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神の代行者 〜Peace illusion〜  作者: 伊東 晶
戦火の予兆
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第四話

 活動報告に投稿ペースに関して載せておきました。気になる方はどうぞ。

 ベルスティアの首都、スペルド。王宮、謁見の間。

 そこには、ベルスティア国王と一人の若い女性がいた。


「なるほど。貴女自ら見定めたいと……」


「はい、自分勝手なことだとはわかっております。しかし、彼は怪しい……」


 この女性はどうやら、『彼』を国王に直接会わせるには危険なのでは、と言いたいようだ。


「まあ確かに、なぜこうも簡単に戦争やら魔物襲来やらを当てることができるのかは、わからんしな」


「ですから、もし敵国からの刺客なのであれば、直接お会いになるのは危険かと」


「……そうだな。今回は貴女に任せる」


「ありがたきお言葉」


 話はまとまり、やがて国王は謁見の間をあとにする。そして残された女性は謁見の間から出、開け放たれた廊下の窓から外へと飛び出す。


「さて……レストア君には何が見えているのか、気になるね。……っとそれよりも今は、援軍に行かねば」


 女性は、肩から先を炎を纏った翼へと変化させ、敵軍と戦闘しているであろう方角へと飛び去った。


 赤や青ではなく、あの龍と同じ『虹色』の火の粉を散らしながら。







 第一闘技場で行われている決勝戦。開始から5分が経とうとしていた。


「はあああぁぁぁぁぁっ!!」


「…………」


 試合は一方的。予想されていた通り、セリファの一方的な攻撃に対し、レストアは防戦一方だ。


 もともと、彼らの試合はこんな展開のものが多い。セリファは双剣の使い手で、レストアは刀剣だ。手数が違う。

 そのため、レストアはその手数に押されてしまい、自分のペースで試合を進ませることができない。基本的に防戦に回る彼がそうなのだ。他の人間であれば、試合がどうなるかは想像に難くない。


「相変わらず、うぜぇ手数だこと……!」


 彼女の場合、手数と速度で勝負してくる。つまりルティアとは違い、受け流しても大した隙は生まれない。それどころか、いくら受け流しても、もう片手の攻撃が待っている。つまり、ジリ貧である。


