一年後の未来は
僕がこのゲームを始めたのは一年くらい前だったか。
最初は何もかもが新鮮で、楽しい事に溢れていた。
親友との再会、新しい仲間たちとの出会い。
僕はどんなことがあってもこのゲームを愛せると思っていた。
だけど、あの日---
「ハヤトさん・・・?ハヤトさんってば!!」
「ん?ああ、何?ごめん、聞いてなかった。」
「もう!しっかりしてくださいよ!!」
「ごめんごめん。それで、何だって?」
「だーかーらー!私の新しいスキルについてなんですけど!」
「ああ、はいはい。何だっけ、確かフラッシュなんたらっていう・・・」
「フラッシュマインドです!聖属性の分身を作り出す魔法です!」
「そうそう、それをどう戦闘に組み込むかって話だったね。」
「そうです!」
「んー、そうだな・・・。陽動として使ってみたりしてはどう?」
「陽動・・・ですか。」
「その分身、今出せる?」
「はい、やってみます。」
ナナは意識を集中させ、魔法詠唱を始めた。
「----出でよ!フラッシュマインド!!」
辺りが光に包まれ、その中心に人型の光がたたずんでいた。
「どう、ですかね。」
「この分身、攻撃とかはできる?」
「はい、一応。でも大したダメージは無いみたいです。」
「つまり、移動式の明かりというわけか。形を変えることはできる?」
「やってみます!」
ナナは光の分身と向き合う。
目を閉じ意識を集中させるナナ。
すると、光の分身は姿を鳥のように変えた。
「で、出来ました!」
「よし、これなら使い道がたくさんありそうだ。少し魔力を抑えてもう一度やってみてくれ。」
「はい!」
「おーおー、やっとるねぇー。」
「カズさん!おかえりなさい!」
「ああ、ただいま。あ、そのまま続けていいよ。ハヤトの指導は最高だもんな。」
「僕は、教えてもらった知識をそのまま教えているだけだよ。」
「カエデさん、だっけか?ハヤトの戦闘指導をしたっていう・・・。」
「戦闘だけじゃない。このゲームのことを色々とね。」
「その人は、今どこにいるんですか?私も指導受けてみたいです!」
「さぁ、だいぶ前に別れたから今はどこにいるのか・・・。それに、カエデは僕以上にスパルタだよ?」
「う・・・や、やっぱり私はハヤトさん一筋で!!」
「都合のいい事言って。」
三人で笑いあう。
少し前なら、こんなことできなかっただろう。
本当にナナとカズには救われた。
もしあのまま一人だったら、僕は・・・。
「ハヤトさん!こんな感じでいいですか?」
目の前には薄く光る鳥が飛んでいる。
「あ、そうそう。そのまま魔力を抑えて。」
「はい!」
「よし、一気に開放!」
「はいっ!!」
辺りが閃光に包まれる。
「こ、これはすごいな・・・。」
「ハヤトさん!め、目が・・・!!」
「これはなかなか使えるね。」
「れ、冷静に言わないでくださいよ!」
フランジェの街。
穏やかな気候と豊富な資源で栄えた街の一つだ。
ハヤト達三人はここの宿屋に部屋を借りている。
「いやー、新しい魔法、役に立ちそうでよかったです!」
「どんなスキルや魔法も使い方次第だよ。」
「私も、ハヤトさんみたいに応用力があれば・・・。」
「はっはっは!ナナには無理だって!」
「カズさんひどいですよぅ!!」
「ま、せいぜい頑張るこった!」
「ぐぬぬ・・・。」
「さ、今日はもう遅い。そろそろ休もう。」
「ハヤトさん、今日はどこに行くんですか?」
「そうだな、特には決めてないけど、ナナはどこか行きたいところとかある?」
「私、お菓子屋さんに行きたいです!」
「ま、まぁいいけど・・・。」
「カズさんは今日も狩りに?」
「んー、まぁ、レベルも上げたいし、いい運動になるしな。」
「後で私も参加していいですか?私もレベル上げたくて・・・。」
「ああいいよ。ついでにフラッシュマインドの練習でもするか。」
「はい!!」
「んじゃ、とりあえず俺は行くわ。デート楽しんでなー!」
「で、デート!?」
「そんな、デートだなんてぇ~。」
「ナナ、なんでちょっと照れてるんだよ・・・。」
「うわぁー!いろんなお菓子がいっぱいだ!!」
「これはすごいな。こんなに種類があるんだ・・・。」
「ハヤトさん!これとかおいしそうですよ!」
「そうだね。カズの分も買っていこうか。」
「はい!」
「よし、とりあえず一旦宿に戻ろうか・・・」
「・・・・・・・・・ハヤト?」
「・・・え?」
「やっぱり、ハヤトじゃない!元気にしてた?」
「・・・カエデ!」
「え?もしかしてあの人が・・・?」
「こんなところで会うなんて奇遇ね。何してるの?」
「ああ、ちょっと買い物に・・・ね。」
