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七罪剣と大罪人と呼ばれた少年の反逆譚  作者: YUU
第四章 【節制の騎士】リリア・フォン・シルフィール編
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107 舞踏会の後の夜と出立の朝

遅れてしまい申し訳ありません。


後、この作品の評価が9000ptに到達しかかっています!!

これも皆様の応援のおかげです!! 今後も応援よろしくお願いいたします!!

目指せ1万ptを目標にこれからも頑張っていきたいと思います!!

 舞踏会を終え、屋敷に帰ってきた俺は一人、部屋のバルコニーから外を眺めていた。


「はぁ……」


 そこで考えるのが、先程の舞踏会での事だった。あの時は周りに人が大勢いた為、深く考えることが出来なかったが、今は一人で時間も深夜、辺り一帯は静寂に染まっている。何かを考えるには十分な環境だった。


 そして、一人になれば思い出すのは舞踏会の最後で見たアリシアの笑顔だ。あの笑顔を思い出すだけで妙に胸が高鳴るのだ。そして、それがどういう事かを俺は理解していた。間違いない、俺は彼女に、アリシアに惹かれている。

 だが、それだけではない。俺の心の内にはその思いとはある意味では真逆の黒い感情も間違いなく存在しているのをこの舞踏会で自覚した。


 アリシアが他の男と笑みを浮かべながら話しているだけで、【嫉妬】してしまいそうになった。そして、それを見た俺の心の中には【憤怒】の感情が際限なく湧き出ていた。そして、彼女を独占したいという気持ちも俺の心の一部に抱えている。それは正に【色欲】という他無い。


「ははっ……」


 俺は思わず自嘲する。【嫉妬】に【憤怒】に【色欲】、そのどれもが七罪武具に象徴される七つの大罪の一つだ。今、俺はその七つの大罪の内、約半分をその心に抱えている事になる。

 だが、全ての七罪武具を『奪い』『喰らう』力を持つ七罪剣の所有者としてある意味相応しいのかもしれない。俺は呆れながらもそう思わざるを得なかった。


「俺はアリシアに……」


 そこまで口にしたが、結局その先を自覚しながらも呟くことが出来なかった。

 だが、答えを出すべき時が、出さなければいけない時が近づいているのかもしれない。

 その事を理解しながらも、答えを出す事ができず、そのまま数日が過ぎるのだった。






 王宮で開かれた褒章式と舞踏会から数日が過ぎていた。俺はアリシアを見送る為に屋敷の前にいた。

 今日、アリシアはこの王都を出立し、再び教会本部に出向く事になっているのだ。


 先日、封印殿の件で教会に出向いたばかりだというのに、なぜ再び出向く事になったのか。それはこの国で起きた、魔人とこの国の貴族が手を組んで起こしたクーデター未遂、そして神代の魔人の出現、そしてこの国に封印されていた七罪武具の奪取、それを取り込んだ新たな魔王の出現の影響が原因だった。

 正直、ここまで事態が急速に進行するとは思わなかった。というか、この王都で魔人達による事件が起こるなど想像もしていなかったのだ。それは誰であっても同じだろう。

 そして、ここまでの規模の事件となると、時間制限のある遠距離会話ではなく直接会って、じっくりと話を聞きたいとなるのは、当然の帰結だ。故にアリシアは今から教会本部へと向かうのだ。


 屋敷前には教会の馬車が待機している。そのすぐ近くには、あの時にアリシアが率いていた聖騎士部隊が待機していた。今回、アリシアは彼等と共に教会本部に向かう様だ。

 因みに、王都でのクーデターの事を聞いた彼等は急いで帰ってきたが、結局この王都に到着したのは二日前、そしてその頃には全てが終息していたとの事だ。まぁ、彼等がいた所でフローラを相手にするとなれば、それこそ盾程度にしかならなかっただろうが。


「お兄様、『例の件』ですが、気を付けてください」

「分かってる」


 アリシアが言う『例の件』、それはこの王都に彼女以外の神聖騎士が派遣されてくるというものだった。


 今回アリシアが出向くのは、直接会って早急に話を聞きたいという教会の上層部の意向の為だ。ガイウスに続く二人目の神代の魔人の出現、そしてこの国に封印されていたはずの七罪武具の奪取、その七罪武具を取り込んだ事による神代の魔人の魔王化、教会の上層部にすれば聞きたい事は山のようにある筈だ。

 だが、この王都では魔人の残党がまだいる可能性も考えられる。フローラによって魔人と化した者達は、双罪槍斧の力で全員が彼女に取り込まれた。それは、俺の中にある彼女の記憶を見ても間違いないと断言できる。

 しかし、双罪槍斧の影響を受けない者、フローラが【怠惰】の七罪武具を入手する前からの魔人、つまりは彼女の元々の配下の暗黒期の魔人も少なからず残っていると考えてもいい。

 そういった連中は恐らくはフローラが敗北したと分かった時点で地下に潜っているのだろう。

 そして、王都の警戒度は現在では最高レベルと言っていいほどに高まっている。幾ら魔人であっても、この王都から簡単に脱出できるとは思えない。この王都に魔人は今も潜んでいるだろう。そして、俺の中にあるフローラの記憶が正しいなら、この王都に残る魔人の数も三桁に上る数になるだろう。

 だが、このタイミングで神聖騎士であるアリシアが離れるとなると、その残党の動きを誘発しかねない。未だ魔人による被害からの復興は道半ば、そんなタイミングで残党が暴れたとなれば、どれ程の被害が出るか、想像するのは容易だ。


 そこで教会はアリシアの代わりに他の神聖騎士を一名、この王都に派遣すると決めたのだ。そして予定では、もうすぐ到着する事になっているのだそうだ。

 そこで問題になってくるのは七罪武具を所有している俺自身だった。今でこそアリシアは俺に好意的に接してくれているが、他の神聖騎士がそうなる可能は皆無といっても過言ではないだろう。もし、俺の事が知られれば、それは俺だけの問題ではない。それが知られたとなれば、アリシアもどうなるかが分からないだろう。

 なので、俺が出来る事は派遣されてくる神聖騎士に極力関わらない様にする事だけだ。それは先日、この話を聞いた後に俺自身が出した結論であった。


「ではお兄様、行ってきます。出来るだけ早く戻ってくるつもりですが、注意だけはしておいてください」

「ああ」


 そう言うとアリシアは屋敷の前で待機している馬車の前へと向かっていく。名残惜しいが、こればかりは仕方がないだろう。そして、アリシアが乗った馬車はそのまま屋敷から離れ、この貴族街を進んで行った。

 アリシアが乗った馬車を見送った俺はその後、屋敷へと戻るのだった。

目標の1万ptまでもうすぐです!! 皆様の評価やブックマークがその力になります!! なので是非とも、評価、ブックマークの方をよろしくお願いいたします!!

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