「手加減はしないって、言ったよね?」


「そういう事じゃあ、ねぇんだがな……」


 さすがのレストアでも、右手を失った状態ではまともに相手はできない。龍も召喚されているのだが、フィールドの上空を飛び回るばかり。攻撃など一切しない。

 今回の場合、レストアがタイマンでやりたいから、と龍に言っていたからだが、右手が無いのがここまで不利だとは思っていなかったようである。


「そろそろ、終わりにしよっか?」


「させるかよ」


 セリファの周りに魔力が集まり、術式が完成する。レストアの周りから隙間なく、レーザーが放たれる。


「ナメてんじゃねぇよ……!」


 そして計百以上の光条が直撃し、凄まじい爆発が起こる。更に、同時に完成していた術式による爆発が連鎖的に巻き起こる。

 爆炎が落ち着き視界がクリアになると、レストアがいたところには、制服か何かが爆発の影響で燃えたのだろう、僅かに火が残っていた。しかし、それ以外は何もない。

 では、レストアはどこにいったのか?その答えは簡単だ。


「光子爆破……か。やっぱナメてんな、お前」


 姿がないにも関わらず、レストアの声が響く。そして小さな火は燃え盛り、巨大な炎になる。そして、それは縦にだけではなく、横へも広がっていく。


「……コレ使うのは初めてだっけな。よく見とけよ……」


 炎はやがてフィールド全体を覆っていく。おそらく、観戦席側でも相当な熱を感じるだろう。セリファはその中にいるのだ。滝のように汗を流し始める。


「フィールド魔法『煉獄』!!」


 やがてフィールドが完全に炎に包まれ、赤一色に染まる。


「んじゃ、おれのターンな」




 セリファは焦った。あの魔法でレストアを捉え、試合は決まったと思ってしまった。

 あの瞬間、セリファは全てが後手に回ってしまったのだ。


「せいっ!!」


「っ……ぐぅ!」


 まさかレストアが自然化できるとは思っていなかったのだ。


「ふん!」


「くっ……!」


 フィールドが炎に包まれ、第一闘技場そのものが自分の敵になった。逃げ場は無く、追い詰めていた立場が逆転し、追い詰められる。


「へへへいっ!!」


「うあぁぁ……っ!」


 炎に紛れ、セリファに攻撃を浴びせていく。焦ったセリファにはそれを受けることしかできず、攻撃によるダメージと灼熱の炎に体力を奪われていく。

 しかし、セリファはようやく冷静さを取り戻した。そして、この状況を打開する策も見つけた。


 フィールド魔法の弱点『核』を破壊すれば……。




 レストアはどうにかして、有利な状態へと持ち込むことができた。セリファに見せていなかった自然化が、上手く機能したようだ。


(とはいえ、コイツも馬鹿じゃねぇ。いつ冷静さをとりもどすやら)


 レストアは誰よりもセリファを知っている。だからこそ、自然化を隠していた。そして、セリファの『弱点』をつくために、この戦いに勝つために策を巡らせる。


(そろそろ術式破壊して、強引にペースを取り戻そうとする。だったら……)


 レストアの予想通り、彼の変幻自在な攻撃を受けながらも、術式を完成させようとするセリファ。しかし、その作成速度が異様に遅い。

 そしてどうにか核を穿つ。途端に炎は消え去り、周囲の温度も戻っていく。


「随分好き放題してくれたわね……。次はこっちか」


「お前の番はもうねぇよ」


 次はこっちからいかせてもらう、とでも言おうとしたのだろう。しかしレストアはその言葉を遮り、斬撃を浴びせる。

 だが、近接戦闘ではやはりセリファのほうが上手だ。だんだんレストアがのまれていく。


 セリファの右手の斬撃を流し、左手の斬撃は避ける。あるいはその逆を繰り返す。

 どの斬撃も恐ろしく速く、鋭い。しかし、レストアには雷撃術式による神経伝達高速化と『眼』がある。『眼』の力によって、『白』いところがわかる。つまり、避ける場合はそこに避ければ比較的安全というわけだ。

 レストアが未だに致命的な一撃を受けていないのは、やはり『眼』によるところが大きい。


「お前ってさ、やっぱ近接戦中に魔法使うんは苦手みたいだな」


「な……」


 致命的な一撃を受けていないのは、『眼』だけではない。セリファが魔法を使うのが苦手なのもある。逆に、それができていれば、レストアですら相手にならないだろう。だからこそ、その弱みに付け入ることにした。


「『スパークジャベリン』」


「くっ!」


 レストアを再び追い詰めようとしていた彼女に、雷でできた八本の槍が襲いかかる。しかし、彼女の双剣を前に全て撃墜される。

 だが、その間はレストアにとってはただの的だ。容赦なく斬っていく。そして更に、魔法を織り交ぜていく。


「お前、そろそろヤバイんじゃねぇか!?」


「そっちだって限界のくせに!」


 まさか、とレストアは思う。彼女は自分にとって最強の敵だ。ならば、それを降すのに限界はあってないようなものだ、と。

 斬撃と斬撃。ぶつかり合い、刃から火花が散る。レストアは手数を補おうと、彼が扱える最大量の術式で魔法を放つ。


 対してセリファは、己が剣技で全てを弾く。極限まで研ぎ澄まされた感覚は、彼の攻撃が何処に放たれるか、手に取るようにしてわかる。故に、剣を振るう。


 その戦いの全てを理解できたのは、上空を舞う龍のみであった。




 もうどれだけ経ったか。もはや両者は力尽き、地に伏せていた。

 フィールドはあちこちにクレーターができ、焼けただれ、しかし気温は上着が欲しいほどに低い。剣の斬れ味は無いに等しく、刃こぼれを通り越し、もはや使用不可能なまでに消耗している。

