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BELIEVE STORY   作者: ずのり。
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03 恐れた決意 (伝side)

俺はあれから魅陽(みお)と別れて家に帰り、今は布団にうつ伏せになって状況を整理している。

まず、とんでもないことになっているらしいこの世界と対話する。

そのための代表者を決める内容が明日に伝えられること。

正直、言葉の意味は分かるけど頭で理解することができない。


一番訳がわからないのは、自分がこの場にいること。

監視者とやらがいうには、何かしらの強い意志を持っていないものは消えるらしい。

実際に俺の友達や親も消えている。

俺は自分自身が嫌いだ。

こんな状況なのに明日の学校がなくなったこと、これから親にうるさく言われないことに対して嬉しく思ってしまう。消えるべきなんだ。

他にもたくさんある。

俺を消すべき理由が、他に……も…………。


彼は想像以上に体力的、そして精神的に疲れきっていた。真っ暗で以前より静寂なこの空間で、一人という(むな)しさを確かに知った。


夢を見た。

暗闇に淡い光が射し込み、一人の少女らしき姿がみえる。その姿は徐々に形を帯びる。

背丈は小柄で、くりんとした瞳。クルミを食べるリスのようにふっくらした頬、桜のような鮮やかなピンクを帯びたショートの髪が揺れている……。

魅陽がいた。「うぅ……」彼女は泣いていた。

いつだったか、見たことがある。

あの時はどうしたっけ?元気な彼女には不似合いな涙を止めてあげたい。

俺にはなにができる?出来ることをすべて集めて、笑わせたい。

すると、まるで察したかのように、魅陽?が話始めた。「無理だよ。」鼻をすすり、途切れ途切れ必死に訴えかける彼女はこう続けた。

「何でもっと早く来てくれなかったの?無理だよ無理。そんな(でん)になんか私はもちろん誰だって救えるわけないよ。」


「___________!?」

彼は後悔していた。今朝寝坊し、彼女が一人泣いていたとき一緒にいられなかったことを。

等の本人に無理だと言われれば反論などできるはずもない。


……………………沈黙。


なにか言わなければ、と言葉を探っていると

「ドドドド」大地も空もない、真っ白だけの空間が俺と魅陽を引き剥がすように二つに裂けた。

「まって!!」彼の願いも虚しく

「ズドズド」徐々に遠くなり、ついには少女が誰なのかわからぬほどになった。

と、同時に「ドゴンッ」突然体に衝撃が走った。


「いってーー!ってそんな場合じゃねぇ。」

彼は辺りを見渡した。

左、使いもしない勉強机。

右、お気に入りの歌手のポスター。

下、フワフワの毛布。

上、特になし。間違いなく俺の部屋だ。

そして夢を見ていたことを知る。

「過去5本の指に入るくらいのサイテーな夢だ。」

彼は安堵とも嘆きとも似つかない表情で振り返った。


「でも、やけにリアルで痛いとこつかれたな。

無理……か。もし、あのとき待ってくれていたとしたら俺はどうしたんだろうな。」


「ドドドド」我にかえると、地面が身震いをしていることに気が付く。

刹那、太陽でも落ちてきたかと思うくらいの白い強烈な光に包まれ、なにも見えなくなった。

「あれ?なんだかこの表現って聞いたことあるような気が……。」

そして、「バチッ。キーーーーーン。」

空気が破裂したような音が体に入り込んでは抜けるのを繰り返していた。

「やっぱりこれって。」

先ほどの光と揺れと音がなかったかのように静寂になると、彼の予想通り監視者が語りかけてきた。


「やぁ、僕だよ、監視者だよ。おはよう。」

え?俺は耳を疑った。口調はチャーミングで

声は小学一年生の男の子と言われても違和感のないほど高く、甘ったるいもの。にも関わらず、落ち着いていて、どこか威厳があったからだ。

俺の気になっていることが分かるのか、監視者は話始めた。「朝と夜、交代しながら監視してるんだ。

流石にあれだもん、やってらんないよ、そんなずっとはさ。だから前、君らに語りかけたのはもう一人の方ってこと、だよ。うん、分かった?本題いっちゃっていいかな?」


「あぁ、うん、おっけ、よろしくお願いします。」

俺は敬語を使うかタメ口使うかしゃべる直前まで迷った結果両方ともでてしまった。

学校では監視者との話し方なんて習うわけもないから、しゃーない俺、ドンマイ。


そんな俺を見て苦笑した監視者は説明し始めた。

「まず、代表者を決めるには、第一次予選。第二次予選。決勝トーナメント。といった順番があるんだ。

もちろん、どこかで負けたらそこで修了だからね。

みんなが一番気になってると思う勝敗の内容は、

戦いごとに決められているお題をクリアするか、言論によって心に変化を与えるかだよ。」


俺は内容を整理するのはワリと得意な方なんだけど、無理!

「ちょっと待って、もっと具体的に。言論で心に変化?どういうこと??」


「代表者は世界と対話するって覚えてる?

そして候補で残っている君達には何かしらの強い意志がある。ようは、その意志と意志とのぶつかり合いだね。言論っていう形で意志を表して、相手の意志を曲げた方が勝者なんだ。けどもちろん、言葉にすることが苦手な人もいるよね。だからこそのお題。言葉だけではない、時には行動も必要になってくるのさ。

まぁ、わかんないことだらけだろうけど詳しくはこの端末に聞いてね。

あぁ、いい忘れていたけど、負けた時点で消えるからね。その人をどうするかも、代表者と世界が対話して決めるからよろしく。んじゃ、第一次予選開始♪」

まるで遊園地に初めてきた子供のようにはっちゃけた声がやむと同時に

「ボワンッ」どこからか端末が現れた。

「……スゲェ!自分のプロフィールがのってる。候補番号、7776……なんだろ、この、ものすごいもどかしい気持ち。他には名前に、誕生日に、年齢に、ん?

ハテナの項目があるけど、えーっと、ヴぇッ!?」

やべ、いつものでちゃった


「意志の項目にハテナがあるけどいいの?

なんのためにここにいるかがわからんやん。自分で見つけろってことか!」


不安だらけの彼は、せめてポジティブに考えようとする。


「まずは戦いになれよう!めちゃくちゃ弱そうな人見つけて挑んでみるかな。」


負けたら消える。その言葉を考えないように彼は

支度をする。


「いってきまーーーーーす!!」

誰もいない家に別れを告げる彼の声が、何重にもこだました。

「びびってやんのー笑」

自らの震えた弱々しい声を馬鹿にしながら

マイホームをあとにした。

同じく震えた足を一歩一歩前に。

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