さよならの切手 ~天国へ届く、たった一度きりの魔法の切手~
ある日。
引き出しの中を整理していたら、小さな封筒が出てきました。
「うん?これ、何だったかなぁ」
寛さんが首をひねりながら封筒を開くと、青い蝶の絵が描いてある1枚の切手がフワリと入っていました。
吸い込まれそうなほど綺麗な切手です。
ただ、金額が書かれていません。
「でも、切手、だよなぁ」
寛さんは、それをつまんで、はたと考え込みました。
何だったかなぁ。
何だったかなぁ。
「ああ、そうか」
寛さんは思い出しました。
おばあさんが、子供の頃にくれたものでした。
「寛ちゃん、これはね、天国にいる大切な人にお手紙を届けることができる特別な切手なの。ただし、使えるのは1度だけ。おばあちゃんが天国に行ったら、寛ちゃん、お手紙書いてくれる?」
「おばあちゃんは天国になんか行かない!」
「じゃあ、地獄かな?」
「地獄にも行かない!」
「それなら、どこに行くのかしら?」
「どこにも行かない!おばあちゃんは死なない!1000年生きる!」
「あはは、それじゃあ、おばあちゃんは妖怪だわ」
寛さんは、ふっと微笑みました。
「1000年生きる、か」
そして、切手に目をやりました。
天国にいる大切な人。
いっぱいいるなぁ。
寛さんが子供の頃に亡くなった両親。
両親が亡くなった後に、寛さんを育ててくれた祖父母。
大好きだった、愛犬のボン。
「あぁ、ボンは人じゃないか」
寛さんはくすっと笑いました。
でも・・・
「ボンに手紙を書きたいなぁ」
寛さんが寂しい時、いつもそばにいてくれた、ボン。
おなかがすくと寛さんのズボンの裾を引っ張って、おねだりしていた、ボン。
お散歩から帰りたくなくて、いつも違う角で曲がってしまう、ボン。
寛さんが泣いていたら、顔をなめてくれた、ボン。
でも、その後、すぐにごはんを欲しがった、ボン。
ボンとの思い出はたくさんあります。
寛さんは、本棚からアルバムを出してきました。
「これがいいかなぁ」
寛さんは、ボンとよく遊んだ公園の写真をアルバムからはがしました。
そして、その辺にあった紙に糊でペタリと貼って、写真の下にペンで書き添えました。
『また、ボンとあそびたいワン』
寛さんは、ふふっと笑いながら、その紙を白い封筒に入れて、青い蝶の切手をそっと貼りました。
「明日、ポストに入れてみるかなぁ」
ーー翌朝。
寛さんが手紙を出そうと机の上を見ると、そこに置いたはずの手紙はありませんでした。
代わりに空色の葉書が1枚。
その葉書には肉球が1つ、ポン、とおされていました。
「ボン、かなぁ」
寛さんは、ちょっと笑って、葉書を一番好きな本の間に丁寧に挟みました。




