親友の心、友の涙
「・・・・・・え?」
「・・・・。」
「ちょ、ちょっと・・・・冗談やめなさいよ・・・タケルは今どこに・・・」
「死んでしまったんだよ!!」
「!?」
「・・・ご、ごめん・・・。」
「・・・・・本当なの・・・?」
「・・・本当だ。」
「そ、そんな・・・・どうして・・・・。」
視界が歪む。
頭が真っ白になる。
呼吸のリズムが狂う。
カエデは泣いていた。
わけもわからず、ただひたすら涙が流れた。
タケルとは深い繋がりがあったわけじゃない。
最初にハヤトと一緒にいたのを見てからは、一度も会っていなかった。
それでも、涙が流れた。
そういえば、私初めて会った時、いきなり握手をせがんだっけ・・・。
ハヤトの親友だって聞いたときはすごく驚いたし・・・。
ハヤト、あんたには秘密にしてたけど、一度だけタケルからメール来たことがあるのよ。
『ハヤトのこと、よろしく頼むな。俺はでっかいギルドの副隊長なんてやっちまってるから、あいつのこと面倒見てやれなくて。あいつ、むかしから臆病でさ、何をするにも周りの目を気にしちまうやつだから。俺の分まで色々気にかけてやってくれ。カエデはなんかこう、信用できるからな!あと、俺に会ったって、いろんな人に言いふらすなよ?』
全く、タケルはハヤトのことしか考えてなかったのよ?
大して話をしたこともない私を信じて、すべてを任せてくれて。
あんなお人好し、そうそういないわよ・・・。
なのに・・・。
それなのに・・・・・・。
「うわぁぁあああああああ!!!!」
私はわき目も振らず泣いた。
私の声を聞いて心配して来てくれたナナちゃんのことも気にせず。
ハヤトが悔しそうに唇を噛むのにも気が付かないまま・・・。
「・・・ごめん、ありがとう・・・。」
「いいよ。それより、少しは落ち着いた?」
「うん・・・。」
「・・・よかった。今紅茶を淹れるから。」
「ありがとう・・・。」
ハヤト達が宿泊している客室で、カエデはソファーに座っていた。
あのあと、ナナの提案でハヤト達と同じ宿にカエデを泊めることにしたのだ。
実際、こんな状態のカエデを放っておく事も出来なかった。
カエデは、少なからずタケルに憧れを抱いていたのだから。
その死はとても受け入れがたいものだろう。
ハヤトにとっても、タケルは親友だった。
当然とても耐えられるようなショックではなかった。
「ナナから大体話は聞いた。まさかそんなことがあったなんて・・・。」
帰ってきたカズはナナから話を聞いて愕然とした。
「ハヤトと初めて会った時、死人のような顔をしていたんだ。もしかして、それが原因だったのか?」
「・・・タケちゃんは、僕の目の前で殺されたんだ・・・。」
「そ、そんな!?」
その場の誰もが目を見開いた。
「・・・久しぶりに会って、時間もあるし二人でレベル上げでもしようかってなって・・・少しレベルの高いクズイワの森に入ったんだ・・・。そしたら急に男がやってきて・・・。」
『お前、拘束部隊のタケルだな?』
『そうだけど、あんた誰だ。』
『お前を、殺す者。』
『っ!!ハヤト、お前は逃げろ!!!』
『え?タケちゃん、いきなりどうし・・・!!』
『・・・ぐあっ・・・!!』
『タ、タケちゃん!?』
『・・・いい・・・から・・・・・逃げ・・・ろ・・・・。』
『お前の名は?』
『え・・・ハ、ハヤト・・・。』
『・・・・・・貴様に用はない。』
『き、消えた・・・。・・・・!!タケちゃん!!』
『ぐ・・・俺は大丈夫・・だ・・・一時間後・・・また・・・戻って・・くるから・・・。』
「それから、タケちゃんは戻ってこなかった。デスペナルティの切れる一時間が過ぎても・・・。死亡の知らせが届いたのは、それから三日後のことだった。」
「そ、そんな・・・。」
「最初は、事故か何かだと思っていた。でも、さっきカエデの話を聞いて繋がった。あの男、漆黒のメンバーだ。」
「ダメージオーバーフロー・・・。」
「死因は不明だそうだ。・・・ロストブレイカーの孤独死ってことにされてる。」
