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第8話 静かな屋敷。

僕の乗った馬車が馬車寄せに停まる。


ぱたぱたっ、とセリーヌが駆け寄ってきて、

「お帰りなさい!」

と出迎えてくれる。

「ただいま。今日、セリーヌは何をして過ごしたの?」

出迎えてくれたセリーヌと並んで話しながら中に入る。

「今日は庭師のセバスが植え替えをするというので、手伝ったんです。来年の春用まで咲くビオラを植えたんですよ?」

庭から直接来たらしく、まだエプロンをしたままだ。

「お嬢様!」

「あら、セバスが呼んでいるようなので、少し顔を出してきますね?」

くるくると変わる表情。

「はーい!」

と、返事をしながら走っていくセリーヌの後姿を見ながら、今日もうちはにぎやかだなあ、と、思わず笑ってしまった。


…そんな感じがいつもの風景のはずなんだが…


今日のお出迎えは執事だった。

「セリーヌは?」

「お嬢様は本日、従姉のルイソン子爵家のジャネット様からお誘いがございまして、お出かけでございます」

「へえ。そうなの」


昨日も今朝も、セリーヌはそれらしいことを言っていなかったけど…急に何かあったのかな?


夕食時に現れた母に、聞いてみる。

「セリーヌは急にお出かけらしいですね。何かありましたか?」

「え?……何かって…何?」

母が妙におどおどして見えるが。

「いえ、ほら、どなたか具合が悪いとか?こんな急に僕に告げずに出かけるなんてことなかったものですから」

「え?……」

「どなたか具合が悪いなら、僕からもお見舞いを差し上げなければいけないでしょう?」

「…いえ、ほら…こちらに来て落ち着いたら、遊びに来てね、って話されていたらしくて。おほほほほっ。しばらくお泊りしてくるって言ってたわ」


「……しばらくって?」


母上の視線が…さまよっている。

「あ、あの子もここのところ忙しかったでしょう?ゆっくりしていらっしゃいって言ったのよ!」

「……ああ。そうですね。」


母上とセリーヌは、仲がいい。親子、というより、年の離れた姉妹、のようだ。

今更、嫁姑で揉めたということはないとは思うが…明らかに母上の態度が不審だった。

アルバンは早々に部屋に引きこもって…本を開いたが落ち着かなかったので、さっさと眠ってしまうことにした。


あの日、目が覚めてから…セリーヌがいないのは初めてだ。

そう思いながら眠った。



屋敷は静かだった。

あの夢の続きのようだ。

夜中に目が覚めて、今自分がどこにいるのか考えてしまう。


静寂の中にいる自分…それをあんなに長いこと望んでいたはずなのに。


アルバンは新緑色の瞳のセリーヌを思い出して…ため息を一つついて、寝返りを打った。




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