「あら?そちらの方は?」
「あ、えっと!私ナナって言います!今ハヤトさんとパーティー組ませてもらってます!!」
「ナナ・・・なんでそんな緊張してるの?」
「え、だ、だってハヤトさんの先生みたいなものだからっ!緊張しちゃって!」
「ふぅ~ん?ハヤト、あんたも隅に置けないわねぇ~。」
「な、なんのことでしょうか・・・。」
「ハヤトさんが敬語!?」
「こんな可愛い女の子と旅をしてるなんて。あなたの冒険とやらは女の子と街でデートするってことだったのねぇ?」
「ちょ、顔がこ、怖いって・・・。」
「か、可愛いだなんて・・・デートだなんて・・・うふ。」
「おいナナ。」
「それに、随分と男らしい話し方になったのねぇ?昔なんて泣きながら私に・・・」
「あーーー!!やめて!僕が悪かったってば!!」
「あら、何よ。もうちょっとからかってやろうかと思ったのに。」
「全く、変わらないな、カエデは。」
「人間なんてそんなに簡単に変わらないものよ。」
「それも、そうだね。」
「そうだ、ナナ。」
「はいっ!」
「そういえば、ちょうどこの前カエデに指導してもらいたいって言ってたよね・・・?」
「え・・・あ・・・あう・・・。」
「へぇ~、私の指導、受けたいんだ?」
「ひ、ひぃぃ・・・。」
「・・・って、見たところ魔法系の職よね。私そっちの方はやったことないから、簡単なアドバイスくらいしか出来ないけど、それでもいい?」
「あ、はい!・・・・た、助かった・・・。」
「ん?何か言った?」
「いえ!よろしくお願いします!!」
「よし、んじゃさっそく行きましょうか!」
「え、今からで・・・」
「もちろん!ハヤト、あんたも来なさい。」
「え、僕も?」
「当たり前でしょ。・・・積もる話もあることだし。」
「・・・・・わかったよ。」
「・・・こ、これで30体め・・・。」
「ふむ、なかなか根性あるわね。」
「カエデさん・・・私そろそろげんかい・・・」
「何言ってるの。あと30体!」
「ひ、ひぇぇ・・・・・。」
ナナは泣きそうな顔でフィールドモンスターと戦っている。
あと30体も倒せば、レベルも2つくらい上がるだろう。
少し離れたところで様子を見ていたカエデの横にハヤトが座る。
「カエデ、話っていうのは・・・。」
「・・・大体予想はついてるんでしょ?」
「・・・ブラックギルド・・・漆黒。」
「その通りよ。」
「じゃあやっぱり・・・!!」
「ええ、存在するわ。」
「じゃあ、あの噂も・・・?」
「・・・恐らく。」
「・・・『ダメージオーバーフロー』。」
「キャラクターの受けたダメージが、直接プレイヤーに流れ込む現象。ダメージ量によっては命の危険もある。それをやつらは意図的に発生させている。」
「一体どうやって!」
「憶えてる?約三年前、このゲームを製作しているPoporas社のゲーム開発部門で火災事件があった事。」
「それならニュースで見たことがある。火元が不自然だったことから、警察は放火の疑いも視野に・・・・・・・!!」
「気づいたようね。恐らく放火で間違いないわ。その際、データを盗んだんでしょうね。」
「・・・確か・・・火事のあった部門は・・・。」
「・・・システム開発部門の、さらにキャラクターダメージに関する部署よ。」
「そ、そんな!?」
「やつら『漆黒』のメンバーがそのシステム情報を盗み出し、それを改良し『ダメージオーバーフロー』を作り出した、そうに違いないわ。」
「どうしてそんな・・・。」
「理由はわからない。なぜ三年前の事件から今までやつらが静かにしていたのかも。単に機会を窺っていたのか・・・それともダメージオーバーフローの開発に手間取ったのか・・・。どちらにせよ、放ってはおけないわ。」
「ああ、やつらは絶対に許せない・・・!!」
「あんた、まだあのこと・・・。ギルドを作らないのもそれが理由?」
「・・・。」
「まぁ、あんたの好きにすればいいと思うけど。」
「・・・うん。」
「私たち、思えば長い付き合いよね。」
「もう、一年くらいになるね。」
「そうそう、最初はハヤトなんてまだ5レベルで。武器やスキルの使い方から説明したっけ。」
「僕はチュートリアルを飛ばす癖があったからね。すごく助かった。」
「いいのよ。私も教えるの楽しかったんだから。」
「あの時はタケちゃんと久しぶりに会った時だったんだ。懐かしいや・・・。」
「そういえば、タケルは元気にしてる?私連絡取ってないからさ。親友のあんたなら、たまに会ったりくらいするでしょ?」
「・・・・・・・・・。」
「・・・ハヤト・・・?」
「・・・タケちゃんは・・・・・。」
「・・・・・・・・・・死んだ。」




