泣き虫
『泣いているの?』
何処からかそんな声が聴こえる
辺りを観ても
誰も居ない
どころか、風すら吹いていない
僕はまた悲しくなった
最後の試合
僕のせいだ
僕がボールをとられたから
みんなは僕を励ました
でも分かってる
どうせ、裏でこそこそと僕の悪口を言ってる
『泣かないで』
またあの声
僕はどうにかしてしまったんだろうか
こんな時に限って風は吹かない
僕の悲しみを
風がさらってくれると思ったのに
意地悪、
ケチ、
嘘つき、
ふふ。
僕はどうにかしてしまったのかな
風に怒っている
最後の試合
僕がボールを取られた
シュートは…
ああ、また涙
『泣かないで』
ああ!もう!
さっきからこの声は何だろう
心に直接…
何だろう、言葉には出来ないけど
もう、涙は止まった
泣いていても
仕方がない
泣いてたら
前は見えない
『空想にとらわれるのも
いい
でも、いつかはここに戻って来て』
そんな声が聴こえる
そうだ
過去を引きずって
自分を責めて
自分を傷付けるだけ
何も変わっちゃいない
自分を苦しめるだけ
次に進めない
そうだ
『そうなんだ
涙というのは
嬉しい時に
流すもの
悲しい時は
笑顔でいよう
どんなに辛くても
でも、本当の本当に我慢出来なくて
泣いてしまう
そんな時が
もし君に来たなら
安心して
それは
君が
他の人に負けないくらい
頑張った証拠
そんな時、
君は
誇らしく泣いて
誰もかっこ悪いなんて
思わない
その涙は
君の努力の結晶だから』
僕は歩き出した
涙は棄てた
笑おう
そして
本当の本当に苦しくなったその時に
必ず、本当の意味の友達や人間に出会えている筈だ