‐〖部長面談〗‐
「部活動では、どのような事を行っているのでしょうか?」
檜佐木からの問いかけに、その男子生徒は曖昧な笑みを浮かべた。
「あーとえーと、その、部室で遊んだり……」
視線を泳がせるのは指摘されると分かっていたからだろう。けれど嘘をつくほどの度胸もなく、中途半端に真実を伝えてしまう。
「活動目的に書かれてあるような事は行っていないのですか?」
「まあ、してないかも……」
歯切れ悪い口調に居心地悪そうな表情。まるで結論が遠ざかるのを祈っているようであり、しかし副会長は淡々と仕事を進めた。
「最初に説明した通り、この面談では部活動が正しく行われているかを調査し、部活動として適していないと判断出来た場合には、廃部にさせて頂く旨で聞き取りを行っていますが、」
「え、えっとっ! 一応つ、都市伝説のありそうな場所に行って調べたりもしたは、したんだけど……」
「それはどのくらいの頻度ででしょうか?」
「あーえー……今までに、一回。はは、こんな部じゃ認められないよね」
やっぱり彼は、騙してまで利益を得ようとは出来ないらしい。年下相手に情けない笑みを浮かべ、結局は生徒会の判断を待つ。
その言動から部の存続は諦めたと取った檜佐木は、眼鏡の位置を直しつつ、最終確認へと移った。
「それでは、廃部を承認して頂く、という事でよろしいでしょうか?」
「あ、えっと……」
すると彼は、また結果を遅らせようと声を漏らす。けれどそこから言葉は続かず、仕方なく副会長から促した。
「何か、異論がありましたか?」
「いや、その……」
目を逸らす。本当は喉元まで出かかっている言葉があるのに、その良し悪しを決められず口を閉ざしたまま。
そうしてしばらくして、彼はついに戦うのを放棄する。
「まあ、仕方ないなら廃部で——」
と言いかけた時だった。
——バンッ‼
「ちょっと待ったー!」「ちょっと待つっすー!」
生徒会室の扉が勢い良く開かれ、二人の男女が現れる。面談していた男子は座ったまま振り返り、乱入者の姿にギョッとした。
「葉っぱ!? ラビちゃん!?」
あだ名らしき呼称を受けた男女は、座る男子を挟むようにして両隣に並び、頼りない長の代わりに抗議の声を上げた。
「ウチらの部を廃部になんてさせないっすよ!」
「そうだそうだ! ボクらの部は守って見せるっ!」
ピンク色に染まった髪を揺らす女子生徒に、小太りの男子生徒が続く。二人の素性を確かめるため、檜佐木は面談中の部の届け出に視線を落とした。
『部名』…「都市伝説解明」部
『代表者』…「3年7組‐田中努夢」
『部員』…「3年7組‐田中努夢」「3年7組‐如月葉太郎」「1年1組‐羽原兎」
『活動目的』…「市内で噂される都市伝説の調査や解明を目的として活動します。市外にも行きます! 心霊スポットとかに行くのもアリ!」
『部室』…「旧校舎3‐3」『顧問』…「第16期生徒会会長」
都市伝説解明部。
座る男子生徒が部長の田中努夢であるのだから、乱入者の二人は残りの部員に違いない。何より片方の生徒は、檜佐木も知った顔だった。
上級生を差し置いて、ピンク髪の女子生徒——羽原兎は人差し指を突き付けてくる。
「檜佐木先輩! あなたの好きにはさせないッスからね!」
「……それは困りましたね」
名指しで敵意を向けられた生徒会副会長は、ため息代わりに眼鏡の位置を直すのだった。




