新しい力Ⅱ~イーストサイド~
一方、アンクル平原東、夜。ハヤト・ナナチーム。
「さてと、まず職業の特性・特徴を確認しておこう。」
「は、はい!」
「まず、僕は自分の職業のことしかよくわからないから、攻魔士について教えてくれる?」
「はい。攻魔士・・・つまりバトルフロエですけど、魔法攻撃の多彩さと威力が特徴です。」
「なるほど。簡単に言えば魔法使いだね。」
「はい。それで、魔法系の技を扱う職業の特性なんですけど・・・。」
ナナは小さなメモ帳を取り出した。
「・・・それは?」
「あ、これはカエデさんが用意してくれたものです。」
「なになに・・・『魔法使いのススメ』・・・?」
「カエデさんがメモして渡してくれたんです!」
「つまり、ナナ自身あまり詳しくない、と?」
「・・・・はい。」
「・・・そう・・・。」
「と、とにかく!これを読んでみましょう!」
「そ、そうだね・・・。」
カエデは魔法系の職業はやったことないはずだけど・・・。
あの情報の塊みたいなカエデなら、何を知っててもおかしくはないか。
魔法士系職業には大きな特徴がある。
その一、物理ダメージの他に状態変化の特性を持つ。
「つまり、相手を毒状態や混乱状態に出来るということですね。」
「そうだね。武器にそういう特性を持っているものもあるけど、それだと単一の効果しか与えられない。それぞれ自在に扱えるとしたらそれはかなり戦況を変えることになるね。」
「ちなみに私は使えませんけどね。」
「え・・・。」
ちなみにこの状態変化魔法は癒法士から派生する上位職『癒法術士』が扱える魔法である。
「・・・だったら書く必要あるのかな・・・。」
「ま、まあ気にせず次いきましょう!えっと、なになに・・・。」
その二、各魔法にそれぞれスペルというものが設定されており、魔法の発動にはそれを唱える必要がある。これを詠唱する、という。
「これは常識ですね!」
「まあ、どんなゲームでも魔法使いは普通はこうだからね。」
その三、魔法の詠唱には二種類の方法が存在する。
実際に言葉に出して詠唱する発動方法と、
言葉に出さず、強いイメージをそのまま魔法へ変換する方法。
後半の方法はイマジネーションスペルと呼ばれる、シフト法に似た攻撃方法である。
「シフト法・・・?シフト法って何ですか?」
「ん?ああ、それはね。」
ハヤトがバトルシフトを行う。
「こうやって、一々操作せずに武器を換装したりする技術の総称だよ。」
「へ、へぇ・・・そんなことが出来たんですね・・・。」
「ついでだから、このバトルシフトも出来るようになっておこう。」
「わ、私に出来るでしょうか・・・。」
「ナナならきっと出来るよ。つまり、イマジネーションスペルは、詠唱という操作を無視した攻撃方法ってわけだね。」
「そうみたいです!」
「よし、次は・・・。」
その四、バトルフロエは熟練度や経験により、複数の魔法を同時に発動させることが出来る。
また、その時の組み合わせで多彩な効果を生み出すことが出来る。
例えば雷属性と水属性の魔法を重ねて発動すれば、雷属性の魔法ダメージを効率よく相手に与えることも出来る。
このような攻撃方法は一般的にユニゾンマジックと呼ばれている。
「・・・・・覚えることがいっぱいです・・・。」
「・・・これは確かに大変だね。」
「でも、私はやります!」
「そのいきだよ!とりあえず当面の目標はイマジネーションスペルとユニゾンマジックだね。」
「はい!やりますよー!」
「よし、さっそくモンスターとの戦闘に移ろう。前衛は僕がやるから、ナナは魔法を放つときの感覚や感触に意識を集中して。」
「わかりました!」
「基本的に狙うのはグリムワーカーにしよう。やつらは魔法に対する抵抗力が低いからね。」
「了解です!」
二人は近くにいたグリムワーカーに狙いを定める。
グリムワーカーとは小人のような出で立ちのモンスターで、単体の攻撃力が高く、物理攻撃に対する防御力も高い。
その代わり魔法攻撃に対する防御力が低く、状態異常などにもかかりやすい特徴がある。
