聖騎士は教会本部に向かったアリシアを除けば四人。どのような人物が来るかを把握しておいた方が良いかもしれない。その事について彼女が何か知っているかを聞いてみる事にした。
「それで、だ。王都に向かっている神聖騎士がどんな人物なのか、分かるか?」
「いえ、そこまでは……」
どうやら、王都の現状の警備体制の中では外との情報交換にも大きな制限があるらしく、彼女は王都に向かっているという神聖騎士が明日到着するという情報程度しか仕入れる事が出来無かった様だ。
「……そういう事なら、まぁ、仕方ないか」
分からない事は仕方がない。明日到着するという情報だけでも知れただけ運が良かった。そう思い、俺はローテシアと分かれ地下水路から脱出するのだった。
そして翌日、ローテシアから聞いた情報が確かなら馬車が来るのは本日だろうと思い、俺は物陰に隠れながらクリスチア大聖堂の付近を見張っていた。
この王都に来る事になっているという神聖騎士がどのような人物かは今も分かっていない。
しかし、極力関わらないとは決めていたが、それでも顔ぐらいは知っておかないといざという時に困るだろう。
だから、せめてどんな人物なのか、顔だけは見ておこうと思った俺は馬車が到着する大聖堂の近くから馬車が到着するのを待つ事にしたのだ。
そして、俺の目線の先にある大聖堂の前には既に聖騎士が数十人ほど整列をしながら待機している。今日到着するという神聖騎士を出迎える為だろう。
また、その入り口の扉の前には仰々しい法衣を着た男性が立っている。あの男性は確か司教を務めている人物の筈だ。昔に何度か見た覚えがある。
そうして暫く待っていると、大きな音を立てながら遠くから馬車が向かってきているのが見えた。馬車には教会の紋章が側面に取り付けられている。間違いない、あれが神聖騎士を乗せた馬車だろう。
「来たか……」
そして、その馬車は大聖堂の前で止まる。直後、馬車の扉が開いたと思うと、そこから一人の女性が降りてくるのが見えた。
特徴的な長く伸びた銀色の髪をフワリとなびかせながら、馬車から降りてきたその女性に俺は思わず見惚れてしまいそうになる。
その女性は馬車から降りると、聖騎士達に囲まれた道をゆっくりとした足取りで進んで行く。そして、その奥に立つ司教を務める男性の方へと歩み寄っていった。
そして、二人は何やら会話を始める。その会話は小さいながらも俺の耳にも聞こえてきた。
「ようこそ、リリア・フォン・シルフィール様。お待ちしておりました」
「出迎え、感謝します」
「我ら一同、貴女様の到着を歓迎いたします」
「はい」
二人は軽い挨拶と会話をした後、法衣を着た男性に案内される様に大聖堂の中に入っていく。それに合わせて整列していた聖騎士達も次々と彼女の後ろを着いていき、そのまま中に入っていった。
だが、それを見聞きしていた俺の内心はそれどころではなかった。
「リリ、ア……」
あれから数年が経っている為、多少変わっているが間違いない。あの特徴的な銀色の髪を忘れるはずがない。そして、先程聞こえてきた名前、その全てが俺の記憶と一致していた。
そう、アリシアの代わりにこの王都に来た神聖騎士。それは、俺が数年前、まだ追放される前に会った女性、シルフィール帝国皇女リリア・フォン・シルフィールの事だったのだ。
※追記
感想でご指摘があった部分を修正しました。




