ロリポップマイハニー。
「モモ。ねー、モモ。モモさーん」
前の席のあいつは、
オレが3回名前を呼んで
やっと振り向いた。
「なぁに」
「数学のノート見して、数学。
ぜんっぜん聞いてなくてさ」
「えーっ、だめ。乙女の落書きが
たくさん書いてあるから絶対だめ」
「はぁ?なんだよ乙女の落書きって。」
「ひっみつー」
…まあ、別にいいや。
そんな緊急事態でもないし。
もっと真面目なやつに見せてもらおっと。
「あーなんか食べたい。
モモ、なんか持ってない?」
「また?今日3回目だよ?
グミか、アメか、チョコ」
「いーじゃん。アメがいい」
「しょーがないなぁ」
モモはポケットからいちご味の
アメを出しながら、なんか妙に
大人っぽい調子で言った。
「いつも何かしら口にしてなきゃ
落ち着かないなんておこちゃまね」
「どーゆことだよ」
「赤ちゃんがおしゃぶりくわえるのと一緒。
何かしら口にいれてたい人って甘えんぼさんなんだって」
…ふぅん。
…いや、別にオレはそんな
甘えんぼさんでもないし
おこちゃまでもないと思うんだけど。
「まあ確かに君はおこちゃまだよねー」
「なっ…」
反論しようとしたのに、
担任が教室に入ってきたので、
モモは前に向き直ってしまった。
「ねーモモー」
「え?」
「うぅんなんでもない」
オレは彼女からもらった
アメを口に放り込んだ。
「モモ」
おこちゃま、ねえ。
「ねえモモ」
「ん?」
「呼んだだけ」
口の中で甘くとけるいちご味。
別にオレはこれが
欲しかったわけじゃない。
別にこんな甘いキャンディを
口にしてたいわけじゃない。
「モモ」
「もうっ、こんどはなぁに」
「次はピーチ味が、いい」
「えー」
「ありがとモモ」
モモ。
オレが常に口にしていたいのは
おまえの名前だばかやろー。
そう言ってもおまえは
おこちゃまだって笑うのかな。