つまりナナにとっては絶好のカモというわけだ。
今のナナはレベル56。
レベル56でこの地域の夜行性モンスターを相手にするのは少々骨が折れる作業だが、相手に有効な攻撃方法が存在する場合話は別だ。
大ダメージを与えることが可能であれば、レベル差がたとえ20以上あってもモンスターを倒すことは可能だ。
あくまでその方法とそれを実践する度胸と強力なサポートが必要ではあるが。
「とりあえず、弱点属性のことは気にしないで。今使える攻撃魔法をありったけ満遍なく使うように。魔力回復のフレグなら僕も持ってきてるから遠慮はしなくていいから!」
「わかりました!」
「最初はスペルを唱えて魔法を撃って、その感覚が残っているうちにすぐイマジネーションスペルで攻撃するんだ。最初はうまくいかないと思うけど焦らず、次の魔法詠唱を始めて!」
「はい!」
「それじゃいくよ!」
ハヤトがグリムワーカーに衝撃剣を放つ。
小さな衝撃波がグリムワーカーに向かって飛んでいく。
グリムワーカーは攻撃に気付いたのか回避の姿勢をとったが、間に合わず直撃し、体力ゲージの4分の1程度を消費した。
「---フレイ!」
ナナの詠唱が終わり、小さな炎の玉が飛んでいく。
「そして、イメージしながら・・・。」
そのままナナは目を瞑り右手に集中する。
今出した炎の玉を強くイメージして・・・。
・・・・・・だめだ!炎が出ない!
「よし、次!」
ナナは諦めずにもう一度炎の初級魔法『フレイ』の詠唱を始める。
「よし、ナナ。落ち着いてやれば大丈夫だよ!」
「はい!」
ナナが詠唱している間、ハヤトは敵を倒してしまわないように攻撃を与えつつ様子を見ていた。
もしここで自分が倒してしまったら、ナナには基本の経験値の7割程度しか入らなくなってしまう。
些細な差ではあるかもしれないが、長い目で見れば大きな差になる。
この戦いは連携を強化するためでもあるが、何よりナナのレベルを上げることが先決だ。
魔法攻撃というのは、高威力かつ広範囲に及ぶため、どんなパーティーでも魔法士系の職業は重宝される存在だ。
強力な攻魔士はモンスターの大群を、たった一度の魔法で殲滅する事も可能だと言われている。
事実、有名なギルドで活躍する魔法使いたちは、単独か、多くても三人程度のパーティーでダンジョンを攻略するという。
しかし、それだけ強力な職業であるが故にリスクも大きい。
体力は圧倒的に少ないし、魔法も魔力が切れてしまえば使うことはできない。
スペルを覚える必要もあるし、物理攻撃力は心もとないために魔法に耐性のあるモンスターとの戦闘は厳しいものになる。
だからこそ、ここでは連携も必要というわけだ。
「カエデは、こんな大変な作業をずっと僕のためにやっていたんだな・・・。」
敵のヘイトを稼ぎつつ、体力もある程度減らし、味方の攻撃をよく見て流れをつかむ。
「・・・この修行、案外僕のためにもなりそうだな・・・。」
「ハヤトさん、いきます!フレイ!」
ナナが放った炎の玉が直撃し、グリムワーカーは消滅した。
しかしすぐにハヤトが別のグリムワーカーに先制をしかけており、戦闘状態は変わらなかった。
「よし、このまま・・・!」
ナナはさっきのイメージを復習しながら再び意識を集中させる。
右手から放たれた真っ赤に燃える炎の玉。
熱を持った球状のエネルギー。
魔力の塊ともいえる炎の玉を、再び自分の右手にイメージする。
「よし!いける!」
ナナは右手を掲げ炎を放つ体勢に入る。
すると炎が右手の中心から発生する。
「よし!ナナ、いい感じだよ!」
「はい!いきます!・・・・フレイ!!」
右手から放たれた炎の玉は、グリムワーカーに向かって飛んでいく。
しかし、あと少しというところでその炎は消滅してしまった。
「・・・おしい!」
「今のはいい感じだったよ!もう一度やってみよう!」
「はい!頑張ります!」
ハヤトさんの期待に応えたい・・・!
私も、みんなの役に立ちたい・・・!
ナナはそんな気持ちを胸にしまい込み、再び魔法の詠唱を始めた。




