102 舞踏会への誘い
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一週間前の自分ではこのような事になるとは想像もしていませんでした。これも皆さんの応援のおかげです、今後とも更新を続けていく予定なので応援よろしくお願いいたします!!
「うっ、はぁ……」
懐かしい夢を見た。あれはまだ俺が追放される前、リリアと出会った時の思い出だ。
リリアにあったのは一度だけだ。だが、リリアに出会ってから時折、彼女の笑顔が頭を過る事があった。あの時期に、俺に対等に接してくれた同年代の人はリリアだけだ。多分、あれが俺の淡い初恋だった。
しかし、そのすぐ後にリリアが一国の姫君で、更には神聖騎士の一人であることを知った。その事を知った俺はリリアの事を諦めるしかなかった。俺とリリアでは立場が違いすぎる、この恋が叶う事は無いと自分に言い聞かせたのだ。
そして、俺の中ではリリアとの出会い、そして初恋は完全に思い出へと変わっている。
「リリア……」
そんな彼女との思い出を夢で見る、それには何か意味があるのか、それとも何の意味もないのか、今の俺に分からなかった。
神代の魔人、【怠惰と傲慢の双つ魔王】フローラ・ラストとの戦いから五日が過ぎていた。俺はあの戦いで負った傷を癒すべく今迄休養を続けていた。そのおかげで切断された腕は治療が完了し、完全に元通りになっている。
アリシアも事件の後始末がある筈だったが、フローラとの戦いで負った傷を癒すという名目で、この屋敷で休養を続けている。
今、俺が使っている部屋はこの屋敷に来て最初に使っていた客間ではない。何時までもあの客間を使用している訳にはいかないので、前々から話が有った俺の部屋を用意してもらったのだ。因みに、この部屋はアリシアの部屋の隣だったりする。
また、腕の治療は昨日で完全に終了している。今日は何も予定が無い。その為、今日は何をして過ごそうかと思案していた、その時だった。
――――コンコン
「お兄様、いらっしゃいますか? 少しお話があるのですが」
扉を叩く音の直後に聞こえてきた声はアリシアのものだった。
「ああ、入ってきてもいいぞ」
「では失礼します」
そして、アリシアは俺の部屋に入ってくると、そのまま部屋に備え付けられたソファーに座った。俺もアリシアと向かい合う様にソファーに座る。
「今日はお兄様に少しご相談がありまして……」
「相談?」
「ええ、実は……」
王宮で事件の終息を祝して、今回の事件の功労者に対しての褒章式、そして舞踏会が数日後に開催されるらしい。その招待状がアリシアの元に届いたそうだ。
また、幸い王宮には大した被害は無かったようで式典を開くのには問題は無い様だ。
そして、俺の事を表に出すわけにはいかない為、表向きはアリシアが単独で今回の黒幕であったフローラを討伐したという事になっている。
つまり、俺達以外の人間にしてみれば、アリシアは今回の事件の解決の最大の功労者という事になるのだ。その為、アリシアは王宮で開かれる褒章式と舞踏会に参加しなければならないらしい。
「私としては複雑な気分なのですが……」
アリシアが言うには、今回の黒幕であったフローラを倒したのは自分ではない、自分が出来たのは援護だけ、止めを刺した訳ではないのに、自分だけが褒章式に参加するのはその成果を横から掠め取るようで気分が乗らない、出来る事なら辞退したかったとの事だ。
だが、それでも表向きは神代の魔人フローラを倒したのはアリシアという事になっている。そして、単独で神代の魔人、いや封印殿から七罪武具を奪い、取り込んだ新たな魔王を討つという過去に類を見ない功績を上げた以上、褒章を辞退するわけにもいかない。もし、辞退した場合、裏には何かあるのかもしれないと勘繰る者が現れる可能性は無いとは言えない。そして、そこから俺の事を知られるかもしれない。
だからこそ、アリシアに今回の褒章式を辞退するという選択は無かった。
因みに、今回の事件の最大の功労者であるアリシアには国からとある勲章を渡される予定になっているらしい。その勲章はこの国の建国の祖である嘗ての神聖騎士、クレア・メルクリアに準えて作られた、この国で最高位中の最高位の勲章である、メルクリア神聖勲章と呼ばれる物だという。
また、アリシア曰くこの勲章は王国史でも類を見ない程の功績を上げた者に送る為に作られたのだそうだ。だが、そのハードルがあまりにも高く、王国史を紐解いても過去この勲章を贈られたものはおらず、この勲章を贈られるのはアリシアが初めてとの事だった。
更に付け加えるなら、この国の祖となった神聖騎士クレア・メルクリアはアリシアと同じく謙譲の神剣を所有していた【謙譲の騎士】であるらしく、今代の【謙譲の騎士】であるアリシアは建国の祖の生まれ変わりとまで言われていた。そんなアリシアが嘗ての【謙譲の騎士】に準えた勲章を授与されるというのは、何というか不思議な縁を感じた。
「それで、なのですが、褒章式の後に王宮で開かれる舞踏会、そこでお兄様に私のエスコートをお願いしたいと思いまして」
「……エスコート?」
「ええ」
アリシアは、本来フローラに止めを刺した俺が褒章式に参加できないのは、やはり心の何処かでは納得がいかない、だからせめて舞踏会には参加してほしいとの事だった。
しかし、表向き、何の功績も残していない、今回の事件とは無関係という事になっている俺は舞踏会に参加する事は出来ない。
だが、アリシアのエスコート役という形でなら舞踏会に参加する事が出来ない事も無いだろう。
だが、そこには少し問題があった。
「だけど、本当に俺がエスコート役でいいのか?」
一応、俺は王立学園に通っていた時期に最低限の礼儀作法は習っている。だが、本当に最低限だけだ。完璧とは言い難いもしかしたら、アリシアに恥をかかせてしまうかもしれない。
「問題ありません。……それにお兄様以外にエスコートされたくないですから」
しかし、アリシアはそれでも構わないという。だが、それ以外にも問題がある。
「それに、舞踏会に着ていく服も無いし……」
「それも、ちゃんと用意させますので」
そうだ、よく考えればここは公爵家でアリシアは公爵令嬢、舞踏会に着ていく服を一着用意する程度、簡単にできるだろう。
「…………」
ここで、アリシアの提案を拒否する事は簡単だ。本音を言うならアリシアをちゃんとエスコートできる自信が無い。だが、正直ここまでお膳立てされれば簡単に拒否するのも気が引ける。
「それとも、私をエスコートするのはお嫌ですか?」
「うっ……」
悲しげな表情を浮かべるアリシアを見ると、俺は舞踏会に参加しないという選択を取る事は出来なかった。
「……分かった。その舞踏会、アリシアのエスコート役で参加するよ」
そして、俺が舞踏会に参加する事を告げた瞬間、アリシアの表情が一変し、喜びの表情へと変わった。
「本当ですか!? ありがとうございます!!」
歓喜の声を上げながら喜びの表情を浮かべるアリシアが俺の目には妙に可愛らしく映るのだった。
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