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神の代行者 〜Peace illusion〜  作者: 伊東 晶
夏季休暇編
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第十四話

ようやく投稿できた……( ´Д`)=3

勤務が変わって夜勤を一ヶ月、また変わって日勤を二週間、からの早番という地獄で全く書けませんでした……。

 レストアが気絶したルティアを彼女の部屋に運びリビングに戻ると、反省会が終わったジャンとリオがラグナと共にトレーニングルームから戻ってきたところだった。


 レストアはそれを一瞥すると、大した興味を示すことなく近くのソファに腰掛け、図書館から借りてきた魔導書を開いた。


「おや……二人に対して何かリアクションは無いのかい?」


「別に何も。それに、リアクションはさっきやったし」


 明らかに面倒くさそうに父をあしらうレストア。その間も魔導書を読み続けている。


 しかし、「ああ」と忘れかけていた疑問を思い出して問う。


「なんで二人は親父のとこに来たんだ?」


 レストアの疑問は当然のものだ。

 首都スペルドはベルスティアの中心から東寄りに位置し、北西端に位置するカルムと遠く離れている。


 その理由は二つあるが、どちらも詳細を語ると長くなるため今回は割愛する。そのため理由の内容が、一つはベルスティアの成り立ちに関与していることと、もう一つはもしも北西部が陥落した際に関してであるということだけ紹介しておく。


 二人が誰かに師事するなら、カルムや二人の出身地のゲールから遠いスペルドを選ぶ必要がないのでは、とレストアは考えているのである。

 なにせ、二人はスペルドについてはさほど詳しいとは言えない。また、カルムではそこの住民たちと浅いとはいえ関わりがあるのに対し、スペルドはそういったものは全くない。そのため、わざわざこちらで師事する人物を探すというのは非効率的だと考えてもおかしくはないだろう。


 それに、どうやってラグナにたどり着き、そして彼から教えを乞おうとしたのかがわからないのだ。

 ラグナがジャン達を迎えに行っていたということは、遅くとも今日の朝まではスペルドに来ていたのだろうが、彼らは本来、カルムで鍛錬を続けているはずだった。つまり、スペルドで指導者を探す時間は無かったはずなのだ。


 そんな風に考えていると、疑問に答えたのはラグナだった。


「それに関しては、父さんの方から学院を通じて話を振ったんだよ」


「……つまり親父は俺のパーティのメンバーが、というより、そいつらがどれだけの実力を持ってるのかが気になった。んで、ジャンとリオの実力把握ついでに二人を指導することにした、って解釈であってるか?」


