105 舞踏会 前編
ちょっと身の回りが色々と忙しかったので短いです。申し訳ありません。
アリシアが屋敷から王宮に向かった後、俺もアリシアのエスコート役として舞踏会に参加する為に王宮に向かった。そして、王宮に到着すると別室へと案内される事になった。この部屋でアリシアを待て、という事なのだろう。
「この部屋で、暫くお待ちください」
そう言うと、この部屋まで案内してくれた王宮仕えの侍女は退出していく。
その後、しばらく部屋で待機していると、突如この部屋の扉がノックされた。そして、扉が開くと、そこから可憐なドレスを身に纏った一人の少女が現れた。
「お兄様、お待たせしました」
声の方を向くと、そこにいたのは舞踏会用のドレスを着たアリシアだった。彼女が今着ているのは白とピンクの二つの色を基調としたドレスだ。そのドレスの各所には可愛らしいフリルが付けられており、彼女の魅力を最大限に引き立てていた。イヤリングやネックレスといった装飾品も目立つ程ではないが、彼女がより映える様に洗練されている。そして一番目を引くのが、アリシアの黄金色の髪を束ねる様に結ばれた大きなピンク色のリボンだった。
また立ち振る舞いも恐らくは外だという事を意識しているのだろう。普段以上に、一つ一つの動作が優雅だった。
普段見ている彼女とはまた違った不思議な魅力が、今のアリシアにはあった。
そして、アリシアの着ているドレスの胸元には、一本の大きな剣とその周囲を取り囲む様に配置された七本の小さな剣が象られた黄金に輝く勲章が付けられている。これが今回彼女に授与されたというメルクリア神聖勲章なのだろう。
因みに後で聞いた話だが、このメルクリア神聖勲章のデザインは【謙譲の騎士】が使う神剣と七本の『光剣』がデザインのモチーフとなっているのだそうだ。
アリシアが来たという事は舞踏会がもうすぐ始まるという事だろう。
「もうすぐ始まるのか?」
「ええ。ではお兄様、行きましょう」
「ああ」
そして、俺とアリシアは揃って王宮内の舞踏会の会場まで向かった。
今回の舞踏会では、俺達は特別扱いで王の祝辞が終わった後に、王が直々にアリシアの事を紹介、それに合わせて入場する事になっている。
「此度は大変な国難であった。数百年振りに現れた神代の魔人の脅威、魔人と手を組んだ我が国の貴族による魔人達への内通とクーデター、我が国は今迄体験した事のない未曽有の脅威に晒されたと言っても過言ではないだろう。だが、我々はこの脅威に対し……………………」
舞踏会の会場内では、この国の国王であるエリアック王が長々と祝辞を述べている。この祝辞が終われば、俺達は会場の中に入る事になるだろう。
アリシアはこういった場に慣れているのだろうが、俺はこういう舞踏会に参加すること自体が初めてだ。戦いの前にある武者震いとはまた別種の緊張が俺の体を駆け巡っていた。
「お兄様、緊張しているのですか?」
「あ、ああ」
「大丈夫です。今は私が一緒にいます」
アリシアはそう言って俺の手を強く握りしめてくれた。そうすると不思議な事に俺の中にあった緊張感が徐々に薄れていくのを感じた。
「しかし、この未曾有の脅威を我々は退けることが出来た!! それも皆の尽力があったからである。そして、ここに我が国の英雄を紹介しよう!! エレイン公爵家令嬢にして、神聖騎士の一人、アリシア・エレイン公爵令嬢!!」
その声と共に会場内から大きな拍手の音が聞こえてくる。その直後、俺達の前の扉がゆっくりと開き始めた。どうやら俺達が会場内へと入る時が来た様だ。
「お兄様、行きましょう」
「あ、ああ」
俺達が舞踏会の会場の中へと入ると、会場内にいた貴族達全員の視線が俺達の方へと集中した。
その事に緊張度がまた上昇するのを感じながらも、何とか大きなミスをすることなく俺とアリシアは会場内を一歩、また一歩と進んで行く。
そして、俺達は二人揃ってエリアック王の元まで歩んでいく。その後、エリアック王の前まで到着すると彼は一度頷いた後、口を開いた。
「では、舞踏会の開始を宣言する!!」
そして、王の宣言とともに会場全体からの拍手がさらに大きいものとなる。ここに舞踏会が始まったのだった。
「お兄様、私と一曲踊っていただけませんか?」
舞踏会が始まってすぐ、アリシアはそう言いながら俺に手を差し出してきた。言葉通りこれはアリシアからのダンスの誘いだった。
「俺でいいのか?」
「ええ」
「……分かった」
そして、アリシアの誘いを受けた俺は差し出された手を取り、二人で会場の中央まで歩んでいくのだった。
活動報告で今後の更新に関する重要な事を書いているのでぜひ一度ご覧ください。(一応言っておくと、更新が停止するとかそういう類の話ではありません)
そして一読した後、それに関して意見を下されば、なおありがたいです。
※追記
やっぱり改稿した方が良いんじゃないの? という意見が出た為、改稿用の原稿を書き始めました。出来が良ければ差し替えるつもりなので、ご了承ください。




