プロローグ・記憶
(悪者って何でいるの?)
只、聞いてみた…理由なんて無かった。夏の暑い日、いつもの様に祖父と縁側で喋っている時に出た何気ない疑問。
祖父はん〜と少し考えた後、ゆっくりと口を開いた。優しい口調で諭すように話してくれる祖父が大好きだった。
祖父は言った
「じゃあ、悪者が居なかったらどうかな?」
首を傾げるしかなかった、(良い事じゃないの?悪者が居なかったらハンザイも起きないよ)子供なが難しい言葉で話した。「そうだね、でもね、悪者って本当に悪いのかな?その人が悪者なのは誰かが悪くしたからだよね?」
判らなかった、(じゃあ、誰のせい?)
「誰かな?おじいちゃんはね、きっとそれは目に見えない『何か』だと思うよ」(『何か』って?)
「おじいちゃんにもよく分からない、けど、おじいちゃんが子供の頃はよく言われたんだ。悪い子にはそれがくっついてるって」
(何?何?)子ども心にこの手の話は興味の対象だった。祖父は言った「悪い事を喰って、もっと喰いたいから悪い事をやらせる妖怪さ。もっとも、妖怪かどうかも判らんがな」
と言って笑った(ねぇねぇ、名前は?見つけて、そんな悪い奴やっつけてやる)勇んで言っていると
「名前?…昔の事だからな〜何だったか?………おぉ、確か、」