 ラグナの言葉から、彼が何を思って声をかけたのかを数秒間考えて、自分なりの答えを導き出すレストア。そしてそれは、ラグナの真意をほぼ捉えきっていた。

 そんな息子の鋭さにラグナは感心する。


「相変わらずの鋭さだね。ほとんどレストアの言ったとおりだよ。付け加えるなら、彼らも指導者を求めていたから指導することにした、ってことくらいかな」


 ちらりとジャンとリオを見ると、二人はコクリと頷く。どうやら、指導者が欲しかったのは本当のようだ。


「まあ、最悪手の空いてる先生に頼むのも良かったんだけどよ。二学期初めの学院序列戦とかのモロモロで忙しいらしい、ってのと、ちょうど声がかかったからな」


「あとは、リアとルアの強さに迫りたい、ってところかな。二人はラグナさんから色々指導してもらってたって言ってたから、ボク達も興味があって」


「ああ、なるほどな。新しく湧いた疑問が潰されてスッキリしたわ」


 指導者は学院の先生ではダメだったのだろうか、というレストアの思考を先読みしたかのように追加で説明するジャンとリオ。おかげで疑問を口にする前からそれが解消される。


「ま、お前らがそれでいいならいいさ。ただ、いずれ地獄見るハメになって後悔すると思うぞ」


 父を師とするレストアは彼の扱きの辛さをよく知っている。そのため、気休め程度の忠告だけしておく。


 しかし、どういった指導が待っているか知らない二人は、ただただ疑問符を浮かべるばかりだ。


 レストアはそんな二人の様子を一瞥するや否や興味を失い、すぐに魔導書に視線を戻してしまう。そして、魔導書を読みながら魔力制御まで始め、完全に自分の世界に入る。


 わざわざリビングで自分の世界に入るくらいなら自分の部屋で一人でやれば良さそうなものだが、彼は多少の雑音がないと集中ができないタイプの人間らしい。


 それをわかっている三人は適当に雑談を始める。


「そういえば、二人はレストアとルティアのパーティに入ったのはいつなんだい?」


「俺らが入ったのは中学の……一年の終わりッスね」


「その前に既にレイとサーシャ――セリファとサシュラルがパーティに入ってましたね」


「そうか。ちなみにサシュラルって子はどんな子なんだい?」


 ラグナの疑問にリオが答える。


「サーシャは天使族(アンジュ)で神の眷属で、天槍と雷を得意とする女子ですね」


「……なるほど。つまり、あの子のことか」


「サーシャを知ってるんスか?」


「『天空城』には、一人知り合いがいてね。あまり詳しいわけじゃないけど、神の眷属くらいなら把握してるよ」


「へぇ、珍しいですね。『天空城』と関わりのある人に会ったの初めてです」


「まあ、確かに珍しいだろうね。でも、軍に所属してると、結構いろんな人に会うんだよ。その中の一人に、天使族の知り合いがいてね。その人からいろいろと、ね」


「そうなんスか。俺ら、あんまサーシャに『天空城』のこととか聞いたことなかったな」


「そうだね。っていうか、なんとなくタブーな気がしてたのもあるし」


「ベルスティア出身じゃねぇヤツに出身地聞くのって、なんか勇気いるんだよな」


「こんなご時世だし仕方ないかもしれないね。込み入った事情があってベルスティアに来た、って人もそれなりにいるだろうし。案外、天使族とかにはそういう人はいなかったりするんだけどね。気になるなら、サシュラルちゃんに直接聞いてみたらどうかな?」


「あ〜、そうしてみるッス」


「話は変わるんですけど、ラグナさんの奥さんはいらっしゃらないんですか? 二人からはいるって聞いてたんですけど……」


「あ〜、フィーアのことか。ちょうど、レクト――レストアとルティアの弟の交流学院の付き添いで家を空けていてね。今は……『豊穣の郷(ほうじょうのさと)』・グランマーナにいるよ」


 グランマーナは、ベルスティアと同じ六大国の一つだ。『豊穣の郷』という別名がつくように、農業が盛んに行われている国である。


 ちなみに、六大国はどの国も別名がつけられており、それぞれその国の特色を表している。ベルスティアの場合、他国を圧倒する魔法力や魔法が国の発展に大きく関与していることから『魔導都市』の別名で呼ばれる。


 グランマーナでは農業が発展していると説明したが、それは国境付近の要塞都市やそのやや内側に多く、中心に近づくにつれて田園地帯は少なくなっていく。逆に、中心部は鉱山を抱えている都市が多数あり、その鉱物資源を利用した鉄工業が発達しているという二面性を持った国でもある。

 また、豊富な資源も相まってか鍛冶技術も六大国一位であり、高品質高性能な武器や防具を前線のベルスティアやヴァルトシルバに輸出することで、戦線を裏から支える貴重な国となっている。


「へぇ、交流学院……。俺たちも休みが明けて学院序列戦が終われば交流学院だな」


「そうだね。楽しみだけど、緊張もするよね」


「ああ。模擬戦もやるみてぇなこと言ってたし、この間に力付けとかねぇとな」


「うん」


「ははっ、気合が入っているようで何よりだよ。でも、今日はとりあえず休みだね。特にリオ、君は自分が思っている以上にダメージを受けているはずだからね」


「そうなんですか? 今のところは特に何もないですけど……」


「それって、俺が防御したのにリオが斬られたヤツと関係あるんスか?」


「うん、大ありだね。できれば、種明かしはルティアも来てから……っと、ちょうどいいね」


 そこでラグナは話を中断し、リビングの出入り口に視線を向ける。そこには既に、ルティアの気配を察知したレストアがいた。


「起きて大丈夫か?」


 扉が開かれると同時にレストアはルティアに問いかける。


「うん、大丈夫。ただ、魔法を使うのはシンドイかも。魔力の制御自体、うまくいかないんだよね」


「あれだけ派手に暴走させたら当然だな。今日は休んで、明日から頑張るしかない」


「それは兄さんもでしょ? 魔力の流れも魔力波も、全然安定してないの見ればわかるし。さっきは『俺はまだしも』なんて言ってたけど、兄さんのほうが限界に近いでしょ?」


「……お前、そこまでわかるのかよ」


「兄さんの指導のおかげだよ。そもそも、魔力波をわたしのに同調させてる時点で兄さんの魔力は暴走状態。しかもその上で暴走してる紫電を制御したんだし、兄さんには想像もつかないほど負荷がかかってたんじゃない?」


「想像もつかない、ってほどじゃないがな」


「さらに言えば、さっきまで魔力制御してたのって、無理やり魔力波を本来の波長に戻すためだったんじゃない?」


「……正解ですよっと」


 思いの外自分の限界を見抜かれていたことにレストアは驚きを隠せないでいた。そのため、最後は単調でぶっきらぼうな返事で会話を切ってしまう。


 会話が途切れたところで、ジャンとリオがいつものように二人をからかう。


「お前ら、ホント仲良いよな」


「やっぱり、シスコンにブラコンなんじゃない?」


「いや、ンなわけねーから」


「わたしもそこまではいってないと思うけどなぁ。兄妹なら普通じゃない?」


 そんな四人の様子を見ていたラグナは、いい頃合いだと会話に加わると同時に自分の話題を振る。


「父さんは、仲が良すぎると思うけれどね。いくら気心の知れた友人の前でとはいえ、二人の世界に入るんだから」


「「うぐっ……」」


「まあ、その話はどうでもいいけれどね。レストア、ルティア。二人にも聞いておいてもらいたい話があるんだ」


 軽い態度から一転。真剣な声音に変わるラグナの様子から、四人はすぐに気を引き締める。


「どんな話?」


 ルティアが代表してラグナに話の続きを促す。


「魔剣の秘奥、について」


 魔剣の『秘奥』という聞き慣れない言葉に、四人は首をかしげるのだった。

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