 彼らの試合がどれだけ激しかったか、言うまでもないだろう。


 ちなみに、闘技場の気温は一定に保たれている。そのときの季節にもよるが、大体15〜20℃程度だ。


 結局、ほぼ同時に力尽きたため、引き分けという結果になった。


「……あ……ぁ、勝てな……かったなぁ……」


「ハァ………ハァ………うぅ、疲れた……」


 いつの間にか授業時間を過ぎていた。しかし、二人が繰り広げる熱戦から目が離せなかったのだろう、生徒はほとんど残っていた。


「よー、生きてっか〜?」


「生きてても死んでそうだね……」


 などとちゃっかり酷いことを言いながら、レストアとセリファのもとに来るジャンとリオ。


「あ〜……立てねぇ。ジャン、頼む……」


「わーったよ。んじゃ抱っこか?おんぶか?それともおひ……」


「おんぶでいいよっ!」


 ジャンが嫌な笑みを浮かべて言おうとした言葉を大声で遮りながら言うレストア。これにはセリファ以外、苦笑してしまう。


「レイは、私がおぶってこうか?」


「あ、うん。……ごめんね、ルア」


「気にしないでよ」




 二人をジャンとルティアがおぶって教室まで行く。

 教室には既に、魔術の授業を終えた生徒達と担任の先生がいた。

 すぐにホームルームが始まり、日程連絡や授業の反省などをする。いつもと何ら変わりのないホームルームだ。

 最後に先生からの話があり、それが終わりレストア達が帰ろうとした時だった。


「あ、そうだ。レストア、ルティア、セリファ、ジャン、リオ、サシュラル、来てくれ」


「……え?俺ら何かやらかしたか?」


「そんなことないと思うけど……」


「ま、まぁいこうよ」


「そうね」


 いきなり呼ばれ、困惑しながら担任のもとへいく。

 どんな話なのか予想がつかず不安になっていると、担任は手紙を取り出す。


「王城からだ。内容は、明日王城に来てほしい、との事だ。既に宿は取っているらしい」


 いきなり王城に来いと言われた。ますます困惑してしまう。


「……まあ、お前達が困惑するのも分かる。だが、おそらく今回までの件についてだろう」


 そこでようやく察しがつく。レストアが予測することで何度も助かってきたためそれを讃えたい、などといった趣旨だろうか。


「なるほど、わかりました」


「そうか、一旦家に戻ったら、すぐに準備をして学院に戻ってきてくれ。ここからスペルドまで転移させる」


「え?でも俺も転移魔法なら使えますが……」


「こっちで送らないと、お前たちが本当にスペルドまで転移したか分からないだろう。……そういうことだ」


「そうですね」


 とりあえず一旦家へ帰り、準備をすることにするレストア達。


 その後彼らはスペルドに転移するのだった。







「今回の襲撃戦、これで終わるのでしょうか……」


「……多分、終わらないだろう。『彼』からの文書には、もう一つ大きな戦争を予定しているだろう、と書いてあったからな」


「そうですか……」


 ベルスティアの国境近く。数万の兵士がいる中、ある二人が話をしていた。つい先程、敵国『イブリス』からの襲撃を退けたところだ。

 幸い、レストアの予言があったために無事だったが、もし遅れていれば近くの村は全て壊滅していただろう。それだけの規模の襲撃だった。


「さて、後処理は任せるよ。あたしは、明日予定があるのでね」


「え、あ、そうですか」


「そんじゃ、じゃなら!」


 そう言うと、女性は炎を纏った翼を顕現させ、スペルドへと飛び去ってしまった。

 残された男性兵は、ため息をつきながら兵士たちに指示していくのだった。

 流石に戦闘シーンが酷すぎたと思います。10で表すと、8〜9は低評価なんじゃないかな……。

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