表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
七罪剣と大罪人と呼ばれた少年の反逆譚  作者: YUU
第四章 【節制の騎士】リリア・フォン・シルフィール編
107/128

106 舞踏会 後編

遅れてしまい申し訳ありません。また、本当は前話と合わせて一話にする予定だったので、少々短いです、ご了承ください。

 アリシアにダンスの誘いを受けた俺は、彼女と共に会場の中央まで手をつなぎながら歩んでいく。

 会場の中央まで到着すると、俺達は互いに互いの腰に手を回し、空いた手を彼女の手の上に乗せ、何時でも踊れるように準備をした。

 その直後、この会場全体に響き渡る様に曲が始まると周りにいる貴族達がダンスを始めた。


「さぁ、お兄様。私達も始めましょうか」

「……分かった」


そして、アリシアの言葉で俺達も揃って曲に合わせて踊り始めた。


「お兄様、大丈夫ですか?」

「あ、ああ」


 アリシアは慣れた様に優雅に踊っているが、俺はそれどころではない。一応、ダンスの作法は最低限知識として知っているが、それだけだ。こういった場に出たことは無いので慣れていない。俺は彼女について行くだけで精一杯だ。

 それでも何とかアリシアに合わせて、踊りを続けていく。


「あっ」


 慣れない踊りに時折、足を踏み外してしまいそうになるがその度にアリシアがフォローを入れてくれる。そのおかげで、目立つ失敗はすることは無かった。


「助かった」

「いえ、大丈夫です」


 そう言いながらアリシアは笑顔を浮かべた。何時もアリシアの顔を見ている筈なのに、今日の彼女はいつもよりも可憐に見えた。化粧をしているせいかもしれないが、何故だかそれだけでは無い様な気がした。

 そして、大きなミスをする事も無く、今迄流れていた曲が終わると、俺達は揃って元の場所に戻るのだった。






 俺達の踊りが終わった直後、元の場所に戻るとアリシアに挨拶に来た貴族達が行列を作りかねない勢いで彼女の元に集まっていた。ここにいても邪魔になるだろう、それに集まってきた貴族達の視線が俺にも向けられている。その慣れない視線にもう耐えられそうにない。

 アリシアに断りを入れ、この場から離れる事にした。そして、少し離れた、周りにあまり人がいない場所に一時移動し、そこからアリシアの様子を眺めていた。


「アリシア様、お久しぶりです」

「ええ。お久しぶりですね」

「此度の活躍は聞き及んでおります。それでですが…………」


 遠くからそんな声が聞こえてくる。

 恐らく社交辞令なのだろうが、それでも彼女は笑みを浮かべながら集まってきた貴族達に一人、また一人と次々に会話をしていく。今回の舞踏会は王都での事件の解決の祝賀の意味がある。彼女と集まっていた貴族達が会話するその光景は実に平和そうであった。


「……っ」


 だが、俺の内心はそれどころではなかった。アリシアが他の男と話している姿を見るだけで、何故か心にモヤっとした感情が湧き出てくる。彼女が笑みを浮かべながら他の男と話しているというだけなのに心の中に黒い感情が湧き出てくるのだ。

 フローラとの戦いの後からずっとこうだ。時折、彼女の手の甲に口付けをする貴族を見た時は、自分の胸を掻き毟りたくなるほどの焦燥感や怒りを覚えた。

 しかし、なんとかその感情を表に出す事は無く、平静を装う事は出来てはいた。


「くそっ……」


 俺は思わず言葉を吐き捨てる。この感情の正体とその名を俺は知っている。だけどそれを口に出す事は出来なかった。もし口に出してしまえばそれが本当の気持ちなのだと、理解してしまいそうで、認めてしまいそうで怖かったのだ。


「俺、は……」


 結局、俺の中にあるその感情を表す言葉を口に出す事が出来ないまま、この舞踏会の残りの時間を過ごすのだった。 





 そして、この舞踏会も終わりが近づいた時だった。次の曲が最後となるだろう、そんな時にアリシアが此方に向かってくるのが見えた。

 彼女の方も貴族達の挨拶をすべて終えたのだろう。アリシアは俺の前まで来ると、俺の方に手を差し出して口を開いた。


「お兄様、最後に一曲だけ踊って頂けないでしょうか?」

「……分かった」


 俺がそう返事を返した後、俺達は先程の様に再び手を繋ぎ、会場の中央に向かう。そして、曲が始まるのに合わせて再び踊り始めた。


「お兄様、ありがとうございます」

「?」

「こうしてお兄様と一緒に踊ってみたかったんです。夢が一つ叶いました、私は今とっても幸せです」


 そう言って笑顔を浮かべるアリシア。俺は思わずその笑顔に見惚れてしまいそうになった。その表情は今日見た中でも一番と言っていいほどに輝いていたからだ。


 そして、最後の一曲が終わるとアリシアは手を離し、ドレスの裾を持ち上げてカーテシーをする。俺もそれに合わせて一礼をした。


「では、帰りましょうか」


 そう言いながら差し出された手を取り、俺達は揃ってこの会場を後にして、屋敷へと戻るのであった。

この作品の気に入っていただけたら是非とも評価、ブックマークの方、よろしくお願いいたします。






前々から予告していた改稿の件ですが、本日改稿の方をいたしました。改稿した部分についてはサブタイトルの後ろに★マークを付けてあります。これで恐らくご指摘いただいていた違和感も消えるかと思われます。今後も随時、不自然な所は改稿していきたいと思っていますのでよろしくお願いします。

(この改稿部分も評判が悪ければ、前の物に戻すかもしれませんが……)


後、作者がこの作品の全てを見直す時間が無かったので、この改稿で前後が繋がらない部分が出てくるかもしれません。(一応はそのあたりも配慮はしているのですが……)なのでその部分をご指摘いただけたらその都度調整していこうと思っておりますのでよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