<1>ホワイト企業に就職したい~<2>就職偏差値ランキングを調べる
何かが降ってきたので投下します
<1> ホワイト企業に就職したい
「――将来の夢は、女騎士になって王子様と結婚することです!」
と語って呆れられたのが十年前。
「――将来の夢は公務員になるかホワイト企業に就職して、まったりスローライフを送ることです!」
と語って呆れられたのが昨日。
この十年に何があったんだ、と父親には笑われたが、これは嘘偽りないオケアナの本心であった。
女子大生、オケアナ・オーテンバーはこの度就職活動をスタートする身である。ユグドラシア修道院大学で人文科学を学んできた凡庸な娘だが、こう見えて彼氏はいない。
というより、彼女もちのイケメンのオークの先輩に告白するという大失態をやらかし、サークルを微妙な空気にしてそのまま四年が経ったという間の悪い女なのであった。ちなみにバイト先のリザードマン男性も彼女もちで、同じミスを二度繰り返している。(父親には安心、安心と笑われているが、母親と妹には二十歳を超えたあたりから真顔で心配されている)
この間の悪さは、公務員試験の模試の結果にも響いていた。女騎士、D判定。国家公務員専門職でもC判定。
はっきり言って辛い評定であった。
「就職活動、しないとなー……ホワイト企業がいいなー……」
Xちゃんねる就活掲示板をぼんやりと眺めながら、オケアナはそんな言葉をこぼしていた。
<2> 就職偏差値ランキングを調べる
「ホワイト企業を探す方法は、まずはXちゃんねるの就職偏差値だよね!」
そう考えたオケアナは、細い眉をひそめながら、就職偏差値を目を皿のようにして眺めた。
【大陸暦79卒向け(総合職)就職偏差値ランキング】
70 →ユグドラシル銀行
=========== 最難関 ===========
69 →国際正教銀行 十字架総研
68 →王国政策投資銀行 大陸テレビ 欧亜不動産 十字架地所
67 →北証 十字架商事 出光テレビ 三大出版
66 →欧亜物産 帝都郵船 YBS
65 →フェアリー商事 YR帝北 医報堂 トルテ 商船欧亜 テレ帝
=========== 学歴不問で勝ち ===========
64 →帝都石油 共和通信 帝経 朝帝 YXエネ 天命堂 新帝鐵フェア金
63 →YR帝 ユグ急 京帝 ドラ急 北ガス 北魔 帝急不動産 センダ カントリー 十字架重工 エルフ硝子 YFE キョーワ化学
62 →帝都海上 農林信金 中魔 YRA フェアリー不動産 帝都建物 共和シェル 黄龍 十字架化学
61 →YR宮 大ガス 中帝 帝刻 帝燃 資本堂 華王 帝清製粉 アケボノ 帝産 十字架UFY信託 ドワーフ汽船 天岩戸フィルム フェアリー化学
60 →帝都郵便 帝都高速 YT トルテ通商 双帝 フェアリー魔工 帝揮 帝立 十字架魔機
―――――― アカデミア微勝ち、帝大宮大勝ち ――――――
59 →十字架帝都UFY銀行(OP) 帝都生命 地魔 魔源開発 NEXT中 YTTデータ 帝レ 天岩戸ゼロ ドワーフ重工 マツコ キーエッセンス カノン 欧亜フェアリー信託 王国薬品 十字架マテリアル
58 →FCBC YFC YKSY 王国生命 フェアリースリーエム 帝王魔工 王国総研(SE) NEXT帝宮 十字架倉庫 神宮製鋼 エルフ化成 欧亜化学 YDK
57 →はるか銀行(OP) 共和みらい生命 フェアリー生命 商工信金 YTT帝宮 王国不動産 私鉄下位 宮神高速 トルテ織機 YTTコム 天通(SE除く) 帝繊
56 →YR九州 共和魔工 古都魔工 公国製作 サイコン アッパレ 幻島 フェアリー金属鉱山 フェアリー倉庫 しんぽ生命
55 →ASDA銀行 帝立化成 帝都製紙 帝都板硝子 大陽帝酸 コダイ 十字架ガス化学 YKK エリュロン ハルカ トルテ製菓 ドワーフ組 ゴブリン建設 王国工務店 欧亜倉庫
――――― 帝大宮大微勝ち、修道地方勝ち、ギムナジウム大勝 ―――――
「うーん、やっぱり学歴の壁ってあるんだねえ……」
適当なことを呟くオケアナであったが、この手のデータは大抵は、『学歴の壁』が存在する前提で議論しているのでそのように感じるのである。実際、そのような壁が存在するかはさておいて、この時点でオケアナはいくつかの企業を絞りつつあった。
ブラック企業ランキングもしっかり調査することを忘れない。掲示板の人間は、こういった情報も有志がまとめているので分かりやすいものがあった。情報の真偽はともかく、情報に触れることは重要であった。
特にオケアナは無である。何の情報も手掛かりもないのである。
その段階では、掲示板のランキングなどを頼りにして何となくふわっとつかむのが一番早い方法であった。
「業界別にも偏差値ランキングがあるんだ……へえ……。とりあえず安定を目指すから、インフラ系がいいなあ……」
業界別にランキングが作ってあることも、オケアナにとっては十分手助けになっていた。何も知らないオケアナにとっては、『インフラはなくならない』とか『〇〇業界はブラック』とか、そういった表面上の知識しかない。業界から見ての企業の立ち位置も、彼女には全く分からないままであった。
そのため、こういったランキングはぱっと見の分かりやすさがあって、彼女にとってはいかにも重宝した。
こうして彼女は、貴重な四時間ほどをネットサーフィンに費やしたのであった。