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短編集 冬花火

裁く人

作者: 春風 月葉

 その者は唯一にして無二の絶対の存在であった。

 世界の全てを善と悪に区別し、善なる者に救済を、悪なる者に裁きを与える法の化身とも呼ぶべき存在であった。

 その日の昼、彼は一人の老人に善悪の判定を下していた。

 その様子をみていた一人の子供が無邪気にみえる笑顔で彼に尋ねた。

 先程の老人はどちらだったのか?と。

 彼は答える。

 あの老人は善であったと。

 子は続けて尋ねる。

 そうか、先程の老人は善き人だったのか、ではあなたはどちらなのか?と。

 彼は子供に尋ね返した。

 どちらとはなにがか?と。

 子供は答える。

 あなたが善か悪かということだと。

 彼は少し考えると、知らぬと答えた。

 子はそうかとだけ言ってその場を走り去った。

 彼はその晩に昼間の老人とすれ違った。

 彼が善き人とした老人の手はトマトでも握り潰したかのように真っ赤だった。

 彼はその手の赤がトマトであるかを考えた。

 その手は少し錆びた鉄のような匂いがしていた。

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