「そんな!?そんなのあんまりじゃないですか!!」
「誰も、ゲームの中で殺人が行われているなんて思わないんだよ・・・。」
「・・・・・。」
「カエデ、漆黒の情報はどこから?」
「詳しくはわからないわ。ただ、プレイヤーに攻撃され、実際に怪我をした人がいるらしいの。恐らくダメージオーバーフローの試験段階だったんだと思う。」
「くそ!その漆黒とかいうやつらの目的はなんなんだ!」
「平気で人を殺すやつらの考えていることなんていくら頑張ってもわからないよ。」
「ハヤト、あんたどうするつもり・・・?」
「・・・。」
「あんたまさか・・・。」
「・・・・・・・・漆黒を潰す。」
「そ、そんな!!ハヤトさん!!」
「おい、ハヤト!無茶だろ!相手はそのダメージなんとかっての使ってるんだろ!?」
「ハヤト・・・本気なの?」
「・・・本気だ。」
「そう・・・・わかったわ・・・。」
「カエデさん!!」
「一度決めたら聞かないのよ、こいつは。」
「でも!!」
「だけどハヤト、私も行くわ。」
「カ、カエデ!?そんな・・・」
「何?私がいたら邪魔だとでも言うの?」
「それは・・・そうじゃないけど・・・。」
「私だって、このままやつらが好き勝手やるのなんか許せないの。」
「だけど・・・!!」
「私はあなたより強いのよ・・・?」
「う・・・・。」
「決まりね。とは言ってもまずは力をつけないと。」
「ああ・・・。」
「ハヤトさん!!」
「ナナ・・・。」
「わ・・・私も連れて行ってください!!!」
「駄目だ!!」
「どうしてですか!!」
「これは命に関わる問題だ!こんな事に巻き込むわけにはいかない!」
「ハヤト、俺たちのことわかってねぇな。」
「カズ・・・。」
「こんな話聞いちまったら、放っておけないに決まってるだろ。」
「そうですよ!ハヤトさんは自分一人でなんでも抱え込みすぎなんです!」
「お、おい・・・二人とも・・・。」
「ハヤト、二人は真剣よ。諦めなさい。」
「そ、そんな・・・。」
「なんにせよ、今の俺たちじゃ即戦力、とはいかないよな。」
「修行だー!!」
「それじゃあ私が指導してあげるわ。」
「う・・・カエデさん・・・・。」
「カエデ、今レベルはどれくらい?」
「私は今70。」
「そうか。僕は68、ナナは46でカズは57・・・。」
「このままじゃ到底かなわないわ。」
「ああ、タケちゃんはレベル80を超えていた。でもやられてしまった・・・。」
「とりあえず、当面の目標はタケルのレベルに到達することね。」
「ひゃー、先は長いですね!」
「これは、あんまり根を詰めたらやっていけないぞ、ハヤト。」
「ああ。とりあえず僕たちはこのまま今まで通りに冒険を続けていく。」
「そうね、情報も足りなすぎる。まずは情報を集めるためにいろんな街へ行きましょう。その過程で強くなればいい。」
「いいかい。僕たちは復讐をするんじゃない。やつらの計画を潰すんだ。」
「了解です!」
「了解!」
「わかってるわよ。」
「とりあえず、今日はもう休もう。明日から冒険の再開だ。」
「男女で部屋を別に取るなんて、ハヤトも大人になったのね。」
「え、前は二人一緒だったんですか!?」
「ええ、二人で旅してたし、そもそもあいつそういうの無頓着だったから。」
「な、なんとうらやま・・・じゃなくて、も、もーだめですね!ハヤトさんは!」
「あら、今何か言いかけた?」
「い、いえ!そんなことないですよ!」
カエデとナナが宿泊している部屋。
二人は部屋で自分の職や武器の話をしていた。
「というか、話逸れてますから!」
「あら、ごめんごめん。でも大体わかったし、私はナナちゃんがハヤトのことどう思ってるかを聞きたいかなー?」
「そ、そそそ、それはあれですよ、あの、普通です!」
「あからさまに動揺してるわね・・・。」
「それならカエデさんはどう思ってるんですか!」
「んー、一度、こいつと結婚してやろうか、なんて思ったことあるわね。」
「け、けけけけけ結婚!??」
「もちろんゲーム内でのね。」
「け、けけけ、けけけけ・・・・」
「ちょっと、聞いてる?」
「・・・・・はっ!?きゅ、急に意識が飛んで・・・。」
「だ、大丈夫・・・?」
「はい・・・。それより!本当なんですか!?」
「嘘よ。」
「へ・・・・?」
「嘘。」
「嘘?」
「うん、嘘。」
「な、なんだぁ~!そうなんですかぁ!」
「ホッとした?」
「そ、そんなわけっ!」
「ふふ、ナナちゃんって可愛いのね。」
「な!?可愛くなんかないですよ・・・。」
「ハヤトには勿体無いくらいだわ。」
「そんなこと・・・。」
「でもね、ハヤトを攻略するのは大変よ?」
「う・・・。」
「ま、頑張りなさいな。」
「う・・・うぅ~・・・・。」
「そういえば、ハヤトとはいつ知り合ったの?」
「え?ああ、あれは三ヶ月くらい前ですかね。私は一人で狩りしていたんですけど、偶然そのエリアのエリアボスと遭遇しちゃって。私その時アイテムもスキルも使い切っちゃってて絶体絶命!ってときにたまたま通りかかったハヤトさんとカズさんに助けられたんです。」
「なるほど、それ以来、ハヤトのことが気になる、と。」
「そ、そういう話じゃないです!」
「にしても、ハヤトが人助けなんて、ちょっと可笑しいわね。」
「なんでですか?すごくかっこよかったですよ?」
「あら、かっこよかったの?」
「え?あっ・・・ま、まぁ普通ですけどね!」
「ふふふ・・・。ハヤトはね、すっごく臆病者だったの。」
「え?ちょっと意外です・・・。」
「そうでしょうね。今のハヤト、すごく頼りになりそうだもの・・・。でも最初はいつも泣きそうになりながらモンスターと戦っていたわ。いつだったかしら、大きな蜘蛛型のモンスターと戦った時は本当に泣いてたわね。」
「ふふっちょっと可愛いかも。」
「あいつ、可愛いとこ結構あるのよ?寝顔とかほんとに・・・。」
「う、うらやま・・・しくないですけど!!」
「思わずキスしたことも・・・」
「き、ききききききすうぅぅぅ!???」
「冗談よ。」
「もう!!からかわないでください!!!」
「まぁまぁ落ち着いて。私はハヤトなんかよりあなたの方が気になるわ・・・。」
「え?ちょ、また冗談ですよね?」
「・・・・・・・・・。」
「ちょ、ちょっとカエデさん?」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「せ、せめて何か言ってくださいよ!!!」
「本当にからかいがいのある子だわ。」
「もう、どうにでもしてください・・・。」
「二人ともおはよう・・・・ってあれ?ナナ、具合悪そうだけど。」
「・・・いえ、なんでもないです。・・・なんでもないんです、ほんと・・・。」
「・・・カエデ?」
「えへ、ちょっとナナちゃんで遊んじゃった!」
「ちょっと!限度を考えてよ!あれじゃ生きてるのか死んでるのかわかんないだろ。」
「ところで、これからどうするの?」
「無視ですか・・・。」
「そうそう、ハヤト、俺たちはこれからどこに向かうんだ?」
「とりあえずクランに行ってみようと思う。」
「商業繁栄都市クランか、いいんじゃねぇか?あそこなら何かしら掴めるかもしれないしな。」
「クラン!?私、ミミエール菓子店に行きたいです!!!」
「うわっ、一気に元気になったな、ナナ・・・。」
「ミミエール!ミミエール!あそこのお菓子は格別なんですよ!!」
「ミミエール菓子店?・・・あぁ、あの子のとこかしら。」
「カエデさん、知り合いなんですか!?」
「ええ、前に一緒にパーティー組んだことあるの。お菓子の材料が欲しいって言ってて、私も少し気になったから。」
「す、すごいです!あのお菓子屋さん、今すごく有名なんですよ!!」
「そうね・・・久しぶりに私も顔出しに行こうかしら。」
「行きましょう!食べましょうお菓子!!」
「・・・・ほんとに元気になったな、ナナ・・・。」
「・・・ほんとだな・・・。」
「おっかっし!おっかっし!!甘くておいしいおっかっし!!いえーい!!」




