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BELIEVE STORY   作者: ずのり。
7/7

07 あの日

大人になるほど、踏み出す一歩が重くなる気がする。

私は、過去の悲しい話をほとんどしたことがない。と、思う。理由は単純で、話したところでその過去が消えることはないからだ。無意識的に、明るく楽しい場でいたかったし、そもそもどこかで諦めもあったのかもしれない。子供であっても、顔色をうかがい、嘘をつくことだってある。今、伝に伝えようとしている私の家族の話だって、正直話すことに抵抗がある。伝の困る顔、哀れに思われる感情を拾いたくはない。


伝に、「聞いてほしい。」と伝えてから数分の静寂が流れている。


でも、どうしても答えが出せない現状が苦しいんだ・・・。

自分のことだったら耐えられるし、楽観的に考えられるが、人のこと、特に身内のこととなると、わからないことが当然とは思えず、虚しさが増幅されてしまう。無条件にあると感じていた愛の行方を確かめたかったからだろう。


話すタイミングが中々見つけられない。急かさないのは優しさかな?と感じつつ伝の方を見つめる。伝は腕を組みながら貧乏ゆすりをしている。・・・違った!多分これ、私より緊張しているよ!

と察すると言葉が滑り出す。


「伝は確か、みんながいなくなった日は、朝から一人だったんだよね?」

「そうだな。寝坊していて、親はもう仕事に行ったんだと思っていたけど、学校に行ってみおに会えた日の夜も、帰ってこないから、少しずつ実感したんだよな。」

「そう。寂しかったね今まで・・・。私はね、あの日、朝からお母さんもお父さんも居たの。妹のゆきは、起きたころにはもう陸上部の朝練に出かけていたの。」


ここまでは序章で、私を未だ苦しませる内容も伝えてみる。


「伝と会えたあの日、一番つらかったのは、あなたと別れて、安心できるはずの家に着いてからだったの。学校であんな話があって、疑心半疑でいた中で、玄関に入ると、怒鳴り声が聞こえていたの。お母さんとお父さんのものだってわかるのに、時間がかかった。だって、伝も知ってるでしょ?あの二人、娘の私が言うのも恥ずかしいけど、すごく仲が良かったから。」


「俺の家族も含めて一緒にBBQとか旅行にも行ったもんな。懐かしい!」


と、思い出をかみしめている伝を横目に、少し息を整える。

ぁぁ、思い出せてしまう。今まで開けずにとっておいた記憶だから、外気に触れることもなく鮮度を保っているみたい。こんなに腐った話なのに、なんだか皮肉ね。


「私は、子供ながらに察したの。よくないことが起きているって。何も悪いことはしていないのに、隠れたの。必死に息を殺してトイレに籠ったの。二人とも私には気がついていなかった。玄関よりも両親との距離が近づいていたから、内容が鮮明に聞こえちゃったの。君がそんな浮気者だとは思わなかった。今まで父さんたちをだましていたのかって。みおとゆきに言えるのかって。」


「・・・。」


うなだれた伝から視線をそらし、テーブルに置いてある木のコースターに目を移す。無心で何かを見ている方が心が落ち着く気がする。さらに続ける。


「私たちの安否を気にするあまり、お母さん、自分の携帯電話をお父さんに渡して学校に電話させてる間に、近所のおばさんに状況を聴きに行ったんだって。相変わらず行動力がすごいよね。でも、それだけ必死に行動していたのに、私たちも知らない男の人から連絡が来ていて、そこでお父さんは見ちゃったみたい。君の家族も消えていたら一緒になれるチャンスだね(笑)っていうメールを。」


自分でも驚くほど流暢に言葉が出てくる。

今までこういった話をしてこなかった分、止め方もわからないんだろうと冷静な自分にも驚いた。


「で、でもまだ、今のでそうと決まったわけでは、ないんじゃないか?」

と伝は伝えてくれるが、私は首を振る。知っているからだ。私に愛していると言ってくれた母親が、その事実を否定しなかったからだ。はっきりものをいうお母さんが否定しないということは事実であると。


「当時の私は、全容を把握することはできなかったけど、いつもとは違う雰囲気を察知していたの。子供は、やっぱり、わかるんだよね。感情の色がさ。だから私はそれが怖くて、すすり泣くことしかできなかった。聞こえたんだろうね。怒鳴り声がやんで、今度は足音が近づいてきた。扉が開いて、光に照らされて、今まで暗闇にいたことに気が付いたの。その時、光が怖いって初めて思った。目が慣れてくると、二人の顔があったんだけど、一瞬だけね、知らない二人に見えたの。だけどすぐに表情が戻って「おかえりみお!」「いてくれてよかった!!」と伝えてくれたの。順番に抱きしめてくれたんだけど、その時のぬくもり?とか感情は全く覚えていないんだよね。私も含めて三人、誰も何も言わないの。今思い返してみても、一瞬だけ他人みたいだった。可笑しいね。家族なのにね。そしたらね、ただいまー!!ってゆきが帰ってきたの。もう私たち姉妹どれだけタイミングがわるいのーって感じ!」


おどけてみせるが、伝は笑わない。


「で、あの子が家に帰ってきた瞬間に、いつの間にか持っていた端末が同時に鳴り響いて、告げたの。」


お前たちの中で生き残るべきなのはだれか?って。

その先の可能性が、自身によって数多に変動すると知ってしまったからかもね。

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