新しい力Ⅰ
修行開始から早くも一週間が経過していた。
その間四人は二人一組に別れ、それぞれが別の戦闘を行っていた。
ナナとカズの二人はマールから少し離れたアンクル平野でフィールドモンスターとの戦闘。
「カズさん!法撃いけます!」
「よし!」
カズがモンスターから距離をとる。
ナナが詠唱を終え、魔法を放つ。
「サンダースコール!」
複数のモンスターが被弾し消滅した。
「よし、いいぞ!」
カズが残ったモンスターに止めを刺す。
「やりましたね!カズさん!」
「ああ。お、ちょうどレベルが上がった。」
「わあっ!おめでとうございます!」
「これで62か。・・・ん?」
「どうしました?」
「・・・・・・・・。」
「カズさん・・・?」
「いや、なんでもない。そろそろ日も暮れそうだな、村に戻ろう。」
「そうですね!今日はモンブランの気分ですー!」
「おいおい、まだケーキ食べるのか・・・。」
四人はカルカロスで夕食をとっていた。
しかし、食べ終わるとすぐにハヤトは立ち上がる。
「さて、僕たちもそろそろ狩りに行こうか。」
「えー、ハヤトさんたち、もう行っちゃうんですか・・・。」
「うふふ・・・私たちは夜が本番なのよ。」
「な!何ですかその言い方はー!!」
「さ、ふざけてないで行くよ、カエデ。」
「ほーい。」
「ぶーぶー!」
二人は村の外へ向かった。
「おい、ナナ。」
「ん?どうしたんです?カズさん。」
「あの二人、どんな戦いをしてるんだろうな。」
「ほんとですねぇ~、一度見てみたいです!」
「・・・・・言ったな?」
「・・・・・へ?」
「ハヤト!今よ!」
「了解!!」
一瞬の隙を突いてハヤトがモンスターの懐に潜り込む。
そのまま渾身の一突きを放つ。
「よし、これで30匹!」
「ふぅ・・・順調ね。」
「この辺のモンスターは大体倒したね。」
「そうね、リポップに時間もあるし、少し休憩しましょう。」
「そうだね。」
二人は近くの大きな木の根元に座る。
「よし、うまくいってるな。」
「カ、カズさんこれは・・・?」
「静かに。これは俺が新しく覚えたスキル、『黒衣』だよ。」
「新しい、スキル・・・?」
「ああ。さっきレベル上がったときにな。このスキルは対象のプレイヤーを透明化するものなんだ。俺の今のスキルレベルだと自分ともう一人くらいが限界だがな。」
「そうだったんですか。」
「にしても、二人の戦い方を見て参考に出来ればと思っていたんだが、あいにく倒しきった後みたいだな。」
「少し残念です。・・・・それに・・・。」
「ああ、かなりくっついて話しているな。」
「もう!考えないようにしてたのに!!」
「しっ!見つかるだろ。」
「・・・!すいません・・・。」
「さて、立ち聞きするのも気分悪いし、そろそろ戻るか。」
「・・・そうですね・・・。」
二人が立ち去ろうとしたとき、ふいにハヤトが口を開いた。
「なぁ、カエデ・・・。」
「ん?どうしたの?」
「この前は、その、悪かったよ。」
「あら、ちゃんと謝るのね。」
「そ、そりゃあ・・・。」
「私、ムーンライト・バタフライ・レイクが大好きだった。」
「・・・。」
「正直、『月光蝶の湖』なんて、ちょっと恥ずかしい名前だなーとか思ってたけど。」
「え、僕は結構好きだったんだけど・・・。」
「あら、ごめんなさい。でも、私、あのギルドが大好きだったわ。」
「ああ、僕だってそうだよ。」
「ハヤトさんがギルドに・・・?」
「そうみたいだな。俺も初耳だ。」
二人は帰るタイミングを失ってしまった。
それに、少し気になってしまったのだ。
「だからこそ、僕はグリモンが許せない。」
「ハヤト・・・。」
「僕たちのギルドマスターを、ガネーシャにあんなひどいことをしたグリモンを・・・。」
「・・・・・。」
「な、なんだか聞いちゃいけないような話ですね・・・。」
「あ、ああ・・・ちょっとこれはな・・・。」
二人はなんとなく申し訳ない気分になっていた。
ゲームの世界では、リアルの話や個人の過去を詮索するのはマナー違反、というのが暗黙のルールとなっているのだ。
「・・・・えっ?」
「ん、どうした?ナナ。」
「あ、いや・・・今一瞬カエデさんがこっちを見たような・・・。」
「そんなばかな・・・。」
「そ、そうですよね。」
「そんな話よりもハヤト、ナナちゃんのことはどう思っているの?」
「んなっっ!?」
「おい!ナナ静かに!」
「はっ!・・・。」
カエデはいやらしく笑った。
「カ、カズさん!カエデさんこっちに気づいてますって!」
「まさかそんなことがあるとは・・・。まぁ、ここはハヤトの回答を聞いてみようじゃないか。」
「い、いやぁああ・・・・・。」
「え?ナナ?」
「ええ、そうよ。ナナちゃんの事、どう思ってるの?」
「どうって・・・そりゃあナナには期待しているよ。」
「期待?」
「うん。ナナは僕たちの中で一番頑張り屋だからね、きっと大変な思いとかしてると思うけどそれを顔にも出さないし、いつも周りを気遣っているしね。」
「お、おい・・・ナナ。」
「は、はいぃぃ・・・・。」
「顔!顔が異常なほど赤いぞ!」
「そ、そんなことないれふ・・・。」
「いやいや、やばいって・・・。」
「・・・・これ以上はナナちゃんの体力がもたないわね・・・。」
「ん?カエデ、何か言った?」
「い、いえ。あ!やっとモンスターのリポップが始まったわ。」
「よし、もう一狩りするか。」
二人はモンスターの元へと走っていった。
「ナナ?おい、ナナ?」
「も、もぅ~ハヤトさんってばぁ・・・えへへぇ・・・・。」
「・・・こりゃだめだな。とりあえず村に戻ろう。」
「・・・・えへへへぇ・・・・。」
その後カルカロスに着いたものの、ナナが完全に骨抜きになってしまったため、
カズはナナの看病(?)をする羽目になったのであった。
「おっはようございまーっす!」
「おはよう、ナナ。今日はずいぶんと元気だね。」
「はい!見てて下さいハヤトさん!私はやりますよぉー!!」
「え?あ、うん。・・・頑張って。」
「はい!!」
ナナは颯爽と宿を出て行く。
「なあ、カズ。ナナに何かあったの?」
「ん?いやー、なんというか・・・あれだよ。」
「あれ?あれって何?」
「まぁ、気にせずそっちも頑張ってくれ。」
「あ、うん。」
カエデは一人笑いを堪えていた。
「さて、夜までどうしようかな。」
「そうね、できるだけ夜までは体力を温存しておかないと。」
「そうだね。簡単な依頼クエとかないかな。」
「この村にはあまり期待できそうにないわね。」
「・・・だよね。」
「ま、このゲームの時間は現実時間より圧倒的に早いから、そんなに退屈するほどでもないんだけれどね。」
「そうだ、まだちゃんとこの村見てなかったし、行ってこようかな。」
「あら、私は置いてけぼりなの?」
「いや、そんなことはないです・・・。」
「よろしい。ついでになんか奢んなさいよ。」
「・・・それは脅迫というやつでは・・・?」
「さ!そうと決まればさっさと行くわよ!」
「・・・はーい。」
マールの村は、村というだけあってそれほど大きくない。
宿も村に一つしかなく、他には小さなショップがいくつか並んでいるくらいだ。
「なんだかのんびりした村ね。」
「そうだね、穏やかで居心地がいいところだね。」
「私は立派な武器屋を見たかったのだけど。」
「いや、村だからねここ・・・。それこそクランにならあるんじゃないかな。」
「えーじゃあ早く行きましょうよー。」
「もう少し力を付けないと。エターナルスノウは推奨レベル65超えだし。」
「65かぁー。ちなみにハヤトは今いくつくらいなの?」
「僕は昨日でやっと73ってところかな。」
「あら、結構いいペースね。」
「カエデは?」
「私は75。ここら辺から上がりづらくなってきたわ。」
「そうなんだ。とりあえず、カエデは目標達成だね。」
「そうね、そろそろ新しい段階へ進むべきかしら。」
「新しい段階?」
「・・・まぁ私に任せておきなさい。」
「だ、大丈夫なのかな・・・。」
その日の夕方。
「ナナちゃん、レベルは今どれくらい?」
「え?あ、えっと、56です。」
「ふむふむ、56か。カズは?」
「俺か?俺は62だよ。」
「ふむふむ。」
「カ、カエデ?どうしたのさ。」
「よし、ここから編成を変えるわよ!」
「え、え?」
「わあ!新しいパーティーです!」
「確かに、他の人との連携もできるようにしておいて損はないな。」
「そういうこと!」
「それで、どんな編成でいくの?」
「それはね・・・こういうことよ!」
カエデがカズの腕に抱きつく。
一瞬の沈黙。
「えっと、つまり俺とカエデってことなのか?」
「そういうこと!そしてそっちはハヤトとナナちゃんね。」
「○△×○□♀!!!」
「ナナが奇声を上げてるんだが・・・。」
「ま、そういうことだから!それと、これからは二組とも夜狩りに行くから!」
「夜行性モンスターと戦うってこと?相手のレベルは60超えてるのに、まだ危険じゃ・・・?」
「そこはハヤトが守ってあげなさいよ。フロエはただでさえ体力少ないんだから。」
「わ、わかったよ・・・。」
「わ、わた・・・わたしとハヤ・・・ハヤ・・・ハヤトさん・・・ハヤトさん・・・。」
「カエデ、ナナがやっぱりちょっとおかしくなってるんだが・・・。」
「・・・あそこまでわかりやすいのにハヤトって・・・。」
「え?なに?」
「いえ、なんでもないわ・・・。とにかく、今日は二人とも疲れてると思うから、ご飯食べて休みましょう。」
「そうだな、それがいい。ナナのためにも・・・。」
「ハっ・・・ハヤ・・・ハヤトさんと・・・ハ・・・っ!」




