第7話 セリーヌの反撃。
「ねえ、おばさま?」
「ん。なあに?セリーヌ」
いつものように中庭でおばさまとお茶をしていた。ぽかぽかと暖かい午後だ。
昨日のうちにアルバンが注文してくれていたらしい、生クリームたっぷりのケーキは美味しいが…。私の大好物だが…。
セリーヌはここのところ不審な行動をするアルバンのことを思い切って聞いてみる。
「アルバンが…倒れて、目が覚めてから…なんというか、別人みたいなのですが?」
「んぐっ、」
食べかけていたケーキを詰まらせたおばさまが、紅茶で流し込んでから、ニコッと笑顔をつくる。
「あら、まあ…そう?たとえば?」
「そうですね…何かしたときにありがとうと言ったり、毎朝、挨拶を返してくれたり…私のお支度を褒めたり…お弁当を喜んだり…ですかね?」
「まあ…すごく普通じゃないの?」
「あとは、一緒に散歩に行こうと誘ったり、こうしてケーキを用意してくれたり。この前の休日なんて、一緒に買い物に行こうと誘われました。誕生日でもないのに。」
おばさまが首をかしげて、妙な顔をする。
「…普通じゃないの?」
普通?これが一般的な婚約関係の<普通>だとおっしゃっているのかしら?
セリーヌは、そうかもしれない…。そう思って…。いや…アルバンに限っては、全然普通じゃなくない?そう思い直す。
「おばさま、何か私に隠していらっしゃることがあるのではないですか?」
「ひっ、た…たとえば?」
おばさまが動揺しているように見えるのは気のせいだろうか?
「そうですね…実はアルバンは転んだ時に頭を打って、今までの記憶がない…とか?」
「そ、それは、どうしてセリーヌはそう思うの?」
「いや。だって…今までは何を話してもめんどくさそうにしていたあの人が…ありがとうだなんておかしくないですか?別人みたいなんですが」
「それは…ほら…寮生活をして、家やセリーヌちゃんと離れてみて、そのありがたさに気が付いたのではなくて?看病もしてもらったし。ね?」
「……」
おばさまが指を組んで、夢見がちな乙女のように言う。思い切り目をそらされている。
「それで…ああ、自分にはセリーヌちゃんが必要なんだと気が付いたのよ!きっと!きゃ。ようやくね…あの愛想無しの息子がねぇ」
「……」
「全然、まったく、これっぽっちも興味を持たなかった私に?ですか?」
「そ…そんなことはないわ。気のせいヨ。」
「…で?何があったんですか?」
明後日の方を向いているおばさまの視界に立ちふさがるように、セリーヌは思わず立ち上がっておばさまを見下ろす。
「で?」




