第9話 セリーヌの身の上相談。
「…ということがあったらしいのよ。ジャネットはどう思う?」
「え?私?セリーヌ自身はどうなのよ?」
従姉のジャネットの部屋で、寝間着姿で大きなベッドに二人で枕を抱えて寝転んで、今日の午後にアルバンのお母様に聞き出した話と、目が覚めてからのアルバンの変わりようをざっと説明したセリーヌは…むくれていた。
「わかないから、あなたの意見を聞こうと思ってるわけよ?」
「あーね」
ごろりん、とセリーヌが転がる。
「だって、セリーヌはアルバン様が大好きで大好きで浮かれてたでしょう?もう10年よ?その彼があなたに興味を持ってくれたんなら、いいんじゃない?」
「え?うーん。まあ?でも…アルバンの理想の女性がつつましい、おとなしい女性だとわかっちゃった以上…全くその反対側に位置する私はどうすりゃいいわけ?っていうか…そんなこと10年も気が付かなかった自分の身の置き場がないわ。」
「…セリーヌ的に家出の理由はアルバン様の浮気ではなく、女性の趣味なわけね?」
やはり寝転がっていた、頬杖をついたジャネットが、あきれ顔で言う。
「う…浮気?うわきなの?」
寝転がっていたセリーヌが、がばっと起き上がる。寝耳に水?ってこんなかんじ?
「そりゃ、浮気じゃない?男女の仲になったかどうかまでは知らないけど…婚約者でもない女とデートして、ご飯食べて、宝石まで買ってあげて…十分浮気の要件を満たしていると思うけど?私なら絶対やだな。そんな男。」
「男女???…でも、まあ…私たち結婚したわけじゃないしね」
「うーん。まあ、いいか。じゃあ、おとなしくする?でも、目が覚めてからはあなたのままを受け入れてそうな感じよね?あなたは今まで通りおしゃべりしてたんでしょ?」
「そうなのよ。なにか…この婚約を解消したら不都合があるのかしら?その人と結婚する道もあるわよね?」
「したいの?婚約解消?」
「……」
呆れたように、ジャネットが聞いてくる。
「正直…エタン伯爵家があんたとの婚約を解消したからと言って、不都合はなさそうよね?ロランス家は弱小伯爵家だしね?格も違うし」
「……」
「まあ、気が済むまでうちにいたらいいわ。母もあなたが来るとにぎやかになるから喜んでるし。」
「うん。」
「よく考えな。少なくとも…アルバン様が社交界デビューしたら周りの女の子たちが放っておかないだろうしね。いい男だし。その中から、自分の理想のおとなしい女の子を選べばいいだけだし。より取り見取りよ?何なら私も立候補しようかしら?黙っていればいいんでしょ?うふふっ。」
「…ジャネット……」
「冗談よ」
弟しかいないセリーヌにとって一つ違いの従姉のジャネットは姉のような存在だ。
10年近く私がアルバンに相手にされてこなかったことも知っている。
私がずっとアルバンに恋をしていることも。
(…浮気?うわき?か…)
枕を抱えて再びゴロンゴロンと転がるセリーヌ。
今日…私がお出迎えに出なかったアルバンは、少しは寂しいと思ってくれたかな…。そんなことを考えた。
いやいや、静かでいいと思っているかもな。
セリーヌは結局、ジャネットとお菓子を焼いたりしながらルイソン子爵邸に3日も滞在してしまった。のんびりできた。が、何一つ答えらしい答えも見つからなかった。
上手に焼けたクッキーを選んで、袋に詰める。
「おや?帰る気になった?」
それを見ていたジャネットににやにやされる。
「うん。一人で考えても仕方ないから、直接本人と話してみるわ」
「そうね。そのほうがあんたらしいと思うわ。いいんじゃない?」
「まあ、ダメだったらダメで…」
「その時はお姉ちゃまが慰めてあげるわよ!って、言いたいところなんだけど、向こうからお迎えが来たみたいよ?」
ジャネットが笑いながら、窓の外を指さした。